音楽137 〜Fortunate | Remember Every Moment

Remember Every Moment

Live your life filled with joy and wonder!
(人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない…。)

Come See Me  112 feat. Black Rob

バッド・ボーイからデビューした112の1stアルバムの収録曲だが、まったく原曲の記憶がない。リミックスが作られているのはいかにもその時代らしく、バッド・ボーイ・レーベルらしいのだが、最近初めて存在を知ったこのリミックスが素晴らしい。ギターのリフがメインだが、これがインディア・アリーの"Video"と同じネタで、年代的に112の方が使用が早い。そして、ミドルで入ってくるブラック・ロブのラップも、かなりいい感じだ。文句なしの隠れ名曲。




こちらも悪くはないけど、アデルの"Chasing Pavements"と同じで結局リストから外してしまう。


Someone  SWV feat. Puff Daddy

パフ・ダディーがラップで参加&プロデュースしているが、すでにTotalというバッド・ボーイ所属のグループがいるのにもかかわらず、他所のグループに結構良質のトラックを提供している。

サンプリング・ソースはまだリリースされたばかりのNotorious B.I.G.の遺作『ライフ・アフター・デス』に収録の、DJプレミアのスクラッチが印象的なトラック"Ten Crack Commandments"で、そのビギーのアルバムから大ヒットした"Mo Money Mo Problems"でフックを歌っていたケリー・プライスが作曲に加わっている。



パフ・ダディーのラップ・パフォーマンスは基本的に評判が芳しくないが、この曲に関してはかなりいい感じだと思う。つまり、ゴーストライターが優秀、ということだが。


My Red Hot Car / Tommib  Squarepusher

コロナから3年が経ち、遂に電車や職場でマスクを外していてもまったく問題がなくなってきた。渋谷や銀座にも明らかに観光目的の外国人が溢れてきたが、最初に渋谷のスクランブル交差点を観光名所にしたのは、やはりスカーレット・ヨハンソン主演の映画『ロスト・イン・トランスレーション』の影響だと思う。



ソフィア・コッポラが1、2分のフィルムに収めたセリフも全くない、傘をさしたスカーレット・ヨハンソンが信号待ちして交差点を渡るだけの映像は、ただの都会の雑踏を一度はやるべき体験に変えたのだから。

映画にはソフィア・コッポラの趣味が反映されていて、"Tommib"もその中の一つだが、曲として楽しむならアルバムのオープニング・トラックだった"My Red Hot Car"だろう。

オーガニックなビートを打ち込みに直して、メロディアスなASMRのようなヴォーカルは、ポップで聴きやすく、中毒性が高い。


Love's in Need of Love Today feat. Take 6 / That Girl  Stevie Wonder

スティーヴィー・ワンダーの最高傑作とされる『キー・オブ・ライフ』のオープニング・トラックで「ある愛の伝説」というかなり的はずれな邦題が付いているが、自分が聴いているのは元の詩が生々しく意味をもって聴こえる9.11テロ直後の追悼ライブ・ヴァージョンだ。イントロから入るコーラスをTake 6が歌っていて、とても心がこもっている。Tribute to Herosのライブは、ブルース・スプリングスティーンの"My City of Ruin"等、皮肉なまでに美しい名演があるが、僕はなにか無力感と言わなくてもどこかで一息つきたい時、この曲を聴きたくなる。

"That Girl"は最近なんとなく聴きたくなる曲だが、特に理由はない。シンプルなビートだし、いつものハーモニカ含めてずいぶん抑制された感じのする曲だが、なんとなく聴きたくなる。初出は『ミュージックエイリアム Ⅰ』77という4枚組ベスト・アルバムで、末尾に"That Girl"含む当時の新曲をそれぞれ配し、アルバム・ジャケットも熱帯魚とあぶくを音符に見立てて、内ジャケットで収録曲を展示したクリエイティブなものだったが、スティーヴィーのその後の作品が想像以上に出なかったこともあり、2が出ることは今に至るまでない。


Honkey Tonk Women  The Rolling Stones

この頃のブリティッシュ・ロック・バンドは少し前にサイケデリック・ロック志向で、それが終わりとみるとブルースに走ったといえる。しかしテーマはもう一つある感じで、「譜面化できないサウンド」というものを目指していたように思える。ビートルズなら"Come Together"で、ストーンズなら「ホンキー・トンク・ウィメン」だ。

この曲の長寿の秘訣はイントロのカウベルに尽きるわけだが、これはプロデューサーのジミー・ミラーが自らカウベルを手にとり、叩いたものだという。それにドラム、ギターが入っていくわけだが、ライブでこのイントロ通りに演奏しているものはないらしく、単に同時期のストーンズ曲のライブのように、ルーズなギター・リフから始めている。アメリカ南部を意識したサウンドはそれでも伝わるが、オリジナルはカウベル主導で産み出されたグルーヴに、ソウルフルな女性バック・コーラスと、やはりアメリカ南部風なサックスを入れて、ゴージャスにロールさせている。


Start over!  櫻坂46

アイドルを「アーティスト」路線で売って最終的に破綻した欅坂の路線を踏襲・復活させた感じの曲だが、普通に出来はいいと思う。「やり直す」という英語にStart overというフレーズを日本人が結構よく使うのはやっぱりジョン・レノンの影響だと思うが、PVの鼻血→破壊の流れはまーたやってるよ、という感じを思わせつつ出来がいいので賛同者がでやすい。それと、いかにベース・ラインをアクセントに使っても、基本的に日本の音楽はピアノ基調のものが圧倒的多数なので、エキセントリックなようでも聴きやすいのだ。


Your Body's Callin'  R. Kelly

ジャニーさんの性加害行為に対する擁護コメントで山下達郎が炎上しているらしい。要するに、「行為に不適切な所があったとして、ジャニーズ事務所とその所属タレントはジャニーさんあってこそ成功した。その功績はやっぱりすごいものだ」というところだが、水道水のような透明さを求める昨今のコンプラ的にはその発言がYouもうダメというところか。

その発言がダメなものとして、山下達郎の音楽までダメというのはもはやついていけないし、ついて行く気もないが、山下達郎氏は基本音楽的才能とプライベートは分けて考える人物だということは、松尾潔氏は音楽ライターとしてよく知っているはずである。山下達郎はR.ケリーの音楽を評価していて、R.ケリーが初期に放ったこの曲をどちらも好んでいるからだ。

アイズレー・ブラザーズを90年代に復活させる空気を作ったこの曲は、色々なリスナーの耳にとまり、山下達郎と松尾潔の接点を作り、同時代ではNotorious B.I.G.の"Unbelievable"にワンフレーズがサンプリングされたり、すぐ後にアイズレー・ブラザーズ自身ががコーラス・パートを引用する、ということになりますが、基本露骨な性表現はなく、AOR寄りなサウンドなので、自分の#Don'tMuteRkellyリストに当然入っている。


You Are Not Alone  Michael Jackson

マイケル・ジャクソンもジャニーズ事務所と関わりがあった大スターだが、Rケリーはそのマイケル・ジャクソンをプロデュースしてNo.1ヒットを作っている。R.ケリーのプロデュース曲は同じように聴こえる凡庸な曲があって、これもその一つぐらいに思っていたが、山下達郎氏はどうやってこういう曲を作るんだろうか、という感じのコメントを残していたと思う。

実際、相当なお気に入り曲なようで、プレイリストにマイケルのものではなく、Rケリー自身のヴァージョンを選んでいる程だ。


Fortunate  Maxwell

サンプル主体でラッパーをフィーチャーした安易なヒット曲が量産される中、オーガニックなソウル・ミュージックが復権していたのが90年代後半だが、その流れのヒット曲もRケリーが作っている。


Rケリー自身が歌っても似合うし、ヒットしただろう。しかも、マックスウェルはこちらよりむしろRケリーがK-Ci& JoJoに提供した"Life"の方を歌いたがったようだが、プロデューサーとして誰がどの曲を歌うのが相応しいのかよく分かっていてヒット曲に困らないRケリーはイントロのファルセットがすべてを掴むこのネオ・ソウル曲をマックスウェルに歌わせている。


I'm a Flirt  R. Kelly feat. T.I. & T-Pain

4曲並べるだけで、けっこう意外と曲の振り幅は広いことがわかる。ミドルにラッパーを起用するのは、ロックの間奏にギターソロが入るようなものだが、この曲はトラップではなく、Tペインのオートチューンが映える陽気な路線の曲だ。


Round Midnight  Miles Davis

"Come See Me"のリミックスをネットで見つけた頃、この曲も「発見」した。有名曲を発見というのもおかしなものかもしれないが、そんなものは誰にでもあるだろう。

タイトル通り、夜の雰囲気に満ちているが、ミュートを付けて吹くことで実現している。このミュートはHAEMON社が出している『ハーマンミュート』なるもので、音を消すというのではなくギターでいうエフェクターのような感じだ。ハーマンミュートは=ワウワウミュートのはずだが、ワウワウを使って愉快に演奏されたジャズをテーマソングに据えたのが吉本新喜劇。表現というのはとても奥が深い。


Thank God I Found You  Mariah Carey feat. Joe & 98 Degrees

マライア・キャリーの全米No.1ヒットで、デュエット相手に当時スムースで適度にセクシーな歌声で人気だったJoeを指名し、ダメ押しに当時モータウンからデビューした、バックストリート・ボーイズとボーイズⅡメンを足して2で割ったような98ディグリーズをバック・コーラスに据えたのがこの曲。プロデュースはジミー・ジャム&テリー・ルイスで、マライア自身も作曲に関与しているクレジットだが、盗作騒動が後に起こったように、エクスケイプの『Traces of My Lipstick』に収録の"One of Those Love Songs"を剽窃したものなのだろう。高音域のヴォーカルが売りのマライアにしては抑制された節回しは、ある面「原曲」に忠実だ。



Get on Up  Jodeci

ジャム&ルイスは"Thank God I Found You"の男性コーラスに、最初はK-Ci & JoJoを起用することを考えていたらしい。JoJoはともかく、K-Ciは熱唱系なので、シンフォニックなコーラスを聴かせる98ディグリーズに落ち着いたのは曲の相性的に良かったのかもしれない。

日が落ちてきた夏のようなサウンドはクインシー・ジョーンズの"Velas"のイントロのサンプリングで、元が口笛のようなギターとメロディーにハンドクラップを加えて爽やかなパーティー・ソングにしている。Jodeciは2組の兄弟からなるグループで、デグレイト兄弟の方はデヴァンテ・スウィングが要だと思っていたが、この曲を作ったのはミスター・ダルヴィン。なんでも分業体制が主流にみえる昨今、セルフ・プロデュースができるヴォーカル・グループというのは希少に思える。


しるし Mr. Children

批判しながらも結構リストに挙げているミスチルだが、その中でベストなのはこの曲ではないか。TVドラマの主題歌として流れてきたのを聴いた時は悪趣味だと思ったが、「ダーリンダーリン」の箇所は確かに「メロディがそう歌ってくれ」と言っているようにしかいえない。ピアノにストリングス、サビの前の無音の溜めもすべてJPopらしくベタなのだが、意外とメロディと音数は少ないし、それが日本の曲だといえばそれまでだ。


Aaliyah  Are You That Somebody / 

Back & Forth (remix)

"Are You That Somebody"は『ドクター・ドリトル』のサントラからのリード・シングルで、すでに独特すぎるビートとトラックで、当時のバッド・ボーイのようなサンプリングされた音楽のインパクトでヒットさせる風潮をファレルのネプチューンズと並んで一気に変えたティンバランドのプロデュースによるトラック。前にも書いたように、かっこよさやファンキーさ、アーバンなイメージやヒップホップのクールなイメージからは程遠い、「とんとんとん、ひげじいさん」のリズムそのものだ。「ひげじいさん」も、その他の童謡に見られるように、クラシックの引用(ドヴォルザークの交響曲)という説があるが、ティンバランドもオリジナリティ溢れるようで実はサンプリングを効果的に使うタイプのプロデューサーなので、どこからかアイディアを拾ってきたのかもしれない。

"Back & Forth"の方はアリーヤのデビュー・シングルで、聴いているのはそのリミックス。いかにもヒップホップ・ソウル系だが、ニュー・ジャック・スイングの要素もある。作曲はR. Kelly。死ぬまで品性高潔な人間でいられるのならミュートすればいいし、そうでなければ聴いた方がいい曲だ。


プラネタリウム 大塚愛

この曲も『花より団子』の挿入歌として人気なり、ファイナルファンタジーの音楽に似ている、と指摘されることで音楽的に死んだ感じがする。

ぱくりというなら大塚愛最大のヒット曲の「さくらんぼ」のほうが野球の応援歌を下敷きにしている感が強いが、その「さくらんぼ」も高校野球向けにブラスバンド化されているのだから、逆輸入みたいでその方がおもしろい。野球=おじさん、ダサいのイメージから、avexにふさわしい曲を作り上げたら発想的には逆に天才だと思う。


「プラネタリウム」も同じことで、わりと同時代のネタを使っているのはヒップホップのようなサンプリングありきのジャンルでも珍しく、単に人が見つけた正解で間違えた人を飽きずに叩くだけの人よりよほど生産的で楽しいものだ。


Roll With It  Oasis

ブラーとのシングル対決で結果的に負けてしまったこともあり、その前に"Live Forever"、そのあとに"Wonderwall"といったアンセム・ソングがあるため、あまりオアシスの代表作にはあがらない。だが、元ブルーハーツの真島昌利がライブでちょっと恥ずかしそうに紹介&笑えるカヴァーをしているように、サウンドも歌詞も極めてロック。間奏にオアシスの他の曲で軒並み聴けるようなギターソロを入れない(あるにはあるけど、パンク・ロック的に抑制された爽やかなフレーズ)のが特徴。


You gotta say what you say

言いたいことを言えよ

Don't let anybody get in your way

邪魔なやつは弾き飛ばせ


Don't ever stand aside

除け者になるな

Don't ever be denied

否定されるな

You wanna be who you'd be

自分の好きなようにやれ

If you're coming with me

俺と一緒に



訳は人によって「それ違うだろ」「そうじゃないだろ」となるかもしれない。上にあげたやつはそれなりに日本語になるが、英語そのもののパワーが抜けて少し説教臭い。


最近、日本でもかなりの大企業、それも本丸といえる部署に異動になった自分は、都会にいるのに田舎者を相手にしているような気分になることがある。要はエリートの集まりのなか、他所から来てみると、正直あまり大したことないのになんか自分の実力をわかってないな、という感じだから。そんな時、自分は過去の経験から自分の力を見誤ったり見失ったりしないし、まったくブレずに振る舞い通して、挙句けんかに勝ってしまうほど強くなっているだが、そんな気分の時にスカッとこれを聴きたくなる。ノエル・ギャラガーの歌詞はたとえばモリッシーのように文学的ではないのだが、ナンセンスでおもしろいものもある。


You know I think I recognize your face

オマエの顔どっかで見たような気がするけど

But I've never seen your before

一度も会ったことねーな


まあ、自分みたいなのに論破されたり軽く見られるエリートなんてのは、大したことはないからね。でも、そのおかげで100万円近いボーナスが貰えるのだから、楽なものだ。