前のブログ記事を上げるのが遅くなってしまったので、8月に入ってからの記事となってしまいましたが、今回は『大和三大観音あじさゐ回廊』プラス・ワンの参拝レポを書きます。
大和盆地の南東の山内の比較的近い場所に門を構える『岡寺』『壺阪寺』『長谷寺』は、それぞれが観音菩薩を本尊としていることもあり西国三十三観音霊場になっていることもあり、古くから観音霊場として多くの信仰を集めて来ました。近年ではこの三門の寺院は『大和三大観音』と称し、霊場巡りを勧めていたりしています。
おのおのの寺院がそれぞれに境内の参道に紫陽花の花を荘厳し、雨の季節の美しい風景を拝観者を楽しませるという企画です。令和4年から始まった『あじさゐ回廊』ですが、今年は先に紹介した三門の寺院に加えて宇陀市の室生寺を加えた四寺院での開催となりました。
今回の記事は6月22・23日に拝観をしたこれらの寺院の紫陽花の花を紹介をします。
このイベントは5月25日から7月7日の開催だったのですが、これは昨年の梅雨入りが5月29日だったのに合わせての日程だったようです。ところが実際に6月に入っても一向に近畿の梅雨入り発表は無く、結局梅雨入りは6月終盤の21日で、このイベント中に梅雨の期間となったのはわずか2週間ほど、6月前半は晴れの日が多く、会期の半分は真夏の日差しの中となってしまったのです。
6月の奈良の天気 画像引用:tenki.jp
夏の強い日差しを受けてグッタリしているような紫陽花では絵にならない、紫陽花を美しく写真に撮るには雨が降ってもらう必要がありました。そのために小生は『あじさゐ回廊』に行くのを梅雨入りになるまで待ったのです。そうして梅雨入り後に雨の予報が出ていた6月22日を車を出したのですが…
22日は朝は少し曇っていたのですが、午前中は予報と違い雨どころか雲が切れ晴れ間もあり、強い日差しまで差し込むような天候になったのです。
「このままでは、夏の日差しの中の紫陽花風景になってしまう」と当日に予定を変更、当初は小生が住む大阪に近い『壺阪寺』→『岡寺』→『長谷寺』→『室生寺』の順番で参拝する予定だったのですが、時間稼ぎのために一番遠い室生寺を最初に行く逆ルートにしたのです。
その変更もあって、22日一日で四寺院すべてをまわり切ることが出来ず、あじさゐ回廊の四寺院めぐりは翌日の23日も加えた二日間となりました。それも両日とも期待した降りの雨にはならず、さしずめ曇りの紫陽花風景となったのです。
ここからは二日間かけてめぐった、各寺院の創意工夫された紫陽花風景を紹介します。今回は『あじさゐ回廊』のみを取り上げる記事としますので、おのおのの寺院の詳しい紹介は行いません。長谷寺は2020年12月9日の記事、岡寺は2014年10月16日の記事、壺阪寺は2020年12月18日の記事と過去の記事で既に寺院そのものについての紹介をしています。室生寺についてはこのブログではまだ書いたことが無く、寺院そのものの紹介は近くしたいと思っています。
室生寺(むろうじ)に到着したのは午前11時過ぎ、雨に濡れる紫陽花を見るのが目当てだったのですが、到着した時点では日差しが明るく境内を照らしていたのです。そのために、あじさゐ回廊以外の境内を一通りめぐってり、やや曇ってきた午後1時くらいになってようやく紫陽花の撮影となりました。
この室生寺のお寺の詳しい記事は、後日改めてアップする予定です。さて、あじさゐ回廊についてですが、室生寺の紫陽花は山門を入ってすぐの所にありました。
山門を入ったすぐ左手に大日如来を表す梵字の『バン』()の形をしている『バン字池』と呼ばれる蓮のきれいな池があります。室生寺のあじさゐ回廊による紫陽花は、主にこの池の周囲に厳修されていました。
また、山門やバン字池のある平地から金堂に向かう参道には『鎧坂』という名称の石段があり、この鎧坂と金堂を背景にした紫陽花の撮影用プランターも設置されていました。
この撮影用プランターの前には丁寧に撮影用のスマホスタンドまで用意されていました。このスマホスタンドは宝珠型のフレームまで付く優れもので、小生がいる間も何組かの人がスマホをスタンドに置いて撮影をされているのを見ました。
この『あじさゐ回廊』では、寺で紫陽花を愛でる以外に別の企画もありました。『大和巡礼あじさい重ね色巡礼』というもので、各寺院で四色のスタンプを重ねて捺していき一枚の絵を完成させるというものです。
室生寺のあじさい重ね色巡礼スタンプは、寺の入口の参拝受付所のすぐ近くに建つ納経所の前に置かれていました。
『あじさい重ね色巡礼』はカウンターの上にスタンプと、スタンプを捺す台紙、それに台紙を固定するスタンプ台が置かれていて、このスタンプは参拝者が自分で捺すというものでした。セルフでしたが、無料という良心的なイベントでありました。
最初に参拝をした室生寺のスタンプの色は赤でした。これから4寺院を巡ってそれぞれの色のスタンプを重ねていくと、どんな絵が完成するのか。期待しながら次の寺院へと向かいます。
次のあじさゐ回廊の寺院は、桜井市初瀬の長谷寺(はせでら)です。真言宗豊山派の総本山で国宝の本堂に納められている本尊の十一面観音立像は高さ10.18メートルという、近世以前では奈良の大仏に次ぐ巨大な仏像として知られます。
長谷寺については2020年12月9日の記事で既に詳しく書いていますのでそちらを読んでいただくとして、この記事では今年のあじさゐ回廊について書きます。
初瀬山の山麓に広大な境内を持つ長谷寺は『花の寺』の異名もあり、特に牡丹の花の見事さは広く知られていますが、紫陽花も参道の随所で見ることが出来ました。
特に本堂に登る参道の途中となっている『嵐の坂』と呼ばれている、本堂左側の石段。50メートルほどのこの石段の参道が、長谷寺のあじさゐ回廊のメインゾーンとなっていました。
本堂の向かって左側に出る嵐の坂の石段。あじさゐ回廊に合わせて幻想的な『紫陽花の道』となっていたのです。参道横だけでは無く、参道の石段の上にまで紫陽花のプランターが置かれ、ここを歩けばまるで紫陽花の花に包まれるような不思議な空間となっていました。
長谷寺の『あじさい色重ね巡礼』のスタンプが置かれていたは本堂左手の納経所ですが、納経所前には『御朱印所』と書かれたテントが張られていて、そこに御朱印を求める多くの参拝者が列を作っていました。
長谷寺では3月から『春期特別拝観』の期間となっていて、御本尊十一面観音の限定御朱印の授与が行われている上に、今年の大河ドラマ『光る君へ』が放映されているのに合わせて、源氏物語にも登場する長谷寺は『源氏物語切絵御朱印』の授与も始められました。加えて今回のあじさゐ回廊の御朱印と合わせて限定御朱印の授与を次々と始めたとあって、今回参拝者がこれだけ列をなして御朱印を求めて来られたようです。
『あじさい色重ね巡礼』のスタンプは、納経所とは別にテント下に用意された長テーブルの上に置かれていましたが、当初は他の御朱印の授与を求める人と同じ列に並ばなくてはいけなくて、結構長い時間列を並んでスタンプを捺すことになってしまいました。
長谷寺の『あじさい重ね色巡礼』のスタンプは水色でした。本当ならその場で捺したスタンプを写真に撮っておかなくてはならなかったのですが、うっかり撮り忘れてしまいました。やもうえず、室生寺で撮影したスタンプにチラシに載っていた長谷寺のスタンプの絵柄をペイントツールで合成した画像を作りましたので下に貼ります。
『あじさゐ回廊』三番目の寺院は明日香村岡に門を構える『岡寺』(おかでら)です。正式名称は『東光山 真珠院 龍蓋寺』といい、長谷寺を総本山とする真言宗豊山派を宗派としています。本尊 如意輪観音坐像は奈良時代の重要文化財で、日本最大の塑像(土を焼成せずに固めた像)として知られています。
岡寺についても、このブログでは2014年10月16日の記事で詳しく紹介しておりまして、お寺についてはそちらの記事を見て戴けたらと思います。この記事ではあじさゐ回廊の模様を紹介します。
岡寺は他の寺院に比べると寺の規模が小さいこともあり、あじさゐ回廊もややこぢんまりとした印象でした。紫陽花は手水舎や本堂前にプランターが並べられ、境内を彩っていました。
中でも、特に紫陽花に目を奪われたのは平成24(2012)年に竣工した新書院の前庭です。池の上に欄干が美しい橋が架けられているのですが、紫陽花は橋の欄干の上、さらには池の上にまで浮かべられ、何とも風流な風景を作っていました。
岡寺で見れる紫陽花はこれで全てかなと思っていましたが、一番の見どころは岡寺境内の一番奥に隠れるようにありました。境内の一番奥に祀られた稲荷社、その参道が長谷寺の嵐の坂のような紫陽花の道になっていたのです。
広大な他の寺院と比べれば狭い岡寺の境内でしたが、創意工夫で梅雨の風情をたっぷり得ることが出来たと思います。さて『あじさい重ね色巡礼』ですが、岡寺では本堂内と棟続きの納経所の前にスタンプが置かれていました。
岡寺のスタンプの色は黄緑、主に葉の色で絵柄の全体図がかなり見えて来ました。
あじさゐ回廊も室生寺、長谷寺、岡寺とまわり、後は壺阪寺を残すのみとなりましたが…
前述したように、小生が奈良を訪れた6月22日は午前中雲が切れて日差しが照るような天気になり、梅雨の紫陽花風景らしくないと、曇りだした午後から集中しての寺院めぐりとなってしまいました。
そのため、室生寺を出たのが午後1時過ぎ、長谷寺を出たのが午後4時前、そして岡寺の参拝が終わった時には既に午後4時半を大きくまわっていたのです。さすがにここから広い境内を持つ壺阪寺を参拝するのは不可能と判断、天気予報を調べると次の日は朝から曇り時々雨の予報が出ていたので、1日で済ませるつもりだったあじさゐ回廊でしたが、急きょ壺阪寺へ行くのを翌日午前中に順延することにしました。
ただ、23日は午後から家の用事があったため、早朝に大阪の家を出て壺阪寺を参拝してから急いで帰るという強行スケジュールとなってしまったのです。
ということで、あじさゐ回廊の最後の寺院となった壺阪寺(つぼさかでら)。到着したのは23日の日曜日、午前9時半でした。高市郡高取町に門を構える壺阪寺、正式な寺号は『南法華寺』といい、平安時代には本尊・十一面千手観音の霊験が広く知られ、観音霊場として栄えた古刹。後に興福寺僧・真興上人が真言宗子島法流の道場とし、以後真言宗の寺院となりました。
壺阪寺については2020年12月18日の記事で詳しく紹介していますのでそちらに説明を譲り、ここからは今年のあじさゐ回廊について書いていきます。
壺阪寺の紫陽花は、門を入ってすぐの大講堂前から見ることが出来ました。ガラスのボール鉢に水中花のように飾られていて、いかにも涼しげな感じで並べられていました。
大講堂の前を通って、仁王門の石段を登ると、さっそく壺阪寺での あじさゐ回廊のメインとなる場所に到着します。
壺阪寺では国際奉仕事業としてインドで製造された、像高10メートルもの石造大釈迦如来像・『壺坂大仏』が鎮座しているのですが、あじさゐ回廊では紫陽花がこの壺坂大仏の全体を取り囲み紫陽花の風景を織りなしていたのです。
壺阪寺では壺坂大仏を見下ろせる『遙拝台』というテラスがあります。
桜の季節には桜の花に埋もれた壺坂大仏と壺阪寺の風景を一望出来るスポットとして『桜大仏特別遙拝台』と呼ばれますが、あじさゐ回廊のここからの眺めもすごい。壺坂大仏だけでは無く、遙拝台のデッキの上にも紫陽花のプランターが並べられていて、それは目を見張るような紫陽花風景となっていたのです。
紫陽花は他にも、長さ50mの佛伝図レリーフ『釈迦一代記』や、高さ20mの石造大観音立像への入口となっている『天竺門』など、主に壺阪寺の名物となっているインド製造の石造物のエリアを中心に紫陽花で彩られていました。
日本原産の花である紫陽花とインド石仏とのコラボレーションは、境内のエキゾチックさをより増して、たたでさえ魅力的な境内をより不思議空間にしていたように思います。
さて『あじさい重ね色巡礼』ですが、御朱印を授与していただける納経所で捺せるのかと行っていました。壺阪寺の納経所は本堂横にあり、受付であじさい重ね色巡礼のことを尋ねてみると…
「スタンプはここじゃなくて、御本尊のおられる八角円堂の中に置いてますよ」
…という返事。思わぬ形で本堂の中に入ることになりました。
壺阪寺の御本尊は八角円堂の中心に安置されていて、その外周は廻り廊下のようになっているのです。
スタンプはその廻り廊下の一角に置かれていました。小生は壺阪寺の御本尊の前でそのスタンプを捺し、二日がかりで四寺院めぐりの重ね色巡礼スタンプを完成させたのです。
壺坂寺のスタンプの色は紫でした。四寺院の中では一番濃い色で、最後の最後の一色が加わって締まった感じの絵になりました。こうして、小生のあじさゐ回廊めぐりは終わりました。
梅雨のシーズンにぴったりのイベントに今回は大和路をまわりました。いい企画ではありましたが、何しろ今年は梅雨が短かかった上に、梅雨らしい一日ジトジト雨という日は少なく、晴れ間と夕方に激しい豪雨という夏本番のような天候が多かった気がします。
イメージしていた雨の風景とは遠い結果になってしまったのが残念ということで、ここイベントには来年も参加してみようかと思っています。来年こそ雨の紫陽花をきれいに写したいと思っています。