立ちそば日記54 浅草「文殊」の「岩海苔そば」で東京下町気分 | イラストで綴る日常

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こんにちは、イトウエルマです。

 

日々の立ちそばメモ帳から

食べたおそばの紹介をしています。

 

54軒目は「文殊」浅草店。

昭和のまんまなディープ地下街で、
茹でたてこだわり絶品おそばを
海苔の乗った「岩海苔そば」でいただきました。
東京らしさ、江戸らしさがつまった街を
おそばで楽しみました!
 
 
 
 
「文殊」は江戸前な細麺茹でたておそばを鰹本枯節で出す立ちそば店。
驚くのはこのこだわりおそばを駅ナカ、改札脇などの
好立地で展開しているところ。
駅中などのお急ぎオペレーションを要求される現場で、しかも狭小店舗では、
普通なら提供の早い茹で麺とか、
茹で釜のお湯の濁らない冷凍麺を使います。
そこを、どんな場所でもおいしさを最優先にしているのが、文殊。
古い設備の狭い厨房であっても
おそばを茹でて、天ぷらはそこで揚げて、と
高品質なおそばを提供しているのです。
 
それを実感できるのが浅草店。
昭和の戦後建築らしい低い天井とカオス感の溢れる、
今や日本最古の地下商店街となった、浅草地下商店街(1955)。
この銀座線と東武線を繋ぐ通路の脇にあるのが「文殊 浅草店」。
 
商店街の天井を見ればあちこちに配管や
雨漏り避けとおぼしきトタンがパッチワークのように張り巡らされていて
無我夢中で走り続けて来た、ありし日の日本の裏側を見たような気持ちになります。
そういやちょっと前まで銀座線の駅は雨漏りのフォローが当たり前でしたね。
オリンピック前に工事が終わってすっかり綺麗になりましたが。
バリアフリー対策などもされて、それはそれでよかったと思いつつも、
追いつけ追い越せで駆け上がってきた国の
アイデンティティーも失われてしまったような気もしておりました。
浅草地下商店街はこの時代感を守り続けてほしいものです。
 
古き良き立ちそば店の「茹で麺」が似合う場所での営業ですが、
文殊はここでも茹でたて、作りたてにこだわります。
 
朝の6時30分、電飾看板の電気がついていないのを見て慌てましたが
(臨時休業かと思った!)
厨房には店員が一人、カウンターには
おそばの出来上がりを待つ客が複数人いるのを見てホッと一安心。
(開店前からお客さんが待ち構えていたのでしょう。
忙しくて電気をつける暇もなかったのかと)
 
注文するのは岩海苔そば520円。
同価格で大好きな組み合わせの
温泉たまご付きのほうれん草そばと迷いましたが、
ここ、浅草で食べるのなら岩海苔そばしかない、と決めてました。
なんせ、今の海苔の形である、板海苔発祥の地が浅草。
浅草和紙の漉き方の技術を応用して生まれたのが、
今我々が海苔と呼んでいるものであります。
板海苔にすることで海苔は輸送がしやすくなり、
お料理のバリエーションも増えて、
日本料理に欠かせない食材となりました。
 
だからこそ、ここ浅草で海苔のおそばをいただきたい。
 
ということで、岩海苔そば520円が、こちら!
 
岩海苔、白いかまぼこ、そして、ゆず。
文殊といえば、ゆずですね。
文殊のもりそばのお薬味にはゆずを添えてくれるのですが、
この岩海苔そばにもゆずが入っておりまして
テンションがぐぐっと上がります。
かまぼこが白、というのも
メインの岩海苔を美しく引きたてているのが嬉しい。

 

 

 

ではいただきます。
おつゆはお出汁メインな本枯れの上品なお味すっきり味。
お江戸流の返し強めなお汁にこだわらないのが文殊、
東京のお汁に慣れない関西の人にも美味しく召し上がっていただけるだろうなあ、
などと思いながら、二、三口をいただく。
 
おそばはおそば粉6割の贅沢。
細麺なのは相変わらず。
思ってたよりも白めな気がしたのは、
私の記憶があいまいなため?
(それともおそば粉の挽きこみ方を変えたのかな?)
 
おつゆ、麺共に美味しいのが文殊。
それを海苔にしっかり絡めていただくと、
まず海苔が溶けるように口の中に広がる。
なかなかよい海苔ですね。
そして磯の香が鼻腔に抜けて、啜り上げると
スルッとおそばと一緒に喉奥に吸い込まれていく。
かまぼことの相性も言うことなし。
ゆずとの組み合わせも素晴らしい。
ということで、美味しい岩海苔に、大満足!
嬉しいことに岩海苔はたっぷりと乗せられているので
おそばがなくなる最後まで、絡めていただけました。
 
地上に出れば雷門と日本の情緒。
隅田川の方に目をやれば
いまや年季の感じられるフィリップスタルクの火の玉建築や
下町の象徴、スカイツリーが眺められる。
昭和で時の止まったままの日本最古の地下街にあった立ちそば店が
昔風の茹で麺ではなく、時代の求める高品質系おそばだったのは
時代時代で必要に応じて新しいものも取り込んできた
浅草らしい取捨選択だったのだ、と納得しました。
 
 
街のそこかしこに掲げられているのは
その日の週末に行われる三社祭の提灯。
お江戸の下町の真ん中で、
美味しいおそばと情緒を味わいに
また来ます!
 
【文殊 浅草店】
東京都台東区浅草1−1ー12
浅草地下商店街
 
月金6:00〜23:00
土日7:00〜21:00