電磁砲44です。
年末にXを覗いていましたが、ケーブル不足の影響が各所に出ているツイートがすごく多かったのが印象的です。そこで、今回はこのケーブル不足がいつまで続くのかを考えてみたいと思います。
結論から言うと、3月から4月頃に一時的に解消する可能性はありますが、影響は2024年中盤ごろまで残ると思われます。また、今回のような事態が今後も頻繁に発生する可能性もあります。
目次
VVRケーブルの駆け込み需要
低圧屋内配線用ケーブルのVVRで駆け込み需要が発生し、供給が不安定になっています。実際矢崎エナジーシステム株式会社はVVRの新規受注と納期回答を一時中断しました。
各種ケーブルの新規受注及び納期回答について(矢崎エネジーシステム株式会社)
その他、IV線などの低圧電線にもケーブル不足の影響が及んでおり、電気工事業界にとって厳しい年末年始となりそうです(令和5年12月31日現在)。
メーカーの見解
では、このケーブル不足はいつまで続くのでしょうか。2021年11月から2022年2月頃まで、今回と同様にケーブルが不足し、市場が混乱しました。今回のケーブル不足が2024年2月から3月ごろには落ち着くと、メーカーでは読んでいるようです。
また、先のVVRの駆け込み需要の発生からもわかる通り、各所で在庫を抱えようとする動きが活発化しており、さしずめ、コロナ禍初期のマスク騒動すら連想させます。
銅価格の推移
1ヵ月の平均銅建値と平均円相場の推移グラフが次の通りです。
橋本興産株式会社のHPより引用
このグラフから、1ヶ月銅建値はおよそ1,200千円/t後半で推移しており、この傾向が2021年から続いています。また、1,200千円/tは2016年のおよそ倍の金額となります。これは、「価格が高止まりしている」という先ほどのNHKの番組に登場していたメーカー担当者の発言を裏付けています。
銅の需給・供給について
銅価格を決定するのが需要と供給のバランスになります。2023年12月4日の「鉄鋼新聞」は次のように報じています。
この記事によると2023年は銅の需要が上回っていたが、2024年は供給過剰になる見込みと報じています。とはいえ供給量はインドネシア鉱山の稼働が2025年へずれ込んでいることから、依然不透明です。
別記事になりますが、朝日新聞が銅の需要と供給について特集を組んでいます。
再エネ及びEVへのシフトを加速させる影響から中長期的にみると銅の不足感は2050年頃にピークを迎えるという記事です。よって、現在の銅不足は一時的には解消するかもしれませんが、同様の事態が今後も発生する可能性が高いことを示しています。
ケーブル樹脂の市場
ポリ塩化ビニルの市場は、世界的には拡大する見込みである一方、規制強化により成長が阻害される見込みであるとされています。したがって、ケーブル樹脂類に関する不足が早急に発生する見込みは小さいものの、今後PVC調達の影響によるケーブル不足が発生することがないとは言い切れません。
ケーブル不足はいつまで続くのか?
銅の供給量が2024年には回復する見込みであること、およびケーブル製造メーカーもフル稼働しているという状況も鑑みると、今回のケーブル不足が3月頃に収束する可能性はあります。気を付けなければならないのは、銅の供給にしてもケーブルの供給にしても、早急に回復することはないということです。よって、現在ケーブル不足の状況が3月頃から供給が回復し始めても、おそらく5月から6月ごろまでは影響が残ると思われます。
また、長期的には銅需要は今後も拡大する見込みであることから、今回のような事態が今後も発生する可能性は高いと思われます。
いかがでしたか、今後も銅需要の高まりにより受注停止という事態がいつ発生してもおかしくありません。電気工事業自体が人手不足に苦しむ中、ケーブルの供給停止という事態は業界全体に影響を及ぼしかねず、更なる人手不足を誘発することにもなりかねません。業界全体で対応策を考える必要があります。
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