こんにちは、獣医師の西田です
5月だというのに夏のような暑さですね。実はペットの熱中症の危険は真夏より今の時期が高いのです
まだ皆さんがエアコン無くても大丈夫と、油断してる時に急に暑くなり、留守番中に熱中症になるという事も・・・
さて今日のブログのテーマは肛門腺です
肛門腺、別名肛門嚢は犬も猫もあります。本来はここからでる分泌物がある程度たまったら排便時の力みと共に排泄され、マーキングの代わりとなります。
トリミング時でも絶対的に絞らなきゃならないものではないです(自分で出し切れていない場合も多いのでそれは触って、必要に応じて絞ってます)
普通は中型犬、大型犬は自分で出し切れていることが多く、肛門腺のトラブルは小型犬や猫に多いイメージです
しかし・・・つい最近実家で飼ってる大型犬のラブラドールレトリバーのヴィータについて私の父からLINEが来まして、
「最近、便を小出しにしていてお尻の横におできがある。何か病気だろうか?」
ヴィータは若いうちに去勢手術してるので考えられる病気は少なかったですが、まずは見てみないと分かりません
実家が遠いので簡単には帰れないので写真を送るよう指示して、父からきた写真がこちら
分かりますでしょうか肛門の右下の部位が赤紫色に変化してるのが
これを見た瞬間ヤバい
すぐに両親に連絡し病院へ連れて行くよう伝えました。
母はのんびりとしてて「かかりつけの先生は日曜お休みだから~」と。
「そんなこと言わず、必ず今日行って!!」
日曜にやってる病院をすぐに調べて診察時間を伝え、受診を強くすすめました。
この病気は・・・・肛門腺炎
そして肛門腺自壊になりかけているのです
さてヴィータ君はどうなったかといいますと・・・
病院に行く途中で患部から出血し、無事に処置してもらい、大きなエリザベスカラーつけての帰宅だったようです
ヴィータが大型犬なのに肛門腺自壊した理由は以下が考えられます
①大型犬で加齢に伴い筋肉量が減ってきて排便の力む力が減った
②元々てんかん発作に対し抗てんかん薬を飲んでいることもあり多食傾向で、両親が毎夜のようにイチゴなど果物あげたり留守番時におやつ与えてるため太ってきている
③甲状腺機能低下症とまではまだ確定していませんが、甲状腺ホルモン値が少し低い為、代謝が落ちて筋肉量低下も考えられる
と、大型犬でもその子の状況によってはなり得る病気です。
このあとしばらくはこまめな通院と投薬、カラー生活で大変だったようですが今は完治しています。
完治後も1~2ヶ月に1回は肛門腺チェックにかかりつけの先生のところへ行ってます
便を小出しにしていたのも痛みからだったので、完治すれば元通り一気にいいサイズの便を出しているそうです
喋れないヴィータ君は父が私に相談してくるまでしばらく痛みと戦っていたのでしょう
肛門腺自壊は破れてしまった時点で状況によっては短時間の麻酔をかけて、組織をデブリードさせてもらい、縫合したほうが治りがいい事も多いです
麻酔をかけなくてもできる処置はありますが、無麻酔での処置は本人も処置時痛いのと、完治までの時間が長くかかることもありますので、その子その子に合わせた治療を提案させて頂きます