小さな小さな規模の中国四字熟語の実践。
少し前に同じ町に住む中国人のお友達チンちゃんのお宅に遊びに行った。
チンちゃんは同い年ぐらいで、明るく大らかな性格の上海人。
何やかんやと近況報告をしていて、
「そういえば、あの中国人の女の子、新聞に載っていたよね。バドミントンの地区大会で優勝したって」
この隅の谷には他にも数名中国人家族がいるのだが、そのうちの一人、ティーンエイジャーの女の子が先日タウン誌の表紙に金メダルを手に載っていた。
「ああ、アイミンでしょ。すごいよねー。でもあそこの家もうすぐ引っ越すのよ。アイミンがスポーツ専門高校に転校するってんで、学校に近い町中に引っ越すんだって」
おおすごい、娘の為に家を上げて環境を変えるなんて。さすが中国人。こういうのを何て言うんだったっけ。
「まさに現代の孟母三遷だよね。中国から隅の谷に来て、隅の谷から都会へ移ってって」
「あら、あなたよく知っているわね、孟母三遷だなんて」
驚くチンちゃん。
「孟母三遷は日本でもけっこう有名だよ。日本の高校では漢詩も習うし」
知ったかぶり顔で告げる私。
受験の時、30年も前、中国四字熟語なんていう本を読まされたからです。漢詩なんてちんぷんかんぷん、李白は大酒のみだったというエピソードしか覚えていないことは黙っている。イヒヒ、チンちゃん、びっくりしてこの日本人意外と物知りなのねと思ってくれたかも。
これはだいぶ前、やはり同じ町に住む中国人のお友達、日本語ペラペラのリンちゃんのお宅にて。
「もう、中国も大気汚染が凄くてさ。北京なんか大変よ。政府が業を煮やして対策を出したんだけどさ。『奇数日は奇数のナンバープレートを持つ車しか走ってはいけない。偶数日は偶数ナンバーの車だけ』ってね」
「なるほど」
「ところが中国人も抜け目がないっていうか、じゃあって車を二台購入。それぞれ奇数ナンバーと偶数ナンバーを付けて、結局毎日運転できるようにする人が続出したのよ」
「ワハハハ、さすが中国人、法の網目をくぐることに長けているね」
「そう、そういうのをさ、『上有政策』(上に政策有れば)って言って・・・」
「あ、それで『下有対策』って続くんだよね」
「そうそう、『下に対策有り』よ」
中国人の奇想天外な対策に大笑い。さすが大陸の人はたくましいわー。上有政策、下有対策は中国人の性格を表す言葉としてよく聞くが、実際に中国の人を相手に使ってみると生き生きして面白い。
まったく、何で私もっと若い頃に言語の面白さに目覚めなかったんだろう。あの頃は中国語に興味なんて全然なかった。
今時間を巻き戻せるなら、大学で中国語を専攻したいという突拍子もない思いが湧いてきた。中国語を学ぶことで日本語をさらに深く知り、欧米系の言葉を学んでその違いがさらに興味深く感じられただろう。
もっと若くて頭が柔らかい時だったらなあと後悔しながら、仕方がない、私はオバサンならではの、おばエピソードを積み上げていくのみ、とわけのわからない小さな決意をしまい込む。