「人」の嫌がることをするな | M3遣いのブログ

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ライカではなく、BMWのほうです(^^ゞ
日々想うことをまったりと・・・

動物園や水族館が、苦手です。動物は、犬をはじめとしておしなべて大好きなんですが。


理由は、檻や水槽の前に立ったとき、この動物(魚)たちにとって、人工的な狭い場所に閉じ込められ、来る日も来る日も見世物にされて一生を過ごすことが、彼らにとって本当に幸せといえるのだろうか、といつも考え込んでしまうから。


そういう自分だって、毎日、たくさんの「いのち」をいただいて、生かさせてもらっている。人間が食べるために、毎日何百万・何千万という牛や豚・鶏・魚などのいのちを強制的に奪っている。


それらの生き物たちは、自ら希望して命を提供しているわけではけっしてない。人道主義や博愛主義を振りかざすつもりはないけれど、自分も奪う側の一員だということをふまえて、それでもどうしても気になることがある。


それをあらためて認識したのが、先日テレビで放送された、あるネイチャー(自然)系ドキュメンタリー番組。


アサギマダラという美しい蝶が、季節に合わせて海を越え南北へ大移動するという生態が紹介されていた。


南は沖縄や台湾から北は北海道まで、最長で2,500kmもの個体の移動が確認された例もあるという。


手のひらに乗るくらいの小さく華奢な蝶が、羽を休める場所もない大海原を何十日もかけて飛び、人間が交通機関を使ってでさえ大変な1,000~2,000kmもの長距離移動をやり遂げるというのは、まさに自然の驚異という他ない。


私が気になったのは、その移動の確認方法。


人間が、飛んでいる、あるいは草花にとまっている蝶を網で捕まえ、無造作にマジックで蝶の羽に、日付や捕獲場所、人の名前などを書き込んでいる。


マーキングされた蝶は、移動した場所で再び捕獲され、移動経路とかかった日数が記録され、データとして蓄積されていく。


そういった地道な作業を、日本各地あるいは世界じゅうのたくさんの人たち(場合によっては学校の取り組みとして)が多年にわたって継続することで、謎に包まれていたアサギマダラの生態が徐々に解明されてきたそうです。


すごいですねえ。


でも、蝶の生態の研究は、自分たち人間にとって、必要不可欠なものなのか。研究して解明しなければ、人類の存亡に関わるのか。


何度も捕獲され、マジックで体に多数の書き込みをされた蝶は、たとえ放たれたとしても、羽を傷めたり、体を弱らせたりしてしまったかもしれない。長い旅の途中で、捕獲やマーキングが原因で命を落とす個体があっても不思議じゃない。


百歩譲って、蝶の生態の経年変化を追うことで、自然環境の変化が推定され、地球環境破壊に警鐘を鳴らすことができるという主張を受け入れたとしても、自然界の謎を解明したいという人間の知的欲求を満たすためだけに、当たり前のように自分(生き物たち)の意に沿わないことを強制することが、今ひとつしっくりいかないのです。


以前、鳥インフルエンザの発生によって殺処分される大量の健康な鶏のことを書きました。(「鶏の気持ち」 参照)


また同じことを言っていますが、もし、無造作にマーキングされる対象が、私たち人間だったら、黙ってそれを受け容れるのか。少なくとも僕は、嫌です。


「人の嫌がることをするな」 あるいは、
「自分がされて嫌だと思うことは、人にしてはいけない」


子どものしつけや教育で、よく使われるフレーズ。もちろん、そのとおりだけれど、それを「ヒト」に限らない生き方を、僕はしたいと思う。


例えば、僕の身近にいる人。いわゆる「人に害を及ぼす」とされる生き物にさえ、愛にあふれる優しいまなざしを向け、けっして殺したり傷つけたりしないで何とか逃がそうとする。その方法が、きわめて困難で、根気と時間の要る作業だとしても。


そんな優しい人に僕もなりたいし、もし、子どもたちに言う機会があれば、「人でなくても、生き物が嫌がると思うことは、しないようにしようね」と伝えたい。


ちなみに、先日各メディアで大々的に報じられた、アルゼンチンの裁判所が、ブエノスアイレス動物園のオランウータン(サンドラ・28歳)が長年の「監禁状態」から解放され、自然に戻る権利を認めた、という判決には懐疑的です。


なぜなら、その訴え自体が、当事者からではなく、動物保護団体から勝手に出されたものだから。動物園から出されて自然に戻ることがオランウータンにとって最良だというのは、人間のエゴ(偽善)の押しつけに過ぎない。彼女(サンドラ)自身には、動物園を出るか出ないか、選択の余地すら与えられない。


人間の身勝手な思想や行動や欲求に振り回される数多の生き物たち。自分もその振り回している紛れもない一員だという自覚を持って、それでもなお、よりよく生きたいと思う。


サンドラ オランウータン
 オランウータンのサンドラ(WIRED Newsより転載)