一番退屈で、一番自由で、一番豊かな時間
お見舞いに来てくれるという友人が
「女子ならではのセレクトを持ってくよ」
と言ってくれたので、
最初はお花をお願いしたのだけど、
はっとアイデアを思いついて、
追加オーダーをさせてもらった。
その追加アイテムのマニュキュアが、
病棟内でブームになっている。
してやったり、である。
日曜日の午前は、一週間の中で
一番退屈で、一番自由な時間。
昨日のこの時間、
私は「行列のできる!
なんちゃってネイルアーティスト」
になった。
ゴツゴツとして小さくて丸い手に、
スパンコールを二重、三重と塗る。
柔らかくてまっすぐでしわしわの手に、
薄いピンクを、その上にラメを乗せる。
細くて黒くて交通事故の傷跡残る手に、
パキっとした黄色を重ねる。
「リハビリの先生、びっくりしちゃうね、きっと」
「孫が来たら、おばあちゃん若返ったと言われそう」
「こんなの、何十年ぶりかしら」
20~80代の女子が、一緒になって
みんな手をひらひらさせながら、
キャッキャッと、ガールズトーク。
一番退屈で、一番自由な時間は、
一番豊かな時間にまでなった。
最年長のこうさんは、顔を合わすたびに、
手をこちらにかざして「ありがとうね。
嬉しくて、嬉しくて、本当に感激でね」。
リハビリの若い男性の先生に、
「キレイだと言われた」という報告も受けた。
自身の手を何度も眺めてうっとりされたり、
食事中も指先の動きが、心なしか優雅になり、
みんなから「どうしたの? そのツメ!」と
驚かれて、うふふとしているのを見て、
私はしてやったり、とまた思う。
ところが、
昨晩、消灯直後、こうさんのとこに来た
看護師はネイルに驚いた後、
こう付け加えた。
「ホントはツメに良くないんだけどね」
嗚呼……。
「わかってないなぁ、この看護師」
「ああ、水さすようなこと、言っちゃったよ」
「つまんないこと、言うなよ」
カーテン越しに、周囲のそんな空気を感じて
少し嬉しくなった。
入院に必要なのは、
「便利」より「豊か」。
人生に必要なのは、
「正しい」より「楽しい」なのだ。
おかべさん、ありがとう!
計画どおりになりました。
「お見舞いにマニキュアなんて、
本当に素敵なセンスだと思う」
「こんなカラフルな色、付けたの初めて!」と
もれなく女子たち、大絶賛です。












