フェルディナンドにエスコートされたローゼマインの眼の前にはアウブベルケシュトックが跪いていた。
側にいた側近や、第一夫人、領主候補生達が驚いていた。
それは当然だ。大領地のベルケシュトックが下位の中領地の領主候補生に平伏しているのだから。
「アウブ一体何を!」
「黙れ!こちらは叡智の女神ローゼマイン様の分身であられる!」
「アウブ何を言っているのですか?叡智の女神はメスティオノーラではないですか?」
「間違っていますよ。メスティオノーラは最高神の罰を受けて叡智の女神を降ろされ代わりに女神ローゼマインが立ちました。わたくしはその女神ローゼマインの分身です。」
「女神ローゼマイン様。昨夜は愚かな下僕の私めの所に顕現頂きありがたき幸せでございました。手のひらに刻まれました叡智の女神の刻印を誇りに叡智の女神ローゼマイン様に私の全てを捧げます。」
「良い心がけですね。ハルトムートもそう思うでしょう?」
「はい。ローゼマイン様。これならば私の教育の方は捗ることでしょう。」
「アウブベルケシュトック。叡智の女神ローゼマインは今のユルゲンシュミットに大変憂いておる。それは昨夜聞いたであろう?」
「はい。フェルディナンド様。詳しいことはお聞きしていませんが第一王子第四王子第五王子にはツェントになる資格がないと仰っておられました。」
「其方は第四を推していると聞いたが…」
「フェルディナンド様。アウブベルケシュトックにはハルトムートの教育を受けてもらってから全てが始まるのではなくて?とりあえずは明日の卒業式が終わるまで大人しくしていただければよろしいのですから。」
「そうだな。アウブベルケシュトックよ、こちらのハルトムートからよくよく女神ローゼマインの話を聞き明日は何があっても取り乱すことなく大人しくしていてもらいたい。」
「はっ!畏まりました。」
「ハルトムート。よろしくお願いね。」
「お任せ下さい。ローゼマイン様。」
「そうそう。アウブベルケシュトック、貴方の手のひらの刻印ですけど叡智の女神に関して何か言ってくる輩にはその刻印のある手のひらを当てると黙りますよ。使ってみてね。」
「はっ!」
(また君は何をした?)
(わたくしではありませんよ。女神ローゼマインの本体がしたことです。ベルケシュトックの人は代々貴族院の司書になる位の狂信者なのですよ?だから長年の功績に答えただけです!)
理由のわからないアウブの行動を見せられた側近や、夫人たちはアウブに詰め寄ったが刻印のある手のひらをそれぞれに当てると皆さん黙り込んで納得した顔になった。
「では、あまり時間がありませんのでローゼマイン様からおうせつかった教育をいたしましょうか?」
と、ローゼマインとフェルディナンドが去った後にハルトムートが改めて叡智の女神ローゼマインの下僕になるように教育を行った。
そして翌日の卒業式の日になった。
と、ここまで。