手作り漬物の未来と食品衛生法改正について私見 | イラストで綴る日常

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こんにちは、イトウエルマです。

 
6月1日から食品衛生法の改正により、
田舎のおばあちゃん達が道の駅で販売してきた漬物が
これまで通り販売できなくなるかも!?
と、世間がざわついています。

 

今回は”手作り”の漬物が日本の世界に誇れる

伝統でありつづけて欲しい気持ちから

思うところを述べさせていただきます。

 
 
はっきり申し上げましょう。
私は、改正に賛成です。
 
 
それは、これが日本の未来の食文化のために
絶対に必要な法改正だと思うから。
 
 
 
 
まず、漬物は保存食。
そして保存食は菌との戦いです。
 
菌に立ち向かうために必要な管理は3つ。
ひとつは塩分、2つ目は衛生、3つ目が温度湿度です。
 
 
塩分強めの漬物は、昨今は嫌われます。
かといって、塩分控えめに作ると失敗しやすい。
それなら塩分強めにした後に塩抜きをすればいいのですが、
旨みや発酵酵母も逃してしまうのが惜しい!
だから、できるだけ塩は控えめにしたいもの。
 
となると、衛生面に気を付けることとなります。
一昔前は梅干し作りはお母さんの手から旨みが出るだとか、
産膜酵母が旨みを作り皮を柔らかくするなどと言われ、
素手でガシガシ梅干しを漬けたり
うっすら白い膜が張ったような梅干し作りを
指南する本も普通に並んでました。
 
ですが、素手を突っ込んで作る梅干しは
うっすらと雑巾のような匂いが混じるのでした。
反対に手袋をはめて作ると純粋な杏のような甘い梅のいい香りだけがして
産膜酵母も出てこないのです。
(産膜酵母を出さないために、梅漬けの表面にラップを乗せて
空気を遮断していることも大きいかもですが、素手はよくないなあ、と体感)
 
手袋ひとつで、全然違うことに気づいてからは
パンやお肉の塊を切るときも手袋をはめるようにしています。
(その後のカビの出方やお肉の傷み方が全然違う!)
 
製造現場についての衛生環境もそうですが、
温度湿度も重要だと実感しています。
漬けるときの温度が高いと雑菌が繁殖しやすくなるのと、
シャキッと感がなくなり味が落ちます。
キムチなどは寒い中で漬けると味が全然違います!
 
湿度も重要で湿気の充溢する環境に置かれたものは
素材がカビ臭くなったりして
そもそも保存食としてどうなの!?という結果となる。
 
 
時に、市販品で衛生環境を疑うような漬物に出会うことがあります。
それまで我が家は年末になると青果店の仕入れる業者の作った山東菜の漬物を購入して、
冬の間にゆっくり消費しておりました。
美味しい酸味が出て後、ずっと長持ちして、
生でよし、火鍋に入れれば味わい深くなってと、
時間を置いてからが、重宝するのです。
それが!
昨年購入したものは塩分がかなり強めなのにもかかわらず
妙に早く産膜酵母が出てきて、おぞましい匂いを放つようになってびっくり!
 
自分が漬ける塩分控えめ漬物だって、
こんなにすぐに、ましてや冬の間に
産膜酵母が出てくるようなことはまずない。
衛生環境を疑いたくなるような、
雑菌の繁殖具合と匂いでした。
(いくら賞味期限があるからと言ってもね。
保存できるのが漬物なわけでして。
今冬からはもう買いたくないな)
 
青果店の店頭に並ぶ、業者の漬ける漬物でも
こんな状況なのが令和の時代の日本の漬物の実態です。
 
では、お隣の中国はどうかというと、
かなり衛生環境が改善されているのを
長いこと搾菜を食べ続けて、実感しております。
 
まず、当方が購入している搾菜は味付け搾菜ではなく
搾菜、塩、唐辛子のみで漬けられた、
塩をしっかり効かせた伝統的なもの。
真空パックされた1kgのパックを
 
10年以上前はこの搾菜、たとえ冷蔵庫保存でも
1kgを使い終わる頃には産膜酵母らしき乳白色のモヤモヤが出現、
漬物の保存が限界を迎えたとき特有の嫌な味が出てきたものでした。
(白のモヤモヤが出てきてからは
長めに塩抜きして匂いも抜いて使うか、
あるいは捨てて新品の封を開けたりしてました)
 
それが、あるときから使い切るまで乳白モヤモヤが現れず、
美味しさが保たれるようになった!
漬ける環境が衛生的になったことを確信しました。
おかげで最後まで塩抜きしないで使えるように!
(塩抜き推奨とはいえ、レシピによっては塩抜きしないものもあるので)
 
そして今。
場合によっては袋を開けたてのころの搾菜の色にはうっすらと緑色が残り、
本当にわずかなんですけどフレッシュ搾菜の青々しい苦味がすることも!
(1kgを使い終わる頃にはいつもの熟搾菜味になってます)
おそらく、製造工場の近代化が図られて
温度や湿度のコントロールができるようになったのでしょう。
 
塩分もかつてよりもぐっと控えめになりました。
 
それまでは台所に搾菜の切れ端を置いておくと
乾燥するころには塩を吹いておりました。
今の搾菜は乾燥後にほんのわずかな塩のキラめきはあっても
見た目は干し野菜レベル。
味だけでなく見た感じからも明らかに塩の使われ方が
少なくなっているのがわかります。
 
 
漬ける時に雑菌を入れないことにどれだけメリットがあるか、
温度管理がクオリティーを上げるかを
中国の世界に誇る傑作漬物、搾菜は教えてくれています。
 
 
これまでの日本の漬物は保存料に頼り切り、衛生観念までもが不十分でした。
道の駅のお母さんが漬ける漬物くらいは大目に見ても、と思う反面、
前提の基準を厳格にすることで市販の漬物の環境も整えられて
さらには保存料に頼らない本物の漬物が継承されるようになるのでは。
そうして味わえる本当の漬物の世界があるはず、と期待する己。
 
目下日本食は世界のトレンド。
今後、日本の漬物の発酵文化が世界に注目されるとするのなら、
当然、保存料ではなく伝統製法による保存の技術が求められます。
さすれば、ますます田舎のおばあちゃん達の手作り品に
スポットが当たることでしょう。
その日のためにも、この法改正は必要だと思います。
(ぬか床も手でかき回すのは雑菌を沸かせるような気がします。
手袋をするのがいいと思う)
 
 
田舎に行くとおそばに漬物が添えられることがあり、
お土地柄が感じられて嬉しくなります。
東京なら小諸そばではカリカリ梅が卓上にあって
漬物文化が楽しめますよ!