あゝ、荒野 | 続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

タカによるA級からZ級映画まで、榮級は絢爛豪華な超大作、美級は美しい女優や映像美、死級は禍々しい阿鼻叫喚、出級はあのスターの意外な出演作、イイ級は耽美なエロティシズム、Z級は史上最悪なクソ映画、その全てをレビューと少しの競馬予想と日常の出来事

 

 

 

 

 

『あゝ、荒野』

 

 

 

 

 

2017年 日本

 

 

 

 

 

《スタッフ&キャスト》

 

 

監督・脚本 岸善幸

 

原作 寺山修司

 

脚本 港岳彦

 

撮影 夏海光造

 

音楽 岩代太郎

 

 

 

出演 菅田将暉/ヤン・イクチュン/木下あかり/モロ師岡/高橋和也/今野杏南/山田裕貴/河井青葉/前原滉/荻原利久/小林且弥/川口覚/山中崇/でんでん/木村多江/ユースケ・サンタマリア

 

 

 

 

 

《解説》

 

 

孤独をブチ壊せ

 

寺山修司が遺した唯一の長編小説「あゝ、荒野」の舞台を近未来の新宿に移して、「帝一の國」の菅田将暉&「息もできない」のヤン・イクチュンのダブル主演で実写映画化する2部作

 

共演に「踊る大捜査線」シリーズのユースケ・サンタマリア、「ぐるりのこと。」の木村多江、「HiGH&LOW」シリーズの山田裕貴、「二重生活」の岸善幸監督がメガホンをとる

 

 

 

 

 

《物語》

 

 

2021年の東京・新宿 少年院から出所したばかりの沢村新次、その日本では政府による社会奉仕プログラムという名の徴兵制度を国家が行おうとする制度に反対する団体が過激なデモ活動をして死者も出ている

 

新次の父は自殺し、母は新次を捨てた、孤児院では虐められ庇ってくれた先輩の劉輝と共にお年寄りの狙った特殊詐欺を行うようになった

 

 

しかし新次と劉輝は詐欺の現場で仲間だった山本裕二に裏切られて集団で襲われた、劉輝は血塗れで倒れ、新次は裕二の仲間を刺した事で殺人未遂で逮捕された、新次は元仲間に会い、裕二の居場所を聞いた

 

理髪店で働く二木健二は吃音と赤面症に悩まされていた、真面目に働く健二だったが稼ぎは父親に取られ、暴力を振るわれていて怒りを溜め込んでいた

 

 

プロボクサーとなりジムで練習している裕二に殴りかかった新次だったが腹に一発打たれてダウン、ジムを出て嘔吐して倒れた新次を助けたのが健二で、そこにビラ配りしていた堀田が飲みに誘い、新しいジムを開く予定だと2人を誘う

 

 

新次は劉輝に会いに行くが劉輝はケガの影響で半身不随となり車椅子バスケに励んでいて、その姿を見た新次は声を掛けずにその場を去った

 

その後に喫茶店で知り合った芳子とそのままホテルに行って関係を持つ、新次は3年ぶりに抱いた女に興奮し、愛を感じて7回にも及んだ

 

 

翌朝に目を覚ますと芳子はいなくなっていて自分の有り金を抜き取られていた、怒る新次だったが行くあてもなく堀口のジムへとやってきた、同じ頃に健二も父親の暴力に耐えられず家を出てジムに身を寄せる

 

2人は仕事をしながら基礎練習から始めて鍛えていく、堀口は2人にトレーナーを付ける資金を捻出するために中年ホストとして夜も働き、それを知った新次と健二は練習に励みプロテストに合格

 

 

祝杯を挙げて中華料理店に行った新次と健二と堀口、そこで店員の芳子と再会した新次、芳子も金目当てで男と寝ているわけでなく、東日本大震災に被災し、母と生き残るも母を置いて芳子は家を出た、自分に想いを寄せる新次と知り合い、売春をやめる

 

 

デビュー戦を快勝した新次は次々と勝ち進むが劉輝が裕二と笑顔で会っているのを見て、2人は和解したことを知るが、その鬱積した思いは新次だけ

 

もう全ては自分の為の復讐と考えて裕二との決着の為に勝ち続ける新次だったが、健二も新次との対戦を望むようになる

 

 

 

 

 

 

《感想》

 

 

菅田将暉が本作での日本アカデミー賞主演男優賞受賞はなんとなく想像ができました、それぐらい壮絶な作品で、細い菅田将暉が体重を増やしてボクサーらしい体を作り上げて演じています

 

 

韓国のヤン・イクチュンがW主演なんですけど、背の高さは菅田将暉より低いのですが体重は20キロくらい重くて同じ階級なのでヤン・イクチュンは減量して挑みました

 

 

この2人をスカウトする堀田を演じるのがユースケ・サンタマリアで元ボクサーで片目が見えないんです、ボディーを打つ動きはそれらしかったですよ

 

 

堀田にトレーナーとして雇われる馬場を演じるのがでんでん、この鬼気迫る演技が好きで、ジムを閉める時の哀しそうな演技はグッときました

 

新次の宿敵となる裕二を演じるのが山田裕貴で彼は売れっ子で17年だけで凄い数の作品に出てます、その裕二に車椅子生活にされた劉輝を演じるのが小林且弥で半身不随にされたけど裕二を許す劉輝を繊細に演じます

 

 

新次からしたら自分の兄貴分の劉輝を半身不随にした裏切り者の裕二が一緒に仲良く交流してるなんて、怒りをどこにぶつけたらいいのか葛藤するでしょうね、劉輝はこんな体にされても許せるんですね

 

芳子に金を盗られたことで仕方なく住むためにボクシングを始めたような新次と意味は違うけど似たような境遇だったかもね、怪我の功名みたいなね

 

 

本作では女性陣も頑張ってます、芳子を演じるのが主に舞台で活躍する木下あかりで、大胆なヌードとセックスシーンを体当たりで演じています

 

 

菅田将暉とはじめましての3分後にはセックスシーンだったそうです、その方が初めてのセックスを描くのに良かったでしょうね、駅弁まで披露してますから

 

 

健二に助けられる恵子を演じるのが今野杏南で彼女も初のヌードを披露しています、グラビアアイドル出身なだけにそのボディは見事なものでした

 

 

芳子の母親セツを演じるのが河井青葉で個人的には彼女はなんだか色っぽいんです、震災で足を怪我して自宅で売春しているんです、娘の芳子も売春をするのは親を見て育ったからでしょうか?

 

 

そして新次を捨てた母親京子を演じるのが木村多江で彼女の幸薄い感じが好きです、でも本作は息子を捨ててでも自分の人生を生きたいと言うんです、強い女です、ラストの試合のシーンでは新次に「殺せー!」って叫んでます

 

 

新次も堀田のボクシングジムの社長の妻が母親とは夢にも思いません、再会を果たすのですが一度捨てた絆なんてのは取り戻せません、新次は母親を汚い物を見るような目で見ます

 

とにかくボクシングの試合シーンは凄まじいです、血塗れで殴り合い壮絶です、ここまで命を削るような映像にしないとボクシングに見えないのかもね

 

 

菅田将暉とヤン・イクチュンのラストの試合は長くて本当に凄い、試合が終わった後に新次が控室で座っているシーンでおいらは鳥肌が立ちましたよ、それほど凄かったです

 

 

 

 

振り向くな、後ろには夢がない それが『ああ、荒野』です。

 

 

 

 

CSで完全版というのを観ました、DVD版はR18だそうです、より壮絶な試合とセックスが描かれているのかな?ボクシング映画ですがそれ以外に自殺やテロや震災や徴兵なんかも描かれています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に過激な続・裏237号室の『あゝ、荒野』のレビューはこちらです。