『世にも怪奇な物語』
1967年 フランス・イタリア
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 ロジェ・ヴァディム/ルイ・マル/フェデリコ・フェリーニ
原作 エドガー・アラン・ポー
脚本 ダニエル・ブーランジェ/パスカル・カズン/クレマン・ビルド・ウッド/ベルナルディーノ・ザッポーニ
撮影 クロード・ルノワール/トニーノ・デリ・コリ/ジュゼッペ・ロトゥンノ
音楽 ニーノ・ロータ/ディエゴ・マッソン/ジャン・プロドロミデス
出演 ジェーン・フォンダ/ピーター・フォンダ/アラン・ドロン/ブリジット・バルドー/テレンス・スタンプ/サルボ・ランドーネ
《解説》
沈む陽の血の色が染めた狂おしい幻覚か、闇の彼方から聞こえる悪魔の慟哭か、三大監督が絢爛と描く美と怪奇の超現実世界!
怪奇と幻想美あふれるエドガー・アラン・ポーの小説世界を、豪華キャストを迎え、3人の映画監督、ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニが映画化した3話のオムニバス映画
女伯爵の歪んだ愛が引き起こす悲劇を描くロジェ・ヴァディム監督作「黒馬の哭く館」、自らの分身と対面した男が皮肉な運命をたどるルイ・マル監督作「影を殺した男」、青年俳優が少女の幻影に誘われるフェデリコ・フェリーニ監督作「悪魔の首飾り」の3作から成る
《物語》
メッツェンゲルシュタイン伯爵夫人のフレデリックは22歳の若さで莫大な財産を相続した、彼女は気まぐれでわがままで昼夜思いのままに過ごしていた
その朝、夜明けに悪夢に憑りつかれ、幼少期を過ごした城に客を連れ出した、神をも恐れぬ放埓な振る舞い、残忍な仕打ち、家臣は何事も身の安全を保障しない事を知った
彼女の容赦なき爪に対しては、全ての人々が彼女の言うままになった、彼女に嫌われる事を恐れたからだ、ただ一人最も貧しい分家ベルリフィジング家の当主は彼女の振る舞いを公然と批判した
両家は数世紀に渡って反目し、当主のウィルヘルム・ベル男爵と森の中で知り合ったフレデリックは誘惑するのだが相手にされず、復讐を決めるのだが
幼い頃から冷酷で狡猾だったウィリアム・ウィルソンは、ある日、同姓同名の瓜二つの男が現れた、それは競争相手というより分身というべきで絶えず自分に注目しているようだった彼は苛立たせ好奇心を抱かせた
数年後、医大に入ったウィルソンはある夜、街で女を捕まえた医学生らの前で女を裸にしてメスを滑らせるが、現れた分身が女を解放
医大を辞めて軍隊に入ったウィルソンは賭博場で美女から侮辱を受け、彼女とカードで勝負し、イカサマで勝利し、彼女を仲間の前で裸にして鞭を打って楽しんでいるとそこに分身が現れ、イカサマを暴いて去って行く、怒り狂うウィルソンは分身を殺してしまうが
かつてイギリスの有名俳優トビー・ダミットがローマの空港にやって来た、彼は薬物とアルコールに溺れ、仕事も出来ない状態だったが映画出演オファーがあったのだ
撮影クルーが彼を出迎え、カトリック西部劇を作りたいと話す、彼はそこで少女を見た、大きなボールを持っていて遊べると確信しているようだ
得体の知れない不安からトビーは酒を飲み続け、報酬で貰ったフェラーリを走らせ続けるのだが、悪魔の化身というべき少女の幻影に憑りつかれてしまう
《感想》
8月18日にアラン・ドロンが亡くなりました、88歳でした、アラン・ドロンは愛犬を安楽死させて一緒に埋葬してほしいとの遺言は執行されなかったそうです
追悼レビューとして何にしようかと迷いましたが、人気1位の「太陽がいっぱい」は以前にレビューしているので意外と人気上位の本作にしました
三話からなるオムニバスで孤高の文豪エドガー・アラン・ポーの怪奇幻想小説をフランス・イタリアを代表する名匠、ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニがそれぞれ傑作オムニバスホラーです
第一話の「黒馬の哭く館」は、ロジェ・ヴァディム監督が当時の妻ジェーン・フォンダをヒロインに起用し、実弟のピーター・フォンダと共演
伯爵夫人のフレデリックを演じるのは「バーバレラ」のジェーン・フォンダで、傍若無人なわがまま放題で他人の命も軽く思っているまるで暴君です
そんな彼女が森で狩猟用の罠に足を挟まれて動けなくなったところを分家である男爵家のウィルヘルムに助けられます、ウィルヘルムを演じるのは「イージー・ライダー」のピーター・フォンダ
両家は反目し合っているのですがフレデリックはウィルヘルムに惹かれて誘惑しようとするのですが、彼は彼女を軽蔑しているので誘惑には乗りません
それに怒ったフレデリックはウィルヘルムの馬小屋に放火させます、馬小屋を燃やして笑っていたのですが、ウィルヘルムは愛馬を逃がそうとして焼死してしまいます
殺すつもりはなかったフレデリックですがショックを受けて憔悴、そこにウィルヘルムの馬小屋から逃げてきた黒い馬を自分の愛馬としてそれからはずっと一緒にいるようになるんです
第二話は「影を殺した男」で、ルイ・マル監督が瓜二つの男の存在に悩む士官の話しで、アラン・ドロンが一人二役で演じています
それは子供の頃から現れます、狡猾でサディストのウィリアム・ウィルソンは教師を欺き、イジメももちろんリーダーとなって執拗にイジメます
そこに現れたのが自分と瓜二つで名前もウィリアム・ウィルソン、彼のおかげで寄宿学校を追い出されてしまうウィリアムは大学生になってもそれは現れます
夜道で捕まえた女を教室に連れ込んで仲間と裸にして縛ってメスを滑らすサディストっぷり、そこにもう一人の自分があらわれて女を解放、周りで囃し立てていた仲間は恐ろしくなったのか退散
大学を辞めたウィリアムは軍隊に入隊して士官となる、賭博場で美しい女性ジュセピーナと出会いカードで勝負、ジュセピーナを演じるのはブリジット・バルドー
最初はジュセピーナに勝たせて徐々に自分に運が向いて来たかのように勝つんです、しかしそれは全てイカサマで他に注意を引かせてカードを取り換えているんです
払えないほどの金額を負けたジュセピーナは最後に勝てば帳消し、負ければウィリアムのものになるという勝負をして負けるのです、ウィリアムは仲間がいるところでジュセピーナを脱がせて背中に鞭打ちをするんです、まあ痛そうなんです
そこにもう一人の自分が現れてイカサマを暴いて去るのですが、ジュセピーナがウィリアムを往復びんたを数回するのは痛そう、それに士官もクビに、そしてもう一人の自分を殺して教会で懺悔するのですが
第三話は「悪魔の首飾り」で、少女の幻影に憑りつかれた人気俳優トビーをテレンス・スタンプが演じ、フェデリコ・フェリーニ監督ならではのシュールなタッチで印象的です
薬物とアルコールに溺れ、一年は仕事をしていないトビーはフェラーリを報酬に映画出演、まずはテレビのインタビューを受けるのですがこれがなんだか豪華なセットで煌びやか
それでもトビーは終始酔ってます、支離滅裂で意味不明なトビーは報酬であるフェラーリに乗って町中を走りまくります、石畳の街並みはやっぱフェラーリに似合います
フェラーリを爆走するシーンでマネキンが効果的でなんか怖いです、道に迷ってローマに戻れないトビーは大通りや裏道を爆走、まあ飲酒運転でよくここまで、まあ事故りますわ
疾走するフェラーリのスピード感から一転しての重厚な怖さ、少女の幻影はトビーを地獄へと誘います、トビーもそれに応えて、走りますが通行止めのワイヤーに首が撥ねられてボールがふたつに
全体的に鋭いタッチで描かれていて、圧巻の世界観に引き込まれます、ナーバスな演技でヒリヒリさせ、ユニークで個性的なスタイルです
ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニがエドガー・アラン・ポーの原作をもとに描く怪奇・幻想・耽美に彩られた世界 それが『世にも怪奇な世界』です。
アラン・ドロンは日本では特に人気があって、年配の人はいまだにイケメンの事をアラン・ドロンみたいって言ったりしてね。