(ちいさいころに、還っていけばいいのだ)

 

と思う。

 

いつでも、冒険に旅立つことを夢見ていた日々。

いつでも、「フロンティアスピット」に満ちていた日々。

 

(つまり「てんけん隊」だ)

 

(本文より)

 

◆たまごが逃げる

◆ボディペインティング

◆「声」

 

***********

 

◆たまごが逃げる

 

ランチは、草津にあるcafe tora魚寅楼の厚焼きたまごサンド

 

創業江戸後期の料亭旅館 双葉館魚寅楼のスペースを利用して、2021年のオープンしたばかりの、「厚焼きたまごサンドとかき氷」のカフェだ。

 

国指定有形文化財の建物というだけで、心が躍る。

草津が、東海道53次の52番目の宿場だということを、すっかり忘れていたので、現地について、タイムスリップしたように、それらしい町並みの中に入り込んでいるのを知って、

 

(こういうの、めっちゃ好き!)

 

と、わくわくする。

 

ランチタイムの混雑が一段落したころだったようで、並ばずに中に通してもらえた。

靴を脱いであがる。

 

 

ひんやりとした廊下がここちよい。

 

 

風鈴がたくさん吊るされている。

 

 

湖国百選の庭を観ながら食事ができるという大広間は、満室だったので、手前の小さな部屋に通された。

 

 

シスコ展のエネルギーがすごかったので、静けさがありがたい。

 

名物の「厚焼きたまごサンド」を注文した。

「からしマヨネーズをつけていいですか?」と尋ねられて、うなずく。

裕子ちゃんも私も、食べるのは初めて!

 

 

目の前に置かれた「厚焼きたまごサンド」どうしたら、このように、美しく均一にきめ細かく密にできあがるのか、ありえないほどの厚み!

 

先にたまごサンドを持ち上げた裕子ちゃんの第一声は、

 

「重い! たまごが逃げる!」

 

手をのばしてみると……

 

(ずっしり!)

(この重さは……)

 

何個のたまごを使って作っているのだろう?

食べようとすると、特製からしマヨネーズがすべって、パンから落ちそうになる。

それを、両手で支えて、かぶる。

 

(ジューシー)

(ふわふわ)

(やさしい、おだしの味)

 

さすが、老舗の料亭のだしまきだ。

調子に乗って、二口目をかぶりつくと、

 

(熱い!)

 

中は、アツアツで、口の中で、はふはふ。

 

(おいしー――い)

 

たまご料理は、なんて最強なのだろう。

 

サラダも、ちょっぴりなのに、新鮮で、ドレッシングがとってもおいしくて、大事に食べる。

 

廊下には骨董品が飾られてあり、美術館のよう。

 

坪庭のしつらえもがある。

 

 

宿場町としての草津の町並みに後ろ髪をひかれつつ、次なる目的地へ。

 

◆ボディペインティング

 

シスコ展のあとは、裕子ちゃんの提案で、「カラオケ」に。

到着してからわかったのだけど、歌をうたうことが目的ではないのだった。

 

草津のカラオケ店は、裕子ちゃんが、昨年から依頼を受けている絵本製作の作業場だそうだ。

大阪方面から高速道路を使って車でやってくる作家さんと、滋賀県に住む裕子ちゃんが(……二人の中間点でもなんでもない、私にすればよくわからない地点だけど)、草津で待ち合わせて、作業をやっているとのこと。

 

たしかに、カラオケルームは、絵を描くのに十分な大きな机と、その気になれば寝転がれるスペースがあり、フリードリンク付き。

 

裕子ちゃんによれば、歌ったり踊ったり、太鼓を叩いたりしながら、話をしていると、ひとりで考えていても出なかったアイデアが浮かんできたり、ひらめきがあったりして、どんどん作業が進むのだそうだ。

 

それで、私にも、声をかけてくれた。

 

前回の室生山上公園芸術の森で、友だちが歌っている光景ばかり、心に浮かんだから、歌ってみるのもいいかも! と思い、まったく予想外の展開だけど、シスコ展のあと、カラオケに。

カラオケ店に行くのは、30年ぶりくらいだ。

足を踏み入れて、昭和な感じのシャンデリアにびっくり。

 

 

3曲ずつ歌う。

 

 

そのあとは、ボディペインティング

 

イベントで、子どもに描いてあげると、その子に力が宿るのがわかるのだという。

 

私は、生まれてから一度も、ボディペイントをしたことがないし、したいと思ったこともない。

だから、

 

「描いてみる?」

 

と言われても、どうしていいかわからない。

 

 

くそまじめに生きてきた私は、人にどう見られるかなどが、心をよぎる

そのくせ、背中や胸に描いてもらいたいなどと思ったりもする。

 

カラオケルームの残り時間が15分ほどだったので、腕に描いてもらうことに。

 

(何が生れるか)

 

 

最初に描いてくれたのは、青い羽根

変化が起こったのは、ピンクの羽根が生れたとき。

 

 

ピンク色の絵の具が皮膚にのったとたん、胸の中に、広がる体感

 

(ラブリー、スウィーティー、ハーティー、ドリーミィ)

 

あまくて、あたたかくて、いとおしくて、おしみなくあふれる気持ち。

 

色が皮膚にのるだけで、この体感!

 

その後も、裕子ちゃんの思うままに、うずまきやら、葉っぱやら、ラメやら、なんだかんだが、いっぱいに繰り広げられていく。

なかでも、

 

(赤!)

 

 

赤が皮膚にのったときの感覚ときたら!

ざわざわ。むらむら。ぐらぐら。ぎらぎら。

たぎる。湧く。うごめく。吠える。

 

吸血鬼になったかのように、血潮が騒ぐ感じ

 

こんなになるとは思わなかった。

 

赤い絵の具が体にのるだけで、鼓舞される。

強心剤みたいな効果。

 

色もだけど、形も、来る

裕子ちゃんの筆先が、曲線を描いたり。

すっと伸びていったり。

いくつものドットができたり。

潜在意識の層が撹拌される。

 

 

先住民のボディペイントにも、きっと意味があることを実感する。

 

このとき、腕の内側いっぱいに描かれたものは、一体何を表しているのだろう。

裕子ちゃんもわからないと言っていた(笑)。

 

私が内包するものが、混沌としているせいなのか。

幾層ものレイヤーが透けているのか。

 

だけど、この先どこかで、このたくさんのモチーフのいずれかに、似たかたちの何かに出逢えたら、おもしろいと思う。

 

裕子ちゃんも、自分で描いた。

 

 

 

 

描き始めのころは、星雲のようだと思ってみていて、やがて、つぼみのようになり、最終的には、茎と葉ができて、花になった。

 

 

車の中で記念写真。

 

ボディペインティング初体験。

なんて、パワフルなのだろう。

 

やみつきになりそうだと思った。

 

どうしてもやらなくちゃいけない何かがあるとき。

血をたぎらせたいとき。

鎮めたいとき。

癒されたいとき。

 

最初は小さく。

だんだん大きく。

 

最初は腕に。

次にハートに。

しだいに、だいたんに。

 

描いたら、踊りたくなるだろう。

足を踏み鳴らしたくなるだろう。

太鼓を、叩きたくなるだろう。

 

(カラオケルームだと、なんでもできる!)

 

ペイントが腕にあるうちに、このパワーを借りて、てんけん隊のレポートを書くときめる。

 

あっというまにタイムリミットの15:30。

裕子ちゃんは、お子さんのお迎えに。

 

裕子ちゃんとコラボでやりたいセッションのことなど、てんけんのときに話そうと決めていたのに、シスコ・パラダイスが強烈すぎて、ぶっとんだ。

 

ボディペインティングも、すごかった。

 

(わたしたちって、天才!)

 

◆「声」

 

帰宅後、裕子ちゃんから届いたメッセージ。

前夜、引いたというオラクルカードを送ってくれた。

 

 

***********

 

【声】

 

「写真より 指紋より 血液型より あなたの今を証明してしまう」

 

歌うこと、話すことに注目してみましょう。

そして、歌いましょう。声に出して話しましょう。

あなただけの言葉、あなただけの話題、あなたにしか歌えない歌があることに気づいてください。

ゆったりほどけたからだから発せられる声は、ありのままのあなたを表現します。

 

****************

 

(えー――――――っ)

(なにこれ、なにこれ)

(今日のわたしたち、そのもの!!)

 

裕子ちゃんが歌った歌は、

 

「銀の龍の背に乗って」

「陽の照りながら雨の降る」

「深夜高速」

 

私が歌った歌は、

 

「瑠璃色の地球」

「いのちのうた」

「Love is All」

 

それぞれが歌った歌が、相手の「今」を証明しているのだろうと思ったりする。

 

地球とか、いのちとか、とか、裕子ちゃんっぽい。

そして、裕子ちゃんが歌ってくれた歌は、とっても響いた。

 

歌を聴いて、メモしたことばたち。

 

 

「らしんばん・ひな・龍・渦・山動く・群れ星・届けに行く・漂流者・こわしたい・種をまいていく・エルマーの冒険・絵を描きたい」

 

「らしんばん」という言葉をみて、裕子ちゃんが赤で描いてくれた太陽のようなマークが、羅針盤にみえてくる不思議。

 

裕子ちゃんは、カラオケルームに入るやいなや、ささっと、

 

「歌のつばさで時空を自由にたびしよう」

 

と書いていた。

 

 

私が書いたことばは、裕子ちゃんが歌ってくれた歌詞だ。

 

「絵を描きたい」というのは、カラオケの映像で、色鉛筆でスケッチしている様子が流れていて、ふいに描きたくなったもの。

 

『エルマーのぼうけん』は、歌を聴いていたら思い出した児童書。

私が持っていて、小さいころに何度も読んだのは、『エルマーと16匹のりゅう』の本だ。

 

冒険とファンタジーの原点。

 

(ちいさいころに、還っていけばいいのだ)

 

と思う。

 

いつでも、冒険に旅立つことを夢見ていた日々。

いつでも、「フロンティアスピット」に満ちていた日々。

 

(つまり「てんけん隊」だ)

 

裕子ちゃんが送ってくれたカードの言葉を、読み返す。

 

〈あなただけの言葉、あなただけの話題、あなたにしか歌えない歌があることに気づいてください。

ゆったりほどけたからだから発せられる声は、ありのままのあなたを表現します〉

 

裕子ちゃんの声は、透明感があって、祈りのようで、魂に届く

 

私の声は、裕子ちゃんのメッセージによると、

 

「えみなさんの声、まっすぐさや純粋さが際立つ歌だったよ。すごくよかった❤️」

 

互いに同じようなことを感じているのだとわかった。

 

カバーデザインを依頼したり、を描いてもらったり、ボディペインティングをしてもらったり。

 

つまり、私は、裕子ちゃんを〈信頼〉している。

信頼しているって、なんて、まっすぐなんだろう。

 

そのことが体感できて、とても嬉しい。

 

浜田えみな

 

 

 

【てんけん隊 at 滋賀県立美術館「塔本シスコ展」ほか(前編) ~パッションを止めない~】 

 

 

 

【白澤裕子ちゃんとのてんけん隊復活! at 室生山上公園芸術の森(1) ~翼に乗る切符~】

 

 

 

 

旅する絵描き 木の葉堂 白澤裕子さんのHP