解除会 ─ 東大寺 大仏殿 令和2年7月28日 ─ | タクヤNote

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元mixi『東大寺』『南都七大寺』コミュニティ管理人で、
現在は古都奈良の歴史文化の紹介、
アメーバピグや、配信アプリ『RIALITY』で知り合った人の
アバターの絵を描くなどの自作イラスト紹介をしています。

7月28日は毎年、東大寺大仏殿で解除会(けじょえ)という法要が行われます。解除会とは、チガヤの藁で作った茅の輪をくぐり無病息災を祈願するという法要のことです。このブログで東大寺大仏殿での解除会を取り上げるのは、実は今回が二度目となります。
 
前に取り上げたのは2013年7月21日、佐保の門跡寺院・法華寺で行われた蓮華会式と併せ『南都七大寺茅の輪くぐりー ─ 東大寺・解除会 法華寺・蓮華会式 ─』というタイトルで書かせていただきました。このブログ記事で、解除会について解説を書いてますので、ここに転記します。
 
茅の輪くぐりというのは、備前風土記の蘇民将来の兄弟の話に由来する夏の災厄避けの行事です。茅草をしばって作った輪をくぐることによって穢れを払い、疫病などその年の夏の災厄を免れるのです。かつては夏越しの大祓(なごしのおおはらえ)の名で宮中行事として行われた祭事でした。
上代において天災として重要視されたのは、農作物の不作や疫病蔓延であり、いずれも夏の暑さによってもたらされるので、夏の厄払いは国家祭礼として重きを置かれたのです。
 
平成23(2011)年 解除会  画像参照:タクヤNote 2013年7月21日記事 
 

東大寺が建立された奈良時代は『天平の疫病大流行』と呼ばれる天然痘の大流行が歴史書に記録されています。日本人口の2割以上が死亡し、当時政治の実権を握っていた藤原不比等の息子『藤原四兄弟』が全員感染病で没したため、国政が機能停止となる異常事態となった大流行でした。この『天平の疫病大流行』は遣唐使によって唐から疫病を持ち込まれたということもあり、中国が感染源とされる今のコロナウイルス大流行と近年比較されることも多く、それに合わせて東大寺の疫病退散の法要・解除会も注目を集める様になったのです。

 

2013年にこのブログで紹介をしました9年前の東大寺・解除会ですが、参拝に行ったのは9年前の2011年のことで、この時は法要が始まった後に東大寺に入ったため、完全な形でのレポとならなかったのです。

それがずっと気になっていて「いつの日か、完全な形で東大寺・解除会のレポをしなくては」と思い続けて9年、今年やっと実現を果たしました。今回の記事は『東大寺 解除会 完全版』として、今月28日に参拝した東大寺大仏殿でのレポを書きたいと思います。
 
前回今年、奈良に入ったのは朝の7時半。かなり余裕を持って東大寺に行くことが出来ました。なお、7月15日のブログ記事で宣言していた通り、この日は『ピグでアマビエさま』Tシャツを着ての奈良入りをさせてもらいました。
 
 
小生が大仏殿院に到着したのは午前7時50分くらい。大仏殿院の開門が午前8時と思って来たのですが、今は7時半が開門時間と早まっているのですね。大仏殿にはすでに多くの人が解除会の法要が始まるのを待つ参拝者の姿が見えてました。そして大仏殿の基壇に茅の輪がすでに置かれているのが見えました。
 
 
大仏殿の正面石段の所には解除会をお目当てとした参拝客の他、テレビ局の取材陣の姿も。小生が確認したところではNHKと奈良テレビが来ていました。
 
 
そして午前8時4分くらい、9年前は見逃した、解除会の始まりの様子をようやく見ることが叶いました。まずは堂外の基壇の上で、法要の補佐をする童子という役の二人の僧が、チガヤの藁で作った茅の輪を両側を持って構えます。
 
 
ここで、大仏殿の西(左)から法衣姿の僧侶が列をなして登場します。解除会の法要を行う東大寺一山の僧侶の皆さんです。列をなしているのは、法要を行う前に全員が茅の輪くぐりを行い、厄を祓うためです。
 
 
僧侶の人は一人一人、茅の輪を越えた所で合掌して立ち止まると…
 
 
茅の輪を持つ童子が、茅の輪の方を前に後ろにくるくると回すのです。これは、茅の輪をくぐる時に八の字に左右に回るというのが本来の作法なのですが、ここではその代わりに茅の輪の方を回すというスタイル。見たところ「効率化??」と思ってしまいました。
 
 
実はこの僧侶の茅の輪くぐりは、解除会の見どころの一つでありまして、テレビカメラが大仏殿の中央の基壇上を陣取られたのも、この僧侶による茅の輪くぐりを正面から撮影するためであります。
本当は9年前にもこれを見たいと思っていたのです。前回見ることの出来なかった一山の僧侶による茅の輪くぐりを、今年時間に遅れずに東大寺に入り、ようやく目の前で見ることが出来て、写真にも収める念願がかないました。
 
 
この茅の輪くぐりの行列は4分ほどで終わると、寺職員の人によって茅の輪は殿内に運び込まれます。
 
 
殿内には大仏の向かって左側に竹竿が横向きに取り付けられており、運び込まれた茅の輪はその竹竿に結わえ備え付けられるのです。
 
 
その間に、一山の僧侶は大仏の安置されている基壇の左側を、大仏を囲うようにずらりと並びます。こうして大仏に夏の悪疫を祓う解除会の法要が始まりました。祈念祈祷の声明は美しく、広い大仏殿の中に響き渡ります。
 
 
法要は約1時間と、ちょっと長いという印象でした。式代はちょっとわからなかったのですが、法要中は導師と思われる僧侶が正面で声明を読まれたり、散華の籠を持った白装束の4人の僧侶が大仏の周りを回向されたりしていました。
声明が読み上げられる中、鍾を童子が打ち鳴らし、その音が大仏殿内を響き渡ります。
 
 
 
法要が終わると、僧侶のみなさんが壇上から下の参拝者に散華を撒くのも9年前と同じ。散華を拾われた方にお願いをして、拾った散華を写真に撮らせてもらったのも9年前同様にさせていただきました。
今年はコロナの影響で散華は自粛されるのかとも思いましたが、僧侶と参拝者の距離が離れていましたし、感染の心配は無いと判断されたようです。
 
 
 
ちなみに、9年前に撮影した散華の写真が下の画像です。この時はきれいなお姉さんにフレームインしてもらいました。(画像引用:2013年7月21日記事
 

 

ここから参拝者による茅の輪くぐりです。法要中に参拝者が茅の輪くぐりが出来ないという訳では無く、茅の輪をくぐっていた参拝者も何人かおられたのですが、大多数の参拝者は法要が終わり、一山の僧侶が大仏殿を退出してから、列を作って茅の輪くぐりをされていました。

ここでテレビ局は参拝者が茅の輪をくぐる様子が撮影するために、茅の輪の出口側を陣取ってカメラを構えていたのです。小生もこのタイミングで茅の輪をくぐったのですが、カメラがこちらを向いているところをくぐるのはかなり緊張をしました。

 

 

家に帰った小生は、奥さんと二人でNHKの夕方のニュースをチェック、この日の解除会の模様もニュース映像で取り上げられていました。

特に奥さんは7月16日に小生が作った生蓮寺のアマビエ・てるてる坊主がニュースで紹介されたこともあり大きな期待をして映像を食い入るように見ていましたが、残念ながら小生の姿はニュースでは流れることはありませんでした。今回は『ピグでアマビエさま』Tシャツを着て東大寺に望んでましたから、写っていればかなり目立っていたと思われるところでしたが、残念でありました。

 

 

 

 

例年ならこの7月28日だけというのが恒例の大仏殿の茅の輪ですが、今年は特別に山の日の祝日である8月10日まで約2週間大仏の左側に据え付けられ、参拝者は茅の輪くぐりをすることが出来ます。もちろん、新型コロナウイルス感染拡大による悪疫退散祈願のためです。

 

 

東大寺をはじめとする奈良の寺社の本来の建立意義は国家繁栄と安寧にあります。特に東大寺大仏は光を放ち世界に慈悲で満たすという光明遍照の仏であり、巨大な仏像として造像されたのはその光が出来るだけ広く世界中をあまねく満たされるようにという願いからなのです。

今年の解除会は特別な想いが込められたものとなりました。巨大な慈光の仏の加護が世界中に届くように、その祈りはひとしお深いものがありました。

 

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