エーレンフェストの寮に戻ったフェルディナンドとローゼマイン。
「やはり裏で動いていたのはベルケシットックにアーレンスバッハでしたね。」
「あぁ。クラッセンブルグへの恨みは相当強いのだろう。しかしダンケルフェルガーがあまりにも単純すぎるな。」
「仕方ありませんわその脳筋ですもの。」
「アーレンスバッハはランツェナーヴェが絡んでいるな。」
「はい。私どもの調べでもランツェナーヴェは相当焦っているかと。離宮が閉鎖されその姫達も一夜にして消えたわけですから…それにアーレンスバッハが砂糖や、香辛料を得るために使う魔石の数が激減したとか。クラッセンブルグが鉱石の取引を事実上停止したためです。」
「クラッセンブルグの鉱石はそろそろ尽きる頃か?」
「はい。アイゼンライヒを唆して外患誘致をさせて潰し取り上げた鉱山ですがあまりの乱獲でもう廃坑になったかと。」
「それはそうだろうな。エーレンフェストよりも寒い地域にあって長年順位1位を保とうとすればそれなりに物入りだからなぁ。特産品は他に蜜だけだしな。」
「ランツェナーヴェはツェントをすげ替えて離宮再開を目論んだということか…でラオブルートの出番になったのだな?それでアーレンスバッハは第五を推すのか?」
「そのようです。クラッセンブルグ相手だとアーレンスバッハだけでは弱いのでトルークを使いベルケシットックを巻き込み第四の目もあると唆したようです。」
「確かに第一の同母弟である第四は第三とは仲が悪い。さて、どうしたものか?」
「とりあえず卒業式でツェント即位式を行うとしてもベルケシットックが不穏すぎますね。以前の織地のようにターニスヴェファレンを仕掛けでもしたら…」
「大丈夫だ。そのあたりは抑え込んである。」
「でも…」
「実はな…ラオブルートは押さえてあるのだ。」
「どう言うことですか?」
「女神ローゼマインが示唆してくれたのだがラオブルートはビェルヴァージオに対しての忠誠心はそれ程強くはない。」
「ええっ?」
「ラオブルートは実は離宮の護衛騎士ではあったが別にジェルヴァージオの側近ではなかったのだ。実は母上に命を助けられていたのだ。」
「どう言うことですか?」
「母上も忘れていたようなのだが女神ローゼマインが思い出させてくれた。母上がまだ姫として上る前に傍系王族の姫として貴族院の図書館に足を運んでいる時に王族の森に迷い込んだ騎士見習いが魔獣に襲われて怪我をした。その時に母上が癒やしをかけて持っていた薬を飲ませたそうだ。その事があって離宮の護衛騎士になった。」
「ジェルヴァージオは母上の弟だから仕えていたと。そして末の妹の婚約者になった。その妹は母上と私がエーレンフェストに来る時に先代ツェントが保護してキネシュライト領地に匿われている。それを告げたのだ。」
「すると?」
「ラオブルートは先日極秘でエーレンフェストにやってきて母上と面会した。女神様によって姿形を変えてはいたが直ぐに母上だと認識したようだ。そして我々の駒となり動くことを光の女神の冠で誓わせた。」
「まぁ!それでは!大丈夫ですね。」
「まぁそうだな。そしてランツェナーヴェは勝手に出ていったくせにいつまでも依存して何人もの子供を魔石に変えたことは許しがたい。そのため今後は2度と国境門を開けることはしないと。先日女神様が命じて第三が閉めた。」
「そうですね…ランツェナーヴェはどの織地でも非道でしたからね。一見すると門は開いて見えるが実は閉じているのだ。次に開ける時はランツェナーヴェではない別の国になるだろう。」
「アーレンスバッハは慌てるでしょうね。」
「そう言うことだ。」
「では魔獣の乱入はないけれど…ベルケシットックがどう動くか?ですか?」
「そうだ。そこで君だな!」
「ええっ?わたくしですか?」
「そうだ。ベルケシットックは知の領地で図書館に上級司書を3人も出している。それは叡智の神の狂信者ということだ。」
「では!ローゼマイン様と私ハルトムートの出番ですね!」
「そう言うことだ。」
と、ここまで。