『シャイニング』
1980年 イギリス・アメリカ
《スタッフ&キャスト》
製作・監督・脚本 スタンリー・キューブリック
原作 スティーブン・キング
脚本 ディアン・ジョンストン
撮影 ジョン・オルコット
音楽 バルトーク・ベーラ/クシシュトフ・ペンデレツキ/ジェルジ・リゲティ/アル・ボウリー
出演 ジャック・ニコルソン/シェリー・デュヴァル/ダニー・ロイド/スキャットマン・クローザス/バリー・ネルソン/フィリップ・ストーン
《解説》
史上初のホラー映画
スティーブン・キングの小説を、スタンリー・キューブリックは鮮やかな演技、恐ろしいセット、幻想的な撮影映像、衝撃につぐ衝撃の融合を実現し観る者を恐怖に落とし入れる
鬼才キューブリック監督が「バリー・リンドン」以来、5年ぶりに発表したホラー映画、物語はジャック・ニコルソン扮する主人公が、冬季管理人として隔離されたホテルに妻子と訪れることから始まる、主人公はホテルに訪れたことがないはずなのだが…、その答えは狂気と殺人の中にある
《物語》
コロラド・ロッキーにあるオーバールック・ホテルに小説家のジャック・トランスと彼の家族が、冬期には閉鎖されるこのホテルへ、留守管理のためにやって来る
支配人のアルマンは、ここは前任者の管理人が孤独に心を蝕まれたあげく、家族を殺し自分も自殺したいわくつきのホテルと語るがジャックはまったく気にしない
妻のウェンディ、一人息子のダニーと共に住み込みを決める、ダニーは不思議な能力を持つ少年で自分の中にトニーという人間がいてそのトニーがホテルに行くことを賛成していないのだ
それにダニーの目の前で恐ろしい光景がよぎる、エレベーターの扉から滝のように血が流れだし、立ち尽くす双子の少女の不気味な姿の幻覚だった
ホテルの閉鎖日に料理主任であるハロランはダニーとウェンディにホテルの案内、ハロランもダニーと同じく不思議な能力を持っており、何かがこのホテルに存在するとダニーに語る
そして、猛吹雪により下界と隔離されたオーバールック・ホテルで3人だけの生活が始まった、ダニーは237号室の前の廊下を通る時に恐ろしい空気を感じていた
ジャックは作家という仕事柄、静かなホテルで書けることは都合が良いと思っていたが、実際は苛立つ事ばかりで執筆は進まない
そんな時、237号室に入ったダニーが何者かに首を絞められた、ジャックが237号室に行くとそこには妖艶な美女がシャワーを浴びていた、魅入られたように彼女に近づくと腐乱した老婆に姿を変えた
ジャックは次第にホテルの持つ不気味な魔力にとらわれていく、誰もいないはずのラウンジでバーテンダーと会話をし、止めていた酒を飲んだ
ジャックが封鎖的環境にだんだんとおかしくなっていき、妻がタイプライターを覗くと、「仕事ばかりで休まないジャックは頭がおかしくなる」と書かれていた
その通りにジャックはおかしくなりウェンディを殺そうと迫るがウェンディがバットで反撃し、ジャックは階段から転落、気を失ったジャックはウェンディによって食料倉庫に閉じ込められる
しかしジャックはホテルの巣食う何者かによって倉庫の扉を開けてもらいウェンディとダニーの部屋に迫るが直前にダニーが察知し部屋の奥に逃げる
ウェンディは部屋の小さな窓からダニーを逃がすがウェンディは脱出できない、ジャックは斧でドアを破壊し始め、ウェンディはナイフで応戦するのがやっと
そこに悪い予感を感じて吹雪の中をハロランが到着、一家を捜すが、そのハロランをジャックが斧で殺害、ジャックはダニーを見付け斧を振り回して追う
必至でダニーを捜すウェンディもホテルのあちこちに現れる得体の知れない者の姿を見てしまう、すぐにでもダニーを見つけ出したいウェンディ
ホテルの外の巨大迷路にダニーが逃げジャックも中へ、狂気の形相で息子を追い掛けるジャック、複雑に交錯する迷路を巧みに逃げ、ウェンディの元に
2人はハロランの乗って来た除雪車に乗り込むと、恐ろしいホテルから逃げ出した、翌日、降り積もった雪の中に凍りついたジャックの遺体があった

《感想》
タイプライターや三輪車など、主人公たちが常に使用する小道具が未知なる恐怖ゾーンへの扉となる発想が絶妙、恐怖が日常世界とは不可分の存在であることを、リアリスティックなドラマで立証した独創的作品です
子供の頃に深く考えずにホラー映画が観たいと思い、この映画を選びました、血まみれな映画が多い中、シャイニングは背筋がゾクッとする本当に怖い映画でした
ジャックがタイプライターで同じことを繰り返し書いてる場面や、息子が廊下でおもちゃで遊んでいるとテニスボールがコロコロっと転がってくるので見上げると長い廊下だけ、このシーンにゾクッとしました
「時計じかけのオレンジ」のキューブリックという人は徹底的な完璧主義者ですね、次の映画が8年後の「フルメタル・ジャケット」その次が12年ぶりの遺作となった「アイズ・ワイド・シャット」
こんなに期間を設ける監督はスタンリー・キューブリックくらいです、よっぽど準備に時間を掛けたいのでしょうね、完璧主義ゆえにトラブルも多いようです
原作は「キャリー」のスティーブン・キングでキューブリックが原作のニュアンスをガラリと変えたので訴訟問題にまでなりました、原作はジャックの内面を丁寧に描写していたはずですが、キューブリックは幽霊ホテルに重点を置いて映像化、逆にキューブリックはこれが成功だったと思います
キングはこれに激怒し、数年後にキング自身がTV映画として映像化しましたが、評判は芳しくなかったです、ただキング作品を映像化するにあたって、ほとんどが失敗、もしくは佳作ですが、本作は評価されている少ない作品の1つだと思います
この映画で「イージー・ライダー」のジャック・ニコルソンの凄さに取りつかれました、とにかく迫力満点です、ゾクッと怖いシーンはバーテンダーとの会話とか、ラウンジが着飾った客でいっぱいになってるシーン、ちょっとビックリして怖かった
それにウェンディに迫る階段のシーン、斧でドアを壊すシーンと一生忘れられないくらいインパクトありました、オープニングでウェンディがジャックがダニーに暴力は振るったと語るシーンが刷り込まれているからかも
とにかくジャック・ニコルソンじゃなかったらこんな凄い映画にはならなかったと思います、キューブリックもジャック・ニコルソンを認めているような感じですからね
それにやはりカメラワークですよ、移動しての撮影はキューブリックならではで、特にラストの雪の迷路のステディカム・カメラの効果は絶大です、あんな滑らかな映像は初めて見ましたよ
ダニーが三輪車でホテル内を走るシーンでも効果的でした、角を曲がったらいきなりいるのも怖かったですよ、おいらだったウロウロできないかも(笑)
そしてあの意味深なラストシーン、ジャックはホテルには行ったことないはずなんですけど、いろんな事を考えてしまうラストでした、それは輪廻転生とかでジャックは永遠に管理人をしているとか
本作には3バージョン存在するようです、初公開の146分版、このバージョンにはラスト以降に病院に入院しているウェンディをアルマンが見舞い、ダニーに忘れ物と言ってテニスボールを渡すシーンがあったらしいです
その後に全米公開の143分版が公開されたようです、こちらは最初にDVD化された時はこのバージョンで、日本劇場公開されたのは119分版でコンチネンタルバージョンと言われ、現在DVD化されているのはこのバージョンです
「バリー・リンドン」が興行的に失敗したので何が何でもヒットが欲しかったキューブリックは最初のバージョンで公開したようです、失敗の心配がなくなったキューブリックはその説明台詞をバッサリとカットされました
このコンチネンタルバージョンこそがキューブリックの作りたかった物なんでしょうね、おいらは143分の全米公開版を持ってますが、146分版も観たいと思うのがファン心理ですけどね(笑)
1番怖いものを想像してください、モンスター?伝染病?、それともスタンリー・キューブリックの傑作にある悲劇のように、あなたを愛し守るべき家族から殺される恐怖? それが『シャイニング』です。 その答えは狂気と殺人の中にある。
新しく始めるブログのタイトルには最初のレビューはこれでしょ。
更に過激な続・裏237号室の『シャイニング』のレビューはこちらです。
































