ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

主婦にして家事はおざなり、興味あることだけ、猪突猛進の悪妻愚母のドイツ生活

息子の語学学校の初日の模様を知りたい私。

 

過保護な親みたいと思いながら好奇心が抑えられず電話してしまった。

 

初日はクラス分けがあり、息子のクラスは全員で6人という少人数だそう。私のドイツでのクラスは最大12人だったからかなりインテンシブだ。

 

気になるクラスメートはと言うと、台湾人、マレーシア人、スイス人がいて男女3:3だとか。

 

へーえ、それでみんなは何歳ぐらいなわけ?

 

それがさあ、台湾人ってすっごく年齢不詳で、男の人の方は16歳ぐらいに見えたんだけど、実際は25歳だったんだ。それで女の人と自己紹介になって、『私、何歳ぐらいか当ててみて』って言われたんだ。だから、うーん、40歳ぐらいですかって言ったんだよね。

 

で?

 

そうしたらその人まだ25歳だったんだよ!

 

ひぇ~。

「あんた、それはヤバいよ。25歳の女性に40歳は失礼でしょ!」

 

「うん、何かムッとしていた気がする」

 

「そりゃあそうだろ。こりゃあんた、よっぽどのことをして挽回しないと。僕、極端に視力が悪いんです、とか何とか言っときなさいよ」

 

息子に対する台湾人女性の第一印象は最悪なものになったに違いない。不肖の息子に代わって謝罪したいぐらいである。

 

旦那に報告したところ、

「あいつは何にもわかっちゃいないな。女性にはすべからく、25歳に見えますって言っとかなきゃいけないんだ」

と苦笑。日本での心得と一緒に女性に対する心得も教えておくんだった。滝汗笑い泣き

 

語学学校にはなんと20人ほどドイツ人の若者も在籍していて、みな学校から割り当てられた宿舎に住んでいるという。

息子はまだあまり日本語が喋れないので、休憩時間は英語やドイツ語でその他の生徒とコミュニケーションをとっているとか。

「うんうん、初めはそれもいいと思うけど、せっかく日本に来たんだから意識して日本語を使うようにはした方がいいと思うよ」

 

私の時もそうだった。ドイツの時も中国の時も授業が終わったらついつい皆母国語や英語でしゃべっていた。息子は日本に行く前、日本に行って学校に通えば自然に日本語が上達すると勘違いしていたが、語学留学に来ても積極的にその国の言葉を使わないと驚くほど伸びないのだ。とはいえ、長く住んでいると今度は母国語でしゃべりたくてたまらなくなる、大げさに言うと『魂の母語返り』の時期が訪れるのでなかなか複雑なテーマではあるけれど。

 

息子は、台湾の人って何語でしゃべってるんだったっけ、と聞くほどなぁんにも台湾について知っちゃいなかった。マレーシア人と知り合ったのも初めてだろう。他にもいろんな国籍の生徒がいるに違いない。

ずっとドイツの田舎で大きくなった息子にはぜひ色々な国の人と知り合いになってもらいたい。そして出来れば、自分と違う文化背景を持つ人に関心や理解を持てる人になってほしい。

 

って息子の学校生活なのに、私の方がよっぽど興味津々でどーすんだ。ニヤニヤ

息子は8月の終わりに無事日本へ旅立っていった。京都の実家でこれから半年、日本語と柔道の修行に励むことになっている。

 

着いた初めの2,3日は住民登録、Esimの手続きなどの件で何度か電話でやり取りしたのだが、その時間がびっくりの夜討ち朝駆けである。

 

時差も考えず、旦那には朝の5時、次の日は私になんと午前2時に電話してくるという始末。

あのぉ~、日本とドイツの間には7時間の時差が存在しているんですけど!

のんきな旦那はワハハと大笑いしていたが、2時に起こされた私はさすがにムッとして朦朧とした頭で「あんた...、頼むし電話は朝の8時以降にしてや」と言い渡した。

 

息子は柔道での減量をきっかけにここ数か月健康オタクと化し、朝昼と自分でご飯を作るようになっていた。何かというとカロリーを計算したり、買い物でもパッケージの裏を見ては少しでも糖分や脂質の少ない物を買っていた。ぼく朝はあまり食欲がないから、日本でも自分で朝食は用意する、オーマ(おばあちゃん)は何もしなくていいと言っていた。

 

それが・・・。

「いやー、オーマの用意してくれる朝食おいしくてさー、いっつも平らげちゃうんだ。せっかく作ってくれたものを断るのも悪いし、自分では全然作っていないなー」

美食の国日本ではダイエットも難しそうだな。

息子はすでにお好み焼きやラーメン、好物のクリームパンなど堪能したようで、しょっ中写真が送られてくる。逆に恋しいのはドイツのずっしりした全粒粉のパンや硬めのヨーグルトだそうだ。

 

 

私の高校時代の友人Sちゃんもわざわざ息子に会いに実家にを訪ねてくれた。

「いやー、息子さんすごく礼儀正しかったよ。ニコニコしてフレンドリーで何かお手伝いしましょうかとか言ってくれてさ」

それ、それは別人!こっちじゃ仏頂面で、手伝いはこっちからお願いしないと何にもしないよー。おかしくて笑いだしてしまった私。あまりのギャップにウケるわー。ニコニコってあいつを形容するために使われるとは思わなんだ。

しかし母親も「あの子は毎日お皿洗いや洗濯物干しを手伝ってくれる」他人様の家ではこうも変わるものか。もっと早く放り出せばよかったわ。(笑)

 

私「まあ、日本へ行く前に口を酸っぱくして『ありがとうございます』と『よろしくお願いします』の二つは叩き込んでおいたんだけどね」

Sちゃん「それ、それ。その二つの言葉何度も使っていたよー。ちゃんと実践してたよ」

よかったー。実のところ、あいつは日本の心得を説く私のそばであくびをかみ殺していたのだ。こんなんでは心もとないなと思っていたが、ちゃんと実践していたんだ。ホッと胸をなでおろす私。

 

いよいよ今週からは日本語学校の授業が始まる。いろいろな国から来たクラスメートと交流して是非日本語力もコミュニケーション力も磨いてほしい。何といっても彼は口数が少ない方で、自分から積極的に友達を作りに行くタイプではないのだ。ドイツのような自己主張の強い者が幅を利かすような国ではちょっと心もとないなと思っていて、その点でも私は今回の留学に期待をしている。

とは言ってもすぐ変わるのは難しい。柔道より彼にとってはこっちの方がハードルが高いかも。

 

好奇心を抑えきれない私は、「初めての授業はどうだった?」とメッセージを送ってみた。すると「スーパー!すごくよかったよ!」と意外な(?)答え。明日電話するとのこと。気になるワ~。

高校時代からの友人Sちゃんは音大で声楽を専攻したせいか、ドイツにかなりいいイメージを持ってくれている。

電話で話していて、このあいだ森で散歩した時に―、などと言うと、「いいなぁアクサイちゃんは。あの文豪ゲーテが散歩した森を歩くことができるんでしょ」とため息をつく。

いや、ゲーテはワイマールの都会人、南部のこんなド田舎には絶対来たことないから!とツッコミを入れて二人で笑うのが常になっているのだが、ゲーテはともかくとしてドイツはやはり森の国だと思う。都会に住んでいても少し足を伸ばせばすぐ森にアクセスすることができるし、グリム童話にも赤ずきんやヘンゼルとグレーテルなど森を舞台にしたお話が多い。

 

1年前から住んでいるこの町ではまだそれほど"森開拓"をしていなかったのだが、先日偶然とても素敵な森の小路を見つけた。

 

住宅街のすぐそばにあるので、最初は森へ続く道だとわからなかった。細くて長い道がずっと奥まで続く。

どこまで続くのだろうと好奇心に駆られて緑の中をさらに奥まで進む。

どこまでも真っ直ぐ続く一本道で

途中にはところどころベンチも備えられている。

ドイツらしい几帳面さで、木々がきちんと等間隔で並び、

住宅街にある広い一本道のせいか、いつ来ても犬の散歩をする人や小さい子供を連れた家族連れを見かける。

 

最後はやはり森へ続くカーブで終わる。

朝のまだ暑くない時間散歩すると木々の間から木漏れ日がキラキラして上を見上げると

いや~、平和で静かで心が満たされる。何というぜいたく。

スマホカメラでは到底とらえることができないが、いうなれば"夢のように美しい"という言葉がぴったりする光景である。

 

こんな光景がここだけではなく、国中少し足を伸ばせばすぐ近くにあるというのはやはりドイツの宝ではないか。派手さはないが、ゆったりして落ちつくし、この時期は緑に心も洗われる気分になれる。

 

長く住んで当たり前のようになっているけど、こんな美しい自然の近くに住んでいることをありがたく思わなくては。

 

しかし一番うれしいのはこの美しい風景を愛でる心の余裕が出てきたことかもしれない。

 

メンタルの調子が一番悪かった数年前、何を見ても心が晴れず、ドイツの美しいものを見ても"ああ、私はここに属していない"と勝手に疎外感にさいなまれたり、孤独が強まったりしていた。あの頃に比べたら今は何と落ちついてきたことだろう。(長く暗い冬が来ればまたどうなるかわからないから今のいい時期を思いっきり焼きつけておかなくては)

 

この散歩道の動画をSちゃんにLINEで送信したところ、日本では夜だったのに即電話をくれた。

やっぱり遊びに来てくれないかなあ。こういうきれいなところは独り占めするのがもったいないという気に駆られてしまうのだ。

 

都会に住むお友達のマダムを訪ねた帰り、電車の中央駅で小腹が空いたのでパン屋に寄った。

 

実はこのパン屋さんにはちょっとした思い出があって、通るたびに"彼女"が働いていないか見てしまう。

というのは去年の今ごろだったか、偶然立ち寄ったこのパン屋で、店員のおばさんが私の着ていた服をまじまじと見て涙を流したのだった。理由は彼女がウクライナ人だったから。そしてその日たまたま私が着ていたのがウクライナの民族衣装、可憐な刺繍ワンピースのヴィシヴァンカ(ソロチカともいう)だったから。

 

その時のことはこちらに書いたので、興味のある方は是非お読みください。

 

 

 

 

あの後いろいろ考えた挙句、カードを買って彼女に渡しに行くことにした。

「私は日本人でウクライナのヴィシヴァンカの大ファンです。早く戦争が終わってあなたが懐かしい故郷に帰れる日が来るようお祈りしています」メッセージと共に自分がヴィシヴァンカを着た写真を同封した。

 

そしてカードを渡しに行ったのだが、その時はかなり忙しそうだったので、仕事の邪魔をしないようにカードを手渡してそそくさと話はしないまま場を後にしたのだった。

 

それからしばらく月日が経って、今日見たら彼女がいる!

 

カウンターの彼女と目が合うと一瞬視線を止めたので、ニッと笑いかけると、ああ、というように大きな笑顔が広がった。覚えてくれたのね。そればかりか、わざわざカウンターから出て挨拶に来てくれた。そして大きなハグ。

 

元気にしていた~?あなた今日も素敵な服を着ているわね~。あのカード、あのメッセージ、私、本当に感激して何回も何回も読み返したわ。輝くような笑みでくりかえすのである。

おまけにチーズやら卵やらトマトがのった豪華なプレッツェルをささっと紙袋にくるみ、「これおまけね」なんとプレゼントしてくれた。

 

もうこんな喜んでくれるなんてよかったー。

 

実はこのことについてはちょっと後ろめたさというか居心地の悪い思いもあったのだ。自分は安全な場所にいる身で戦火を逃れてきた彼女の苦しみをどれほどわかるんだろうとか、ちょっとした親切を示すつもりが偽善っぽくないかなとかあれこれ考えた。しかしこういう事は考えてばかりいても仕方がない。ええいままよ、偽善でも何でもいい、自分がしたいからするんだ!と言い聞かせたのだった。

 

しかし彼女がここまで喜んでくれているのなら、取りあえずあれはよかったんだと私にもうれしさが伝染してきた。

 

店を出る時いつの間にか後ろに行列ができていて、皆じろじろとこちらを見ている。このパン屋のおばさんがやたらとサービスしているアジア人は何者なんだ、と問いたげな視線。おばさんは他のお客を待たせているのも気にせず、盛んに私に話し続けていたのだった。

 

ちなみに今日来ていたのも袖にびっしりと黒い刺繍が施されたルーマニア産のブラウスだった。おそらくウクライナに近い産地のものだろう。

 

https://www.etsy.com/de-en/listing/1858608156/romanian-heavy-embroidered-blouse

 

 

私が買ったものによく似ている。(画像は購入したお店のHPからお借りしました)

 

おばさんを泣かせ、おばさんを笑顔にし、この日気づいてくれたのもこの服のおかげかもしれない。やっぱり民族衣装は人を引き寄せる。

 

先日の朝、近くの公園に気功をしに行った。

私は初めて気功をしたのはドイツに来てからで、それも20年ぐらい前、妊娠中ににトライしたきりだったのだが、偶然近所の人が教えてくれて、しかもタダで申し込みも不要というので、じゃあ行こうかなと腰を上げた次第。

 

ドイツ人は無料(タダ)が大好き。タダと聞けばホイホイやってくる。そんなドイツ人気質に染まった私もいいお天気に誘われホイホイ参加することにした。

10時過ぎに公園にたどり着くと、既に始まっていて、奥に先生が立ち、手前に参加者の人達が背を向けてゆったりした動きをくり返している。その数20人余りか。推定年齢65歳以上といった感じで、おそらくみな退職した人達であろう。50歳の私でも若者というか小娘みたいな感じである。

お天気は申し分なく、そびえる大柳の下には涼しい影が伸びている。

このスペースで気功が行われた。

右の方にはこぢんまりしたパビリオンもあって、いかにもヨーロッパの公園といったたたずまいだ。

川沿いに立つフェンスにはブラックベリーの小枝がかかっている。

 

自然の中で20人もの老人+アジア人一名が両手をヒラヒラ動かしている様は、見ようによっては新手の新興宗教の集まりに見えないこともないが、ともかく気持ちいいのである。静かで緑豊かで上をふり仰げば夏の澄んだ青空が広がり、と文句のない美しさだ。さんさんと光を浴びながら芝生の上で気功に励むドイツ人の背中を見ていると、何だか夢のような気分でぼーっとしてきた。

フィンランドはヘルシンキを舞台にした映画「かもめ食堂」に出てきそうな牧歌的で平和そのものの風景である。ここを舞台に新手のヨーロッパスローライフの映画が撮れる!にわか監督気分の私。

 

皆さんカジュアルな格好はしているが、足元はSalomonやアシックスなどの高価なスニーカーを履いている人が多い。きっと経済的に余裕があり、教養もあり、悠々自適の老後を送っている人達だろう。ドイツ人には珍しく無駄な肉付きのない体型の人も多く、おそらく日頃から健康に対する意識が高いのだろう。

 

この公園沿いに立っているお家もメルヘンに出てくるような可愛らしさで、庭先に花を飾ったり、古いバルコニーがちらりと見えたりと絵になることなること。こんな所に住めるなんて人生の宝くじに当たったようなものではないか。

私を誘ってくれた近所の老婦人3人も来ていて、「まあ来たのね。よかったわ。私、今日念のためにあなたの家をピンポーンしようかと思ったのよ」と喜んでくれた。

普段外の世界で出会うドイツ人の若い女性は、ビッチというか、ツンツンしてたりアグレッシブな人も多いのだが、齢をとると丸くなるのか、お年寄りはけっこう優しくて話ができる人が多い印象。この人達も、もしかしたら若い頃は隣に外国人が引っ越してこようが関心なく交わることもなかったかもしれない。今会えてよかったと心の中で思う。

本当に今日はいい日だな。

外の世界では戦争や自然災害や貧困が連日のように報道されているのに、ここではこんなに豊かで静かで平和な世界が広がっている。

最近日本で報道されるドイツは経済低迷とか移民問題など暗いニュースが多いし、じっさい国内は明るいムードでもない。それだけにこの日の気功の後は一時のオアシスに身をゆだねたようなゆったりした気分で帰宅したのだった。