ラティーナのパトリシアがパーティーを主催、となればどうしたって音楽やダンスが入らないわけがなく。
食事が一段落すると、さっそくタブレットのスピーカーからミュージックスタート。ダンス教室で使われたおなじみの曲が流れる。
最初は座って見ていたのだが、ラテンミュージック、それもサルサが始まるとパトリシアが「さ、アクサイ、こっち来てこっち来て」と引っ張られ、腰を上げる。横では既にアニータがフランス人マダムをリードして男役を引き受けている。私もサルサ音楽だとついつい体が動き、また相手をしてくれるのがパトリシアなので、とても楽しく体を動かせられる。やっぱり相手によるよなあ、サルサって。
その次は、アニータがお相手。音楽が鳴り始めたとたん立ち上がり、踊り出していたアニータ。大きな笑顔でリズムが体から流れ出すよう。ああ、ラティーナがラティーナらしさを存分に発揮している瞬間て本当に見とれちゃうわ。
「ねえねえ、コロンビア人ってみんながみんなダンスできるの?」
と聞いたら、「ええ、まあそうね」と言う答えが返ってきた。
「だって子どものころから鍛えられるもの。ダンススクールに通ったことなんてないわよ。親戚の集まりとかで、おばさんに、『さあこっちおいで―』って相手させられ、教えられてみんな自然に踊れるようになるの」何とも羨ましい話だ。
確かにみんなダンス先生になれそうなほど上手なのだが、素人がやりがちな派手なオーバーリアクションがなく、自然に踊りが見についている感じ。
しまいには齢80歳を超えるというパトリシアのお父さんも加わり、目が合った私は中央に引っ張られる。
ご高齢だし、動きは小さいけど、静かに楽しんでいる感じが伝わってくる。
これはなんていうジャンルのダンスなのかしら。右へくるくる、さらにくるくる、ずっとくるくるで、お父さん!目が回りそうですー。でも楽しかった。
「とても楽しかった。あんさんはダンスが上手じゃよ」
優しく褒めてくれるお父さん。これがイケスカとかだったら、「やれば出来るじゃないか」の一言に決まっているわ。
「あー、もう本当に来世はアニータと結婚して毎晩踊りに明け暮れたいー」
と言うとみんなに笑われた。
「きみはラティーナの血が日本人の体に流れている日本人女性だね」
とパトリシアの旦那さんにもお世辞を言われ、嬉しくてイヒヒと笑いをかみ殺す私。
イケスカおっさん達と数か月練習しただけの私が、本場のラティーノ様達の足元にも及ぶはずがないが、お世辞でも何でもほめてもらえるのはうれしいではないか。いい気にさせるのが上手い人達だなあ。そうだよ、世の中、真面目なことばっかり言ってたらちっとも楽しくないじゃない。
帰りの道はマレーシア人マダム、ミナが途中まで送ってくれるというのでありがたく同乗させてもらう。
他にもインドネシア人のスサンティとフィンランド人のパオリーナと一緒で、車の中は多国籍4人というこれまた今日の夜を締めくくるのに相応しい顔ぶれ。
このフィンランド人のパオリーナは、クールビューティーで色が抜けるように白く、金髪で目が緑色に近い。最初はひんやりした感じで近づきにくかったのだが、慣れてくると、途端に笑顔で人懐っこさを見せるようになってきた。ドイツ人に似てドイツ人と違うところ。ドイツでフィンランド人に会ったのは彼女でまだ二人目。この未知の国にも果然興味がわいてきた。
4人に共通するのは、みんなダンスするのは好きだけど、旦那さん達は一向に踊りに興味がないという欲求不満。ドイツ人の旦那さんってホント、踊らないよねーとぶうぶうみんなで言いたい放題。
ともかくこのクラスに出会えたのは本当によかった。
また秋から始まるクラスでにみんなに会えるのが楽しみだ。