「入院ジャーナル」 -21ページ目

入院先で、入院患者が、入院を見る


朝食時、食堂についているテレビは、
NHKを映していることが多い。


アンジェラ・アキの歌が聞こえてくると、
「つばさ」(朝の連続テレビ小説)も始まったし、
そろそろリハビリ室へ行く
準備を始めっかなー、というモードに入る。




しかし、木曜日は、休みを取っている
理学療法士さんが多いため、
リハビリスケジュールが午後だけの患者も多く、
それもあってか、今朝はなんとなく
アンジェラが歌い始めても、
まだ食堂の席に残っている人が多かった。


私もそのひとり。



「つばさ」の内容はよく知らないのだが、
ぼんやりと画面を見ていたら、
病室内で、青いボールの上に乗る、
男性の足元、という映像が映った。



「あっ、リハビリだ!」


思わず、声が出た。



食堂に残っている患者たちの多くが、
私の「リハビリ」の言葉に反応して、
一斉にテレビ画面を見た。




画面は足元のアップから引いていき、
ベッド全体が映った。


「個室だ!」


今度はけっこう大きな声が出てしまった。




「ホントだ~」


軽い笑いを含んだ、

患者たちの声(有言&無言含め)が

食堂に広がった。



おかず大臣が言った。
「(室料)2万5000円くらいかしら」。



「これ、川越という設定みたいだから、
川越ならもう少し安いんじゃない」と

人工(股関節)の先輩。

答えの出ない会話も真剣に展開された。




ドラマ内で病室が映ったのは一瞬だったが、
それでも、いくつかの「それ、ないだろ」な点も発見。



若いあんちゃんが個室に入院なんて、
あんまり聞かない。



ベッドの窓側横に洗面台が設置されてるのは、
動線的に変な感じがした。




ベッドの横に立てかけてある松葉杖が木製。


松葉杖はアルミ製がほとんどの昨今、
このドラマが現代という設定だとしたら、
木製の松葉杖は、誰かのお下がりになる。


お下がりの松葉杖を使うような
若い男子が、個室に入るか?




本物の入院現場で、本物の入院患者が、
つくりものの入院を見ちゃったら、
そりゃあ、細かいディテールが
気になるに決まってるわなー。




「南禅寺蒸しとは」でググる

朝)
・ごはん
・みそ汁(えのきとあげ)
・ほき粕漬
・ごま和え(青菜)
・鉄之助ふりかけ
・牛乳180ml




「入院ジャーナル」-090617朝

超不評メニュー。


何が不評なのかというと、
「ほき粕漬」。


しょっぱ過ぎる、にもほどがある!


かなりの人が残していた。私も。





昼)
・ごはん
・冷ぶどう
・チキンカレー
・サラダ
・福神漬




「入院ジャーナル」-090617昼


もっとも安心感のあるメニューと言って、
いいのではないだろうか。


「冷ぶどう」は「冷たいぶどう」ではなく、
「冷凍ぶどう」でした。


サクサクのシャーベット状で、
私以外の人にも好評だった。





夜)
・ごはん
・すまし汁
・南禅寺蒸
・ぜんまいの炒め煮
・キューリとわかめの和え物



「入院ジャーナル」-090617夜


ググリましたよ、「南禅寺蒸し」。


「南禅寺蒸しは、南禅寺で編み出されたもの」


(それくらいのことなら、いくら私でも予想がつく。
説明になってないじゃん!)



「豆腐を使った蒸し物。豆腐と卵とだしをすり混ぜ、
キクラゲ、ギンナン、生ふなど好みの材料を加える。
これを蒸し茶碗に入れて蒸す。
蒸し上がったらクズあんをかけ、ワサビをのせる。
本来は野菜やふなど精進物を用いるが、
魚介類のすり身や鶏を加える場合もある」


(ほほ~っ! それを開発したのが、
南禅寺というお寺にいるアイデア坊主だと)




「南禅寺は、豆腐の別名。
京都南禅寺の豆腐が旨いことから」


(なんと! 豆腐の別名が「南禅寺」なのか!)




ちょっと賢くなった、
気分だけです。

患者の夫たち


女性患者の夫(パートナー)たちは、
みんな、本当にかいがいしくて、愛らしい。



どの夫も、もれなく不器用で、
「あれを持ってきて」と妻に頼まれたのに、
「あれ」と違うものを持ってきてしまい、
妻に怒られている。


そんな夫たちの姿を、どんだけ見たか!


かく言う私も、同居人に対して、
同様に怒っているのですが。





男たちはたいがい「適当に見繕う」ができない。


「かわいい柄の入ったレターセット」とか、
「ペタンコで歩きやすいスポーツシューズ」とか、
「あのクローゼットにある、いつも着てるスカート」とか、
「あの引き出しにある、Tシャツを数枚」とか……。




「ホントにうちのは、センスがないの!
あんなヘンテコなの、どこで買ってきたんだが」とか、
「結婚式で着るような服、持ってきちゃって、
男の人は日常を見てないのよ。ダメね」といった
妻たちの訴えを、私は何度も患者たちから聞いている。



屋上で気持ちいい風にあたりながら、
車椅子に座る妻の足を懸命に上下させ、
リハビリさせている夫。


いつも部屋に、花を絶やさないほど
花を愛している妻のために、
病院に来る途中、あじさいを摘んでくる夫。


手が使えない妻のために、
一所懸命、顔を拭いてあげている夫。


妻の食事を食べさせるために、
妻のリハビリを応援するために、
妻の寝顔を見るために、
毎日、毎日、時間をぬって通ってくる夫。



そんなかいがいしい夫たちの姿を見つけると、
目を細めて見ている自分がいる。



どの夫も、どの夫も、ことごとく不器用。
だからこそ、いちいち一所懸命。


それゆえに(他人の男は)可憐だ。





ちなみに、男性患者の妻(パートナー)たちは、
たいがい、ふてぶてしくて、憎たらしい(笑)。


女にとっては、慣れた日常と同じことを
負担増でしているだけに過ぎないからだと思う。