領地対抗戦になった。
フェルディナンドとローゼマインは来客対応はボニファティウスに一任して2人でユストクスとハルトムートを伴いベルケシットックの席へ。
「姫様。ベルケシットックの現アウブはかつては傍系領主一族で領主候補生ではありましたが図書館司書を目指したこともある人物でした。」
「まぁ!それではこちらに組入れやすいではないですか!?」
「そうだな。君とハルトムートに期待している。」
「ごきげんよう。アウブベルケシットック。」
ベルケシットックのアウブは目を見開いて驚いている。
それはそうだろう。実は昨夜シュラートラウムの領域で女神ローゼマインが降臨していたからである。その時に…
《わたくしはメスティオノーラに代わり叡智の女神になったローゼマイン。貴方の領地は代々貴族院の図書館司書を排出していますね?》
真っ白な部屋に唯一人佇むアウブベルケシットックは目の前にいる女神にひたすらにビックリしていた。
《貴方の領地は叡智の女神への信仰がどの領地に比べても高いことを知っています。メスティオノーラにも高い忠誠心を持ちメスティオノーラの書への導きの一旦をも担っていますが、貴方はメスティオノーラへの忠誠心をわたくし新しい女神であるローゼマインにも捧げてくれますか?》
「もちろんでございます!私は叡智の女神の忠実なる下僕でございます。改めて叡智の女神ローゼマイン様に忠誠を誓います!神に祈りを!」
《そうですか…では、今のユルゲンシュミットの現状をどう考えていて?》
「先王が亡くなり次期王も亡くなりグルトリスハイトも失われ書への道を切り開くものもおりません。しかし我ら知の領地の血を引く王子が残っておりこの王子を王にすることで書への道を開きたいと存じております。」
《貴方は曲がりなりにも知の領地で叡智の女神に忠誠を誓っているにもかかわらず血筋にこだわるのですか?第一も第四も第五の王子は全て資格が無いことを分かっていますか?》
「資格がないとは?王族であるならば王への資格も権利もあると存じますが?それに第一も第一四も我がベルケシットックという大領地の知の領地の血を引いております。」
《貴方はきちんとユルゲンシュミットの歴史を学んでないようですね。残念ですね。これ以上わたくしが何を言っても無駄なようです。ベルケシットックの叡智の女神の加護を取り上げます!》
「お待ち下さい!ご加護を取り上げられては知の領地ではなくなってしまいます!」
《そうでしょうね。けれど…貴方のその考えを改めない限り加護はなくなります。しかし一度だけ機会を上げましょう。明日の領地対抗戦にエーレンフェストにいるわたくしの分身である領主候補生のローゼマインとその伴侶であるフェルディナンドを使わせます。話をよく聞きなさい。それに本来の叡智の女神の下僕がどういうものかローゼマインの側近ハルトムートに教えを請いなさい。機会はこれ一度だけですよ。いいですね。》
女神ローゼマインはそれを告げると消えていった。
アウブベルケシットックは目覚めると手のひらに叡智の女神の印が刻まれておりそれを握りしめた。
そして今目の前に叡智の女神ローゼマイン様が仰った通り昨夜の女神よりも一回り小さな分身であるエーレンフェストの領主候補生ローゼマイン様が伴侶であるフェルディナンド様のエスコートを受けて立っていた。
アウブベルケシットックは思わず膝を折り頭を垂れた。
と、ここまで。