『メビウス』
2013年 韓国
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本・撮影 キム・ギドク
音楽 パク・イニョン
出演 チョ・ジェヒョン/ソ・ヨンジュ/イ・ウヌ/キム・ジェホン/キム・ミンソク/ユ・ジェヒョク/チャン・ウン/チャン・チョルミン/チェ・ジェヒョン/ユ・ドンフン/キム・ジェロク
《解説》
人間の業が、廻る
ベネチア映画祭で初披露され、センセーショナルな1作として話題を呼んだ韓国の鬼才、キム・ギドク監督の最新作、関係の冷え切った上流家庭の父と母と息子を通して、現代の性と家族と愛を痛烈に描き出す
全編にわたって一切セリフがないというギドク監督ならではの独創的な手法が斬新、感情の変化を体で表現した俳優3人の演技にも注目
《物語》
ごく普通の裕福な家庭に見える家族、しかし父と母の仲はすでに冷め切っており、朝から父にかかってきた電話で掴み合いのケンカをする父と母
ある夜、自宅近くに停められた車の中で父と愛人の女がセックスしているところを帰宅途中の息子が目撃、同じく父の浮気を疑っていた母も目撃
母は愛人の女が経営する雑貨店の窓を割った後、父の眠る寝室に入った、怒りに震える母はナイフで父の性器を切断しようとするが失敗
父は部屋から母を突き飛ばして追い出した、母が次に向かったのは息子の部屋、母は寝ている息子に近付き、性器をナイフで切り落とした、息子の叫び声を聞いて駆け付けた父親が息子を担いで病院に向かうが、母は家を出て行く
退院後、トイレもまともに出来ない息子は性器がないことを同級生に知られ苛めの対象となってしまい、ズボンとパンツを脱がされてしまう
学校にも行かなくなった息子は父親の愛人の女の雑貨店を訪れる、そこで女は息子を見て肌も露わに挑発してみせ、息子もその挑発に乗る
それ以来、息子は度々女の店を訪れるようになるが店の前で苛めグループにパンツを脱がされそうになったところを通り掛かった3人の不良たちが追い払ってくれた
息子とその不良たちは雑貨店に入り浸るが女に目をつけ、3人は店の奥で女を襲い、入れ代り立ち代り強姦し、最後に泣いている女とセックスのフリをする息子
後日、息子は強姦罪で逮捕される、父は無実を証明しようと息子のパンツを下げようとするが息子は父を殴り蹴り続け、収監され独房へと入れられる
父は病院で性器の切除手術をし、性器のない状態でオーガズムを得る方法を探し、石を肌に擦り続けることでオーガズムを得られるとわかった
それを息子にも教え、独房でオーガズムを得ることに成功、父と息子の間に再び絆が生まれ、出所した息子は女の元を訪れ、痛みを通して女と快楽を共有
息子は父の性器の移植手術をして性器を取り戻すが反応はしない、そんな中、母が家に戻り破滅へと向かっていく
《感想》
とにかく凄いです、セリフは叫び声や喘ぎ声だけ!、もともとキム・ギドクの作品はセリフが少ないのですが本作は一言もない、比較的一般向け作品もありますが、監督作はやはり商業的ではないのですが凄いんです
本作は韓国でも最も過激な場面をカットして署名活動の末に一般公開されました、日本では撮影当時15歳のソ・ヨンジュがイ・ウヌの乳房を触る場面は児童ポルノ法に抵触するかもしれないとされたためにキム・ギドクが再編集して日本での公開が可能となりました
このイ・ウヌが演じる母と女の二役が凄いです、表情がまったく違うんです、劇中では大きな胸を晒して熱演しています、息子を誘惑する顔がイイですね
母の役で息子の性器を切り落とすのですがこの表情はまるで悪魔のようです、自分の夫が浮気してるからって息子にその怒りを向けるかね?
自分の浮気が原因で息子を酷い目に遭わせてしまった罪の意識から自殺も考えるのですが女と別れて息子の為に生きようとするんです
男として性器はシンボルと言われるものです、これが無くなったなら生きる気力がなくなる男もいるでしょう、劇中でも描いていますがオーガズムは性器から得られます
性欲がわいてもそれを処理することが出来ないんです、こんな辛いことはないですよ、10代の少年ならば毎日のようにするでしょうから
でも父は息子のそれを心配して自身の性器を切除して他の方法でオーガズムを得る方法を調べるんです、それによって父は痛みからオーガズムを得る方法を知り習得
息子に教えて息子もマスターして痛みからオーガズムを得るようになるんです、それで女の元を訪れてナイフを肩に刺してグリグリして快感を得ます
そして父は自分の切除した性器を息子に移植、手術は成功するんですがどんな刺激を与えても反応することはないんです、父も諦めかけた時に出て行った母が戻ってきます
でも母に触られた時に反応するんです、今まで反応しなかった性器が反応するんです、しかし家族は破滅の道を辿ります、とにかく不幸の渦です
この映画はイ・ウヌによる力が大きいですね、キム・ギドクはいつも凄い女優を見付けてきますね
不貞の父、嫉妬に憑りつかれた母、切り取られた息子 それが『メビウス』です。
キム・ギドク作品は内容はどうあれ観たくて観たくて仕方ないんです、賛否はありますがたしかに鬼才です。
更に過激な続・裏237号室の『メビウス』のレビューはこちらです。