スペインのホステル業界で働くという現実



「海外で働く生活は自由で楽しそう。」


日本にいた頃、私もそう思っていました。


しかし実際には、スペインの観光業界、特にホステル業界の現場では、慢性的な人手不足、高い離職率、不規則なシフト、そして管理不足に苦しむスタッフが少なくありません。


現在、私はスペインのホステルで正社員として働いています。


繁忙期を乗り越え、気づけばもうすぐ勤務1年。


けれど、この1年間で見えてきた現実は、決して「海外生活への憧れ」だけでは語れないものでした。



入社後すぐ辞めていくスペイン人スタッフたち




私が入社して驚いたのは、人の入れ替わりの激しさです。


1〜2週間で辞める現地スタッフ。 月に1人のペースで辞めていく社員。


辞める理由は様々ですが、多くのスペイン人スタッフには他の仕事の選択肢があります。


一方で、長く残るのは:


卒業したばかりで経験の少ない若者


スペイン語が母国語ではない外国人


他に安定した仕事が見つかりにくい人



という傾向があります。






特に印象的だったのは、ロシア人の同僚の言葉でした。


> 「誰もここで働きたくない。でも、お金が必要なのよ。」



彼女は母国で銀行員や翻訳者として働いた経験があり、スペインでも複数の職歴があります。


それでも、面接に呼ばれないと言います。


一方で、私は日本人でありながら、スペイン語が完璧ではなくても面接には呼ばれている。


この差は何なのか。


履歴書の書き方、LinkedIn、写真、見せ方。 海外就職では、能力だけでなく「市場でどう見えるか」が想像以上に重要なのかもしれません。



本来マネージャーがやるべき仕事を現場が背負う



ホステル勤務で最も消耗するのは、人手不足そのものではありません。


「管理職が管理を放棄していること」です。


例えば、本来フロントマネージャーが担当すべき:


新人教育


夜勤スタッフの管理


派遣スタッフのフォロー


業務品質の確認



これらを現場スタッフが埋める構造になっています。


私自身、本来は朝8時出勤にも関わらず、新人夜勤スタッフのフォローのために朝6時出勤を求められました。


つまり、朝4時起き。


しかも給与は通常の朝番扱い。


夜勤業務のミスを朝番スタッフがカバーする状態が続き、体内時計は崩れ、疲労は蓄積していきます。


ある日、私はマネージャーにこう伝えました。


> 「2週間も新人の夜勤フォローを続けるのは厳しい。」



すると返ってきたのは:


> 「分かった。休んで。あまりイライラしないで。」




問題は“私がイライラしていること”ではなく、そもそもの勤務体制なのですが、その視点はありませんでした。



ホステルで起きた泥棒事件


さらに衝撃的だったのが、夜勤中に起きた泥棒事件です。


夜勤スタッフの女性が、施設のタブレットや携帯電話を盗もうとした人物に遭遇。


慌てて止めようとして身体を掴まれたそうです。


しかし、その時ホステル内の監視カメラは機能停止状態。


しかも、ディレクターの反応は:


> 「でも、今回が初めてでしょう?」



というものだったそうです。


心配の電話もなく、スタッフの安全よりも、「大きな問題として扱いたくない」という空気を感じました。


以前は監視カメラが機能していたそうですが、トラブル対応を避けるためにアクセスを止めたという話もあります。


本当にスタッフを守る意思があるのか、疑問を感じた出来事でした。



年配スタッフも消耗している現場



問題を抱えているのはフロントだけではありません。


カフェテリアで働く年配の女性スタッフも、慢性的な負担を抱えています。


契約は1日5時間勤務。 しかし実際には、団体客対応が続き、残業が発生しても支払われないことがあるそうです。


彼女は「6時間勤務なら対応できる」と訴えていました。


しかし返ってきたのは:


> 「今はピークを過ぎたから、来年の繁忙期に考える。」



という返答。


つまり、“今は我慢してほしい”ということです。


年齢的に新しい仕事を探しにくい立場を利用されている。


そんな空気を、現場全体から感じます。



フロントマネージャーもまた、この環境に縛られている


興味深いのは、私たちを管理するフロントマネージャー自身も、完全に自由な立場ではないことです。


彼女は幼少期からスイスで教育を受け、4カ国語以上を話します。


しかし以前勤めていた高級ホテルで問題を起こし、現在はホステル業界にいるという話があります。


つまり彼女自身も、「このポジションを失えない側」の人間なのです。


もちろん、だからといって現場スタッフへの扱いが正当化されるわけではありません。


ただ、こうした職場では、上の立場の人間もまた“別の不安”に支配されていることがあります。


そして、その不安がさらに下へ流れていく。


ホステルという小さな組織の中で、その連鎖が起きているように感じます。



夜勤・早朝勤務・10連勤…体が限界を感じ始めた



ここ最近、特に強く感じるのは「体内時間の崩壊」です。


夜勤フォロー


朝6時出勤


不規則シフト


10連勤



こうした働き方が続くと、疲労は単なる“疲れ”ではなくなります。


海外生活では、つい「耐えること」が美徳になりがちです。


しかし、長期的に見ると、睡眠リズムの崩壊や慢性的なストレスは、心身の健康を大きく削っていきます。


だからこそ、私は現職を続けながら転職活動を続けています。


感情的に辞めるのではなく、“選択肢を失う前に動く”。


それが今の自分に必要だと感じています。



海外就職は「憧れ」だけでは続かない


スペインで働くこと。


海外生活。


語学を使う仕事。


一見すると華やかに見えるかもしれません。


しかし実際には、外国人として働く以上、ビザ、言語、文化、人間関係、労働環境など、様々な問題と向き合う必要があります。


それでも私は、この経験が無駄だとは思っていません。


むしろ、「どんな環境なら人は壊れていくのか」「どんな会社なら人が辞めていくのか」を現場で知れたことは、今後の人生にとって大きな学びだと思っています。


そして今、少しずつ次の道を探しています。



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