声優養成学校を卒後し
オーディションに落ちて
それからどーすんのかなーと
遠巻きに眺めていたら
ある日、ポツリ
「やってみて
(声優は)なんだか違うと思った」
と、アンナぽ。
「お金を出してもらって
学校に通ったのに
なんか、悪いなぁって…」
みたいなことを言った。
まぁ、そういうのもね
気になるんだろうけど
どんなことも
やっていることが
目指す結果とイコールになるのが
いいこととは限らないし
どちらかと言えば
何があろうと
何をしようと
そこで
何かつかんだり
何もつかまなかったり
とにかく今を生きてて
流れの中で進んで行く方が
よっぽど素敵なのであって
親は全然気にしてないんだけど
本人は気にしてた様子。
次に何をしたらいいのか
さっぱりわからないようで
彼女はしばらくニート生活。
そのうち何かで
動くんだろうし
放置プレイ。
そんなニートタイムに
アンナぽは
どんどん家のことを
するようになった。
朝起きたら
廊下とか掃除してたり
自分の部屋も片付けてたり
かーさんびっくりだよ(笑)
やれとも言わんのに
面白いもんです。
彼女が自発的に
やるようになったことのひとつに
庭掃除があった。
庭掃除を通り越して
庭作りになっていった。
あぶと私は
仕事もあったりで
なかなか手をつけられない庭が
きれいになっていく。

私もPC作業で
頭や体がゴワゴワすると
アンナぽと一緒に庭をいじって
リフレッシュタイムを楽しんだ。
一緒に庭いじりをしていた
そんなある日。
ゴンッ
という鈍い音がすると
いたぁ…
という声がして
それが
うぅぅ…
というすすり泣きになった。
びっくりして見に行くと
立ち上がろうとしたアンナぽが
庭の手洗い場に
腰を強打したもよう。
しゃがみ込んで
うずくまっている。
のぞき込むと
その目から
ぽたぽたと涙が。
うあぁぁぁん…
それを見て衝撃を受けた。
痛くて泣けるってすごい
すごいなぁ…って。
素敵だなぁ…って。
素直だなぁ…って。
大人になるとさ
どんな時もなかなか
泣けないもの。
もちろん
泣くところではないところでは
泣かない方がいいけど
なんかこう
その痛くて泣いた姿が新鮮で
感動した。
そして
アンナぽが小さい頃
目から涙をぽろぽろこぼして
泣いていた記憶と重なり
かわいいなぁ…って思った。
でもって
二階で仕事をしているあぶに
アンナがね、かわいいんだよ!
かわいいんだよ!
と、報告に走った(笑)
もう大笑い。
バカにして
笑ったんじゃないの。
かわいくて
幸せで
笑ってしまったの。
少ししたら
また、もうすぐ二十歳の
年相応のねーさんに戻ったけど
人間がふとした瞬間に見せる
美しさって本当に胸を打つ。
まぁ
アンナぽは
腰を打ったけど(笑)
えーん、と泣いた。
えーん、と泣いた。

あの子は、えーん、と泣いた。
もしかしたら
打った痛みだけではなく
彼女自身も気づかないうちに
心の奥にあったものも
涙で出したのかもしれない。
本当のところは
わからないけれど。
そんな彼女も
バイトを見つけて
今はブックオフの店員です。
今までのように
ちょくちょく一緒に
庭いじりができないのは
つまんないけど
それもまたよし。
彼女のニートタイムは
彼女が小学校に上がって以来
こんなに一緒にゆっくり
過ごしたことないよねってくらい
一緒に過ごした時間だった。
一緒に遊んだ。
一緒に買い物に行った。
一緒に笑った。
たくさんおしゃべりした。
時々ケンカもした。
きなこ団子ロシアンルーレットもやった。
本当にいい時間だった。
また、学校では
教わることのないことを
彼女自身学んでいたと思う。
何かするでもなく
家にこもっている彼女を見て
あぶが言った。
「今アンナは
本当にいい時間を
過ごしてるね」
って。
そんなあぶが
家族であることも
うれしかった。
本人はきっと
いろいろ考えるところも
あっただろう。
もやもやしたり
苦しかったりもしただろう。
それでも
やっぱり彼女は
すごくいい時間を
過ごしてたなって思う。
かわいいね。

彼女に言う。
一番大切なのは
何をしているか、ではなくて
今幸せを感じて
生きているかどうかだ、って。
何をしているかは
関係ない、って。
何かをしていても
何かをしていなくても
どちらでもよくて
自分の内側にある幸せを
愛でられる人であってほしいと願う。
大丈夫。
楽しい時に
おかしい時に
わはは、と笑い
つらい時
痛い時に
えーん、と泣ける人は
何があっても大丈夫。