音楽89 〜William, It Was Really Nothing | Remember Every Moment

Remember Every Moment

Live your life filled with joy and wonder!
(人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない…。)

自分のiTunesに入っている曲。



A Case Of You Prince
ジョニ・ミッチェルの曲ですが、僕が好んで聴いているのはプリンスのカヴァー。ソウルやファンクよりのロックのイメージがあるプリンスと、フォークよりのジョニ・ミッチェルは接点がなさそうですが、ジャズっぽいピアノをバックにソウルフルな高音ファルセットで歌われるこの曲を聴けばそこには確かに共通点があります。

Oh you're in my blood like holy wine
ああ、あなたは聖なるワインのように私の血となり流れている
You taste so bitter and so sweet
あなたはとても苦くて、とても甘い
Oh I could drink a case of you darling
わたしはあなただったら1ケース飲み干せるくらい
Still I'd be on my feet
それでもわたしは立っていられる
Oh I would still be on my feet
けっして酔いつぶれたりしない

僕がジョニ・ミッチェルの曲をリストにあげるのはカヴァー含めてこれが4曲目。そのたびに書いている気がしますが僕がジョニ・ミッチェルで好きなのはあくまで変則チューニングによるきれいなギターの響きで、詩はたいして好きではないということ。この曲も

私の血はワインでできている

とかつて語った川島なお美を連想させるのでセンス的には微妙だと思いますが、プリンスが歌うといい意味で似合っているのでシリアスで美しく神聖なバラードに聴こえます。しかしプリンス、やっぱり演奏力と歌唱力が高い!


A Dream JAY-Z
「ブループリント2」に収録された曲でカニエ・ウェスト制作。ごく最近アトランタのラジオ・ステーションV103のインタビューでノトーリアスB.I.G.のソロ最初のヒット曲「Juicy」のビートは嫌いだ、ビギーもそれをそんなに好きではなかったと俺は思うぜ、と発言したカニエ・ウェスト氏ですが、10年ほど前にこの曲でそのビギーの代表曲の一つである「Juicy」のラップ・パートをそのまま抜き出して使っています。



原曲の「Juicy」はエムトゥーメイの「ジューシー・フルーツ」をほとんどそのまま流用したようなトラックで、ビギーがヒップホップらしい成り上がりストーリーを任天堂のスーファミ (欧米ではビギーの3rdヴァースの最初のフロウに出てくる通り“Super Nintendo”が商品名) を交えた名フロウで綴り、バッド・ボーイの女性ヴォーカル・グループのTotalが原曲のフックを替え歌で歌う、というもの。言われてみれば確かにパフ・ダディがやりそうなバッド・ボーイらしいヒット狙いの作りです。ラジオで

これがクールに聴こえるのはビギーがクールだからさ

と言い放ったカニエ・ウェスト氏はビギーのもう一つの名ヒット曲、「ビッグ・ポッパ」のビートも好きではないそうで、これもアイズレー・ブラザーズの「ビトウィーン・ザ・シーツ」をそのまま使っているせいかも知れません。

カニエ・ウェストがJAY-Zの為に作ったこのトラックは「Juicy」のトラックのサンプルやビート、フックは全く使わず、ビギーのフロウだけを使っているので、この頃から「Juicy」のビートに疑問を抱いていたことは間違いなさそうです。「ア・ドリーム」という曲のタイトルはもちろん「ジューシー」の最初のリリック

It was all a dream
それはぜんぶ俺の夢だった

からとっていて、この部分を効果的にスクラッチしています。曲のフックを歌うのはビギーの元奥様フェイス・エヴァンス。ビートやトラック、歌メロに元ネタがあるのか知りませんが、サウンドはヒップホップというよりはロック寄りで、雰囲気はなんとなくドリームつながりでエアロスミスの“Dream On”を思い出させます。昔プロレスリング・ノアの大会オープニングはこの曲で、サビがMAXまで音量を上げられたあとノアのテーマが流れる、という演出が好きでしたが、三沢さんが死んだあとからはいつしか無くなってしまいました。


A New England Billy Bragg
カースティー・マッコールのカヴァーを最初に聴いたせいか、そのイメージが強いですが、ここはやっぱり原曲を聴きたいです。オープニングの

I was 21 years when I wrote this song
この歌を書いた時、僕は21歳だった
I'm 22 now, but I won't be for long
今は22歳だけど、もうそれも長くない

というラインはまぎれもなくサイモン&ガーファンクルの1965年の曲“Leaves That Are Green”の歌い出し。この伝説のフォーク・デュオは多方面で多くの影響を残していますが、まさかビリー・ブラッグがそのまま使うとは…。


The Wake Up Bomb (Live) R.E.M.
R.E.M.は「ニュー・アドベンチャーズ・イン・ハイ・ファイ」で、どうもこの曲をリード・シングルにしようとしていたらしいです。ただ、この曲が不人気だったのは、結局はプロモ・シングル止まりで終わっていることからもうかがえます。ピーター・バックはかなりヘヴィなリフを鳴らしていますがオルガンが曲をリードするところもあるし、アップテンポなようでスローなのでノリきれない感じのする曲です。でもこの曲のビル・ベリーのドラミングはなかなか凄くて、詩もマイケルにしてはロック・スターらしい自伝的なフレーズが散りばめられています。



I had to teach the world to sing by the age of 21
俺は21歳になる頃に、世界に歌い方を教えてやらなきゃならなかった

Get drunk and sing along to Queen
酔っ払ってクイーンに合わせて歌い
Practice my T-Rex moves and make the scene
俺のT-Rexのムーブを練習してデビューを飾れ
Yeah, I'd rather be anywhere doing anything
そうだ、俺は何かをしてどこかにいたいんだ

マイケルがバンドを始めたのはやっぱり21歳くらいの頃。サイモン&ガーファンクルが歌ったように永遠には続かない歳 (無条件に若いっていえるのはこの年までですよね…) ですが、バンドは30年は続き、すべて忘れられないような瞬間の積み重ねになったのだ。



戸愚呂弟に向けた「幽☆遊☆白書」玄海の名セリフ。なんか思い出した。


Passenger (Live) R.E.M.
ビル・ベリー脱退後初のアルバム「Up」からのシングル“At My Most Beautiful”のB面に収録された、イギー・ポップのカヴァー曲。元はもちろんデヴィッド・ボウイの共作曲で、パンクとグラム・ロックの雰囲気がよく出た名曲です。



この動画では最初のアクシデントでマイケルがいきなり歌えなくなる訳ですが、サビに差し掛かるあたりで観客が自然に歌い出し、ジョーイ・ワロンカーが素晴らしいリズムを刻みます。オーディエンスの反応はむしろマイケルにとっては曲の趣旨的に嬉しかったんじゃないだろうか。



こちらは本家イギー・ポップのライブ。パフォーマンスと風貌、本人は否定してもやっぱり江頭2:50に似てる…。


Venus Television
ニューヨーク・パンクはロンドン・パンクに比べて魅力がわかりにくいです。でもストロークスのような明らかにテレヴィジョンのギター・サウンドを意識したバンドが2000年以降にでてきて、さらに日本でもチャットモンチーがテレヴィジョンのギターをこれ以上ないほど巧みにJPOP化した「恋の煙」を聴けば、そのパンク・ムーブメントの凄さと、トム・ヴァーレインとリチャード・ロイドの2人がいかにセンス溢れるギタリストかということがよくわかります。この曲「ビーナス」はまるで一筆書きのようにギターのメロディーが続きます。




Sexy Back / What Goes Around…Comes Around Justin Timberlake

ジャスティン・ティンバーレイクのソロ2ndアルバムからの1st & 3rdシングル。1stシングルの“SexyBack”から2ndシングル“My Love”、そして3rdシングルのこの曲まではなんと3曲連続全米No1ヒット。80年代のマイケル・ジャクソン並の記録でしかもクオリティが高い。昨今のR&B、Hip Hop界は多数の豪華ゲストとプロデューサー陣を揃えてアルバムを制作するのが主流ですが、ジャスティン・ティンバーレイクは1stアルバムの制作陣では2大巨塔だったネプチューンズ (要するにファレル) とは今回組まず、ティンバランド (とデンジャ) のみを継続してメインに据えています。これはさらに7年後の3rd、そして4thアルバムまで継続しますが、この頃のティンバランドは一時期に比べ目立っていなかったので、このアルバムで十分すぎるほどの健在ぶりをアピールした感じです。

3曲とも、いかにもティンバランドの指紋がくっきり残っているサウンドですが、単に1stアルバムからの名曲「クライ・ミー・ア・リヴァー」の焼き直しという訳ではなく、新しい感じが加わっています。特に1stシングルの“SexyBack”。ティンバランドとジャスティンは制作当時ザ・ラプチャーの“House Of Jealous Lovers”を聴いていたみたいですが、あの曲の畳み掛けるような生々しいエナジーはまさにラプチャーのそれです。


「ハウス・オブ・ジェラス・ラヴァーズ」


「セクシーバック」。ヴィクトリアズ・シークレットのファッション・ショーから。

このアルバムのサウンドと売れ行きが凄かったのでJTは「白いマイケル・ジャクソン」と異名が付けられていましたが、どちらかというとマイケル・ジャクソンらしいのはむしろネプチューンズがMJのために作ったが採用されずジャスティンの所に回ってきた曲を収録した1stか、4thアルバムのまさにMJ風のTake Back The Night”で、2ndアルバムはロックとか他ジャンルの音楽の影響が感じられます。たとえば2ndシングルの“My Love”は、いかにもティンバランドという感じがして、いい曲ながらこれが一番焼き直しっぽいと思っていましたが、実はテクノよりのダンス・サウンドにしてバラード、という風に。T.I.がラップでフューチャーされているのでよくあるヒップホップとR&Bの融合に聴こえますが、そこはやっぱりティンバランドです。

“What Goes Around…”は中近東風のサウンドにストリングスも加えた大作で、PVにはスカーレット・ヨハンソンを起用しています。監督はサミュエル・ベイヤー。あのニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」のPVを撮った監督。音楽ビデオではやっばり白人のロック系の作品が多いです。ジャスティンは白人のアイドル・グループからR&B色の強いソロ活動をしている訳で、実際には「白いマイケル・ジャクソン」というより「R&B界のエミネム (ドクター・ドレーの代わりにティンバランド) 」といった方が意外にふさわしいのかもしれないですが、あんまりクロスオーバーとかそんなものを意識せずに好きなものをやっている感じがします。2ndアルバムには“Sexy Ladies”のようなプリンス風のファンク曲もありますが、プリンスもジョニ・ミッチェルに影響を受けたりしているわけで、音楽にはジャンルとか人種はとくに評価的な意味はない、と自然に思わせる曲が揃っています。ジャスティンといえば断然ビーバーよりティンバーレイクですね。


3rdアルバムからの2ndシングル「ミラーズ」。2013年ブリット・アワードから。これももちろんジャスティン・ティンバーレイク×ティンバランド。


William It Was Really Nothing The Smiths
ギターがきらきらひかるこんなユニークな曲を作るのはモリッシーとジョニー・マー、つまりスミスしかない、という曲です。詩は結婚しているカップルとゲイの三角関係。イギリスの音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」出演時に途中からシャツを破り捨てて胸に「MARRY ME (結婚して!) 」と書かれた文字を露出したモリッシーによれば、この曲は

ポップスの範疇で結婚に関して語っているレコードがあるとすれば、それはいつも女性の立場、女性シンガーが女性向けに歌っているもので、いつだって「結婚なんかしちゃダメ、シングルでいて、自分で自分を守らなくちゃ」みたいなやつばかりだった気がする。俺はダイレクトに男に結婚なんか時間の無駄だ、って語りかける男の声があるべき時が来たと思ったんだ。事実、結婚はぜったいに無意味だ…



という曲らしいですが、そこには明らかにゲイの匂いがする。この曲はモリッシーと関係があったアソシエイツのリード・シンガー、ウィリアム・ビリー・マッケンジーのことを歌っていると信じられていて、アソシエイツによる“Stephen (注:モリッシーのファースト・ネームは「Steven」), You Are Really Something”というアンサー・ソングが存在しているのだ。モリッシーの歌い方はロック・シンガーとしては唯一無二のようなものと思っていましたが、結構この噂のビリー・マッケンジーからリアルな影響があったのかもしれない。

「ハットフル・オブ・ホロウ」という正確にはコンピレーション・アルバムに収録されたこの曲は、NMEのインタビューによればアウトキャストのアンドレ3000のお気に入り曲らしく、

俺のダチの一人が俺のCDコレクションをみてこんなことを言った。「ヘイ、こういうのが好きならスミスをチェックしたほうがいいぜ」。それで俺はスミスを聴くようになって、好きな曲がいっぱいあるのがわかった。結局のところ、曲でのパフォーマンスなんだよ。奴 (モリッシー) はほとんどまったくシンガーのようではない。俺が思うに奴は詩人で、音楽を演奏するバンドの上にメロディーをぽんっと置いているんだ。俺にはそれがおもしろい。だけどモリッシーがそんな風に歌うのはグレイトだ。奴は詩集を片手にもって覗きこんでそこから詩を引っ張り出して、それを音楽にのせている感じだ。だから奴は同じメロディーを何度も何度も繰り返す。俺はそれがクールだと思った。俺の好きなスミスの曲? 「ウィリアムなんとか」 (好きな曲のタイトルくらい覚えろよ…) だな。

と語っています。R&B界のなかでもクリエイティブなミュージシャンから支持されているのがさすがスミスといったところです。