音楽118 〜May I Have This Dance | Remember Every Moment

Remember Every Moment

Live your life filled with joy and wonder!
(人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない…。)

自分のiTunesに入っている曲。

Love On Top (Live)   Beyonce
古風な曲だけど、ビヨンセが演るとちゃんとその時代のヒット曲になる。同時にとても挑戦的で、歌いこなすのはかなり難しい曲だ。最後のサビ4回のキー・チェンジは、よくあるJ-Popのワンパターン過ぎる盛り上げ方とは違い、ヴォーカリストとしての実力を誇示するために選んだようなところがある。クラシックのヴォーカル・チャレンジ的な曲にモーツァルト作の『夜の女王のアリア』があるが、この曲はそのソウル・ミュージック版といえる。主に中音域で、高音部分があり、なによりも声量が要る。ホイットニー・ヒューストンなら歌えそうだけど、ジャネット・ジャクソン風の健康的な要素に、あくまでヒップホップ・ソウルの土台があるから、やっぱりこの曲を一番上手く歌えるのはビヨンセしかいない。

詩は繰り返しが多く、タイトル的に曲のテーマが陳腐になりそうな曲だけど、噛みしめるように歌われる“finally (ついに) ”に気持ちが込もっている。

When I need you, make everything stop
私が必要とするとき、全てを放り投げてでも駆けつけて
Finally, you put my love on top
ついに、私への愛を最優先してくれる

“Stop”と“Top”の単純な韻は、表面的な感じとは違ってじつは挑戦的なこの曲の、テーマ上のキー・ポイントだ。


これは生で観たい。


September Gurls  Big Star

音楽についてこれだけ書いてきて、まだこの名曲を挙げていなかったのが不思議なくらいだ。ビッグ・スターというバンドの知名度はそのバンド名とは裏腹に、60年代のヴェルヴェット・アンダーグラウンドと同じくらい、つまり活動期のセールスやチャート・アクションは散々たるものだったが、シーンに与えた影響は計り知れない。ケイティ・ペリーのヒット曲「カリフォルニア・ガールズ」のつづりが“Gurls”なのも、プリンスが曲を提供してスターダムに引き上げたバングルスがこの曲をカヴァーしているのも、それだけビッグ・スターの残した曲が粒ぞろいだからだ。

おっさんならビーチ・ボーイズのヒット曲をイメージするタイトルのこの曲は、サーフィン的な要素は皆無でも、爽やかなハーモニーは西海岸風で、キンキン鳴るギター・サウンドは60年代半ば風の、ブリティッシュ・インベージョンを受けたあとのアメリカのロックバンドの音がする。


What's the Difference  Dr. Dre feat. Eminem & X-Zibit

ガンダムのシャア・アズナブルという、もっとも有名なアニメキャラの一人の元ネタが、このDr.ドレーの第2のクラシック・アルバムの収録曲の元ネタ、フランスのシャンソン歌手シャルル・アズナブル。サンプルしたのは“Parce Que Tu Crois”という曲で、最初の部分にドレーがサンプルしたフレーズが登場する。なのでレコードを注意して聴く必要はないから「よく探してきたな」という感じはしないが、そもそもギャングスタ・ラップとは正反対のおフランスものだし、これにビートを加えてエミネムのラップをのせてシーンにカムバックしたドレーは、やっぱり普通じゃない。




このYouTube動画はテンポを上げているが、元ネタのシャンソンよりオリジナルはテンポを落としているから差し引き同じくらいか。


たとえば、漫画とかで1作当てられる作家は多数いても、2作代表作がある作家となるとだいぶ限られる。ドクター・ドレーの創作力はそういう次元で、その都度それに合わせてスヌープ・ドッグとエミネムという、センセーショナルなMCを世界に送り出すというのもなんとも凄い話だ。


May I Have This Dance  Francis and the Lights feat. Chance the Rapper

フランク・オーシャンとチャンス・ザ・ラッパー。昨年の音楽シーンの中心にいた両者の背後にいる仕掛人が、フランシス・アンド・ザ・ライツだ。そのサウンドはどうしてもデジタルなオートチューンを使って、逆に陰影のついた神聖で温かみのある感じのするコーラス・ワークを産み出したボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノンと比較される。

ただ、チャンス・ザ・ラッパーのインタビューを読むと、どうもこのサウンドはオートチューンとは違うし、録音の仕方も違うらしい。

one of my favourite things that I see on the internet is people commenting on the album as, you know, whenever they talk about this vocal sound that he's created they call it auto-tune. 

ネットでみてて気に入っていることの一つといえば、フランシス・アンド・ザ・ライツのアルバムにコメントしてる連中だ。奴らはいつだってこのヴォーカルをオートチューンで作ったサウンドだ、とか、

Or they say this sounds a lot like Bon Iver. Justin [Vernon, of Bon Iver], who Francis worked with and showed a lot of this musical styling to uses a very similar harmoniser effect. 

ボン・イヴェールにそっくりだ、という。ジャスティン・ヴァーノンはフランシスと一緒に仕事をしていたし、とてもよく似たハーモナイザーの効果を使う音楽的スタイルを見せていた、と。

But there's a very special thing that Francis does that he called "prismiser," I love it, 

だけど、フランシスがやってるのはホントに特別なことだ。あいつは「プリズマイザー」って呼んでたけど、俺はそれが大好きなんだ。

and it's gonna be on Kanye's album and it's on Frank's album but this prismiser thing that he does, he sings and takes a vocal and then very similar to a vocoder he, instead of being singular keys he builds chordal sounds around it, so it sounds like a choir. 

それはカニエのアルバムにも、フランク・オーシャンのアルバムにも登場するんだけど、フランシスがやってるこのプリズマイザーってやつは、まず歌ってヴォーカルをとるとこはヴォコーダーにそっくりだけど、単なる主音に代わって、そのまわりに和音を組み立てる。それがコーラスのように聞こえるんだ。

So when you first hear Ye's vocal come in it sounds like fifteen cyborgs all singing in auto-tune, but really it's one vocal

だから、カニエのヴォーカルが入ってくるのを最初に聴いたら、まるで15機のサイボーグが一斉にオートチューンで歌っているように聞こえる。だけど実際のところ、それは一つのヴォーカルなんだ。

要するに、オートチューンの多重録音のように聞こえるコーラス・ワークは、一つのヴォーカルで撮られている。それを実現しているのが「Prismizer」というソフト?だというのだ。この辺のツールはラップと歌モノの境を上手く取り払ったし、カニエとジャスティン・ヴァーノンはロックのみならずルーツにあるフォークのような繊細な要素も取り入れた。一見この路線の後追いにみえるフランシス・アンド・ザ・ライツは、ひんやりとしたサウンドに含ませた叙情性を活かしつつジャンルを超えたR&Bを作っている。チャンス・ザ・ラッパーをフィーチャーしたこの曲はメロディーにレゲエっぽいような雰囲気もあるが、それ以上にフィル・コリンズのターザンのテーマ曲“You'll Be In My Heart”をどこか思わせる。絶妙なアンサンブルの中にある隙間。こういうわびさびのある音作りは個人的に大好きだが、日本の曲には極端に少ない。


本人出演の「踊ってみた」動画みたいだ。


Myrna Loy  Minus 5

R.E.M.のギタリスト、ピーター・バックのサイド・プロジェクト、マイナス5の曲。タイトルの“Myrna Loy”は往年のアメリカ女優マーナ・ロイのことらしい。サウンドは60年代中期のロックっぽく、ファズのかかったギターのアルペジオに、間奏にはリード・ギターではなくビブラフォンのフレーズと、21世紀とは思えない楽器の音色を重ねています。


All  For the Best / You're My Blessing  Miracle Legion

地味ながら活動を続けているピーター・バックに比べて、かつてのフロントマンらしい活動はほとんどしていないマイケル・スタイプ。たまにパティ・スミス絡みのライブのオープニングでサプライズ・ゲストとして出るのがお約束のようになってきている程度なのが現状だ。

そして、そのR.E.M.解散後久しぶりに姿を現したときに注目を集めたのは、クリスマスの時期以外では不自然この上ないあごひげである。マイケル・スタイプといえば現役時代からその頭髪に注目を集めていたものだが、すっかり老け込んだおじいちゃんのようになった姿にあのひげはかなりのインパクトだ。大多数の意見はあれを頭頂部にもっていけないのだろうか?という人体上の不思議に思いを巡らし、ある者は似合わないから剃ったほうがいいのでは?と心の中で思っているのだろうが、当のマイケルはデビッド・ボウイのトリビュート・ライブ等でその後たびたび姿を現してもひげを剃る気配はいっこうにない。

そんなはたから見ると謎でしかないマイケル・スタイプのひげに、元ネタがあるのに最近気づいた。R.E.M.のメンバーは皆アメリカのアンダーグラウンドなロック・バンドをこよなく愛しているが、その中でもとりわけアングラ度が高いのがこのミラクル・リージョン。近所のおじさんたちが町内会で結成したような冴えない風体のバンドのフロントマンのひげは、間違いなくマイケル・スタイプのそれと完全に一致。マイケルはもしかするとこのバンドに気づいてほしい、というメッセージを体を張って送っているのかもしれない。


“You Are My Blessing”のライブ・バージョン。まるでポリスの曲を昔のR.E.M.がカヴァーしたみたいだ。

なお、このリード・ヴォーカルのひげおじさんマーク・マルケイは、マイケル・スタイプ主導でトリビュート・アルバムを作ってもらっており、強制参加させられた?トム・ヨーク!はこの曲を打ち込みでカヴァーしている。

R.E.M.になれなかったバンド、と言われるこのバンドを聴くと、逆に同程度のルックスで一時でも世界を制したR.E.M.がいかに奇跡的な存在であるかを再確認させられるとともに、オルタナティブ・ロックバンドのサウンドの特異性と本質をもう一度味わせてくれる。孤独で怠惰な朝だ。


裸足でSummer  乃木坂46

2011年にR.E.M.が解散したあと、僕は必然的にメインで聴くバンドがなくなった。レディオヘッドは頭でっかち過ぎたし、同世代のコールドプレイにR.E.M.ほどの魅力は感じられなかった。

が、何かが抜けた穴というものは、思わぬものが埋めてくれるものである。それが乃木坂といえばwwwwww、ということになるが、乃木坂の曲は所属がSonyということもあってか、曲自体はそれなりに揃っている。メンバー自体は他のグループのようにみんなが知っているような代表曲がないことを嘆いたり、秋元系グループがレコ大を受賞することを世間に嘆かれたりしているが、決してそんなに侮ったものではない。これまでにも2曲挙げているが、特徴はどこかで聞いたことのあるようなフレーズが意図的に入っているようであるが、曲のレベル自体は総じて平均以上。正直にいって、90年代育ちの自分からすると小室系やミスチルその他のバンドなんかより全然いい。

Hey!というかけ声とそのタイトル、沖縄までロケに行ったのに海が茶色いことからネタ曲と思われている齋藤飛鳥センターのこの夏曲も例外ではない。どこがいいのか?というとその構成で、J-POPにしては比較的単調で、繰り返しの様式美を守っている感じがするからだ。サビのメロディーも一聴こんなのでいいのか、という気もするが、これで通してしまっている。編曲も、色んな音がごっちゃに入っているといえばそうだが、一つ一つは派手なようで他のJ-Popに比べれば全然ミニマル。おそらくもともとのトラックはもっと音が少なくて、上にアイドルグループらしい派手な仕上げを施して完成させているのではないだろうか。あとはテンポとビートだけど、これがBPM140と絶妙な速さで、テクノともハウスともEDMともティンバランド風とも言えない不思議な感覚に仕上がっている。とにかく異質だ。

いつもの夏と違うんだ
誰も気づいていないけど
日差しの強さだとか
花の色の鮮やかさとか…

冒頭の歌詞は「夏」を「曲」に読み替えても通用する。

ちなみに僕はアイドルグループに興味はなく、たぶん乃木坂以上に社会現象だったモーニング娘。やAKBは完全スルー。ももいろクローバーやPerfumeにはまったく無反応。アーティストだという欅坂に至っては嫌悪感すら抱く程だ。乃木坂ファンも白石麻衣が卒業すればそれを機会にやめることになるだろうが、それまでは楽しみたいものだ。


いつ見ても茶色いな。