『恋する惑星』
1994年 香港
《スタッフ&キャスト》
監督・脚本 ウォン・カーウァイ
撮影 クリストファー・ドイル/ケン・ラーワイ
音楽 フランキー・チャン/ロエル・A・ガルシア
出演 トニー・レオン/フェイ・ウォン/ブリジット・リン/金城武/バレリー・チョウ/チャウ・カーリン
《解説》
その時、ふたりの距離は0.1ミリ、57時間後、彼は彼女に恋をした
麻薬取引にかかわる金髪の女ディーラーと、恋人にふられ落ち込み気味の刑事モウとの不思議な出会い、そして、モウが立ち寄る小食店の新入り店員フェイと、スチュワーデスの恋人にふられる警官との出会いとすれ違い
香港を舞台に若者たちのすれ違う恋模様をスタイリッシュに描いき、香港ニューウェイブ、ウォン・カーウァイ監督の名を一躍世界に知らしめた群像ラブストーリー
刑事223号を金城武、刑事633号をトニー・レオンが演じる、第14回香港電影金像奨で最優秀作品賞など3部門を受賞
《物語》
ある事件の捜査中だった警官223号は容疑者が逃走したために追いかけ、雑踏の中で金髪の女とすれ違った、その距離は0.1ミリ、57時間後に223号は彼女に恋をした
恋人のメイがお気に入りだった店、ミッドナイト・エキスプレスでいつもメイを待っていた、彼女とは些細な事で別れてしまった223号
金髪の女は麻薬のディーラーをしており、九龍の雑居ビルで服や靴、鞄の中に麻薬を隠して準備をしている、大勢の密入国のインド人の男たちを運び屋として使い空港に向かう、しかし取引相手は現れず裏切られたのだ
223号はエイプリルフールに失恋し、メイが忘れられずフラれた日から一か月後の自分の誕生日までパイナップルの缶詰めを買い続け、その日が恋も期限切れだ
しばらくして金髪の女は命を狙われるが相手を射殺して逃げた、その後にバーに入るとそこに223号が偶然にいて知り合う事に、次に会った女と恋をしようと決めている223号だが、疲れている金髪の女は素っ気ない
一緒にホテルに行くが金髪の女はすぐに眠ってしまいハイヒールをそっと脱がせた、夜が明けて223号はそっとホテルを出た、25歳の誕生日の朝、金髪の女からバースデイコール
金髪の女は裏切った男を射殺、金髪のカツラとサングラスを捨てて去って行った
223号はミッドナイト・エキスプレスで新入りの娘フェイとすれ違った、その距離は0.1ミリ、6時間後彼女は別の男に恋をした、店の常連である警官663号がやってきた
彼はCAをしている恋人と破局したばかり、663号はフェイに話し掛けて打ち解けた、663号の元恋人はミッドナイト・エキスプレスの店主に663号宛ての手紙を託した
フェイはその手紙を開け、中には663号の住む部屋の合鍵が入っていた、フェイは合鍵を使って663号の部屋にこっそりと忍び込む、そして部屋の模様替えや掃除をする
寄りを戻そうとする元彼女からの留守電を消去、やがてフェイの気持ちに気付いた663号はフェイを誘う
《感想》
香港映画と言えばカンフー映画やアクション映画のイメージだったのですが、こんなスタイリッシュな恋愛映画が登場するなんて本当に驚きでした、「欲望の翼」のウォン・カーウァイはほぼ即興で撮ったとか
金城武が演じる警官223号は雑踏の中で金髪でサングラスの女とすれ違うんです、この金髪の女は九龍のマンションを拠点に活動するドラッグ・ディーラーで密入国したインド人を運び屋に使っているんです
大勢のインド人にスーツと荷物を渡してドラッグを積めて運ばせるんです、でも裏切られてインド人もドラッグも消えてしまうんです、金髪の女は打ちひしがれてしまいます
キュートでフェミニンな金髪の女を演じるのはブリジット・リンで強烈なファッションでめちゃ目立ちます、それでいてドラッグ・ディーラーなんです、金髪に金色の服に赤いフレームのサングラスなんです
そんな金髪の女が警官223号と知り合います、命を狙われて逆に相手を殺して来た後に寄ったバーでなんです、犯罪者と警察官なので何かありそうだと思うのですが、特に何もなし(笑)
223号が金髪の女を口説いてホテルで一緒に泊まるだけなんです、泊っても223号はハイヒールを脱がしただけ、イイ女だったら下心が出てきそうですけど223号は紳士なんです
でも何故か恋人が忘れられずに自分の誕生日までパイナップルの缶詰めを毎日買うんです、普通は当日の日付の缶詰めなんて売ってる訳がないですもんね
金髪の女も223号の誕生日にメッセージを残して、裏切った男を射殺するんです、そしてそこで金髪のカツラとサングラスを捨てて行くんです、何だかカッコ良かったです
トニー・レオン演じる警官663号はCAの恋人がいるんです、金髪の女や小食店のフェイらの個性が強烈なので男たちの印象が薄いのは仕方ないですね(笑)
恋人が帰る時は663号の部屋からエスカレーターが見えてそこで恋人は663号をずっと見てるんですけど、その時に見えなくなってだんだんとしゃがむ姿がセクシーでした、演じるのはチャウ・カーリン
そんな663号は恋人と別れてしまって行き付けの小食店に行くと新入りのフェイがいるんです、演じるのはフェイ・ウォンで本作の主題歌も歌っている歌姫でもあります
何かとフェイは663号にお節介をするのですが663号は行き付けの店員くらいの感覚なんです、そんなある日に恋人のCAが手紙を店主に言付けるのですが、それをフェイに頼むんです
フェイは中に入っていた鍵を使って663号の部屋に入って掃除や模様替えや水槽に魚を入れたりするのですが、663号はそれに気付かないんです、嘘~ん
それにしてもフェイ・ウォンはベリーショートの髪にチビTシャツなどのボーイッシュなファッションでこんな女の子いますよね、男に免疫がなくてそれでいてガンガン突き進んでいく感じです
監督のウォン・カーウァイはよくこんなスタイリッシュな作品を撮ってくれました、元々は3話構成だったのですが省略し、そのエピソードを膨らました姉妹編の「天使の涙」もあります
その時、ふたりの距離は0.1ミリ、6時間後、彼女は彼に恋をした それが『恋する惑星』です。
クエンティン・タランティーノが絶賛した事でウォン・カーウァイの名が世界に響きました