立ちそば日記45 三ノ輪「峠の蕎麦」で江戸の粋「ドテ煮セット」と熱々コロッケそば | イラストで綴る日常

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こんにちは、イトウエルマです。

 

日々の立ちそばメモ帳から

食べたおそばの紹介をしています。

 

45軒目は三ノ輪にある「峠の蕎麦」。

信州直送の美味しいおそばとドテ煮丼がセットになった

江戸っ子好みなお味の

「ドテ煮セット」750円をいただきました。

コロッケ120円も注文毎に揚げてもらえます。
無口で職人然とした店主の、無駄のない動きにも痺れる!
 
 
「峠の蕎麦」は東京メトロ三ノ輪駅を上ったところにある
「大関横丁」交差点の角にあります。
 
大関横丁は明治通りと昭和通りの交わる広々とした抜けの良い、
かつては路面電車やトロリーバスが往来した、
ありし日の活気が眼に浮かぶような交差点。
街並みは昔のまんま、とはいかないけれども
江戸の粋を育んだ下町の誇りが
今も人々の間に息づいていることが伺える、
訪れるとテンションの上がるエリアでもあります。
 
 
ここ、峠の蕎麦も、東京下町の江戸っ子文化が
食して味わえる貴重な立ちそば店。
 
 
まず、店主が無口です。
 
注文は食券を買ってカウンターに出すのですが、
ここでそばかうどんかを言わなくてはなりません。

で、普通の立ちそば店なら、私のようにぼーっとしている客には

お店の方が「そば?うどん?」と聞いてくれるのですが、

峠の蕎麦では注文時に何も言わなければ自動的に「そば」。

「うどん」を希望の際にも

店主がはっきりと聞き取れなかった場合には

そばになる旨が貼り紙にあります。

(私は圧倒的なそば派だから無問題!)

 

もうひとつ、重要な情報が記されております。
 
それはかき揚げと春菊天以外の天ぷらが揚げたてであること。
だから注文が受付順ではなく前後することがあります、
特にコロッケはご注意、5分かかりますよ、とある。
 
そうか、揚げたてコロッケをいただけるのか!
立ちそば店で定番品のコロッケを名物にしているお店は多い。
ですが揚げ時間に時間がかかることもあり、
注文を受けてから揚げてくれるサービスにはなかなか出会えません。
 
私はコロッケに関しては揚げたて至上主義者なので、
(二度揚げやホットショーケース入りもまあOK)
ある時この貼り紙に気づいてからというもの、

寒い季節になったら頼んでみたいものだ、

と密かに思っていたのです。

そうして、この日三ノ輪へ向かったのでした。

 

 

注文のお品は「どて煮セット」750円。

そしてコロッケ120円。

 

これを調理する店主は口同様に、体の動きも必要最小限で

じっと動かず佇んでいたかと思うと、

流れるような動きで揚げ物を引き揚げたりおそばを作り上げる。

 

この度の注文がコロッケだったので、貼り紙の告知通り私の料理は

私よりも後に入店したお客さん方の後に出来上がりました。

 

それがこちら!

 

 

この店で私がセットものを頼みたくなる理由。

 

ひとつは、おそばの丼のサイズが

通常のおそばよりも一回り小さな器で出てくるから。

セットの丼のサイズが、江戸そばの老舗、並木藪の汁そばと同じ小ささで、

そこに入る麺の太さも並木藪みたいに細く、

茹で上がったおそばのおいしさも格別。

温かい汁そばなのに素晴らしい喉越しとコシが感じられて

とても高貴なおそばをいただいたような心の充足が得られる。

(あの並木藪サイズでないと気分が出ない!)

 

おつゆも、昨今は飲み干しやすいお汁のお店が多い中、

峠の蕎麦は硬派な江戸前の辛くて出汁が効いた汁を供し続けている。

飲めば喉が乾いてしまうのですけど、

今時なかなか出会えないお江戸感満載のお汁なので

それはありがたくいただいております。

(お江戸の本場のお味に出会いたい人に、特におすすめ!)

 

この日はまず、コロッケからいただく。

期待通りに熱々。

ジャガイモの潰し切らない塊が入っていたり、

豚ひき肉のコクが感じられたり、

シンプルに胡椒のみで味つけされたような

素材を活かすお味に大満足!

 

 

 

そして、ここに来ると頼んでしまうのがどて煮セット。

どて煮というと内臓やスネ肉などを味噌で煮込んだ

安い材料を手間暇かけて美味しくした庶民料理でしょ、

ここのどて煮もそんなお味なのだろう、

と勝手に決めつけていた己。

 

峠の蕎麦のどて煮には、粋を感じます。

 

汁気はなくて、ドライカレーや舐め味噌のような

ペースト状の塊の中に、具材が入り込んでいる。

食してみれば、江戸っ子好みの辛さの中に江戸味噌の旨みの効いた

こっくりしてるのにあっさりとしたお味。

 

臭みはまったくなし。というよりも内臓感がない。

これが内臓だろうかとつまみ上げればこんにゃくだったり、

肉のほぐし身は入っているけれどすじや脂身さえも見つからない。

(多分内臓的なものは入っていないのだと思う)

ひたすら辛くて旨みの強いご飯のお供。

よそでは出会えないお味なので

ここ、峠の蕎麦に行くしかありません。
 
 

「ごちそうさま」

 

店主に返事や愛想を期待してはなりません。

私に限らず、全てのお客さんが感謝を込めて

「ごちそうさま」「あ〜美味しかった」

など言って出ていきます。

 

それを笑いもせず、ただ黙って見送る店主。

そんなやりとりにも、

職人気質な江戸っ子っぽさを感じています。

 

【峠の蕎麦】

東京都台東区三ノ輪2ー14ー8

月金 6:30〜18:00

土 6:30〜14:00

日休