アニータも吐き出してやや落ち着いたのか、
「まあ、そんなこと言ったら、あなただって同じじゃない。遠い日本から来て、ドイツで生活して3人の子育てしててさ」
と言ってくれる。まぁ、私の方はアニータの足元にも及ばない悪妻愚母なんですが・・・。
これはもう相性の問題だと思うのだが、アニータと話していると悩み事でさえ、深刻一方向にはならず、あれやこれやと話が飛ぶ。
私がスペイン語を習い始めたことを知ると、たいそう喜んでお国自慢が始まった。
「南米のスペイン語も各国ごとに独自のアクセントや方言があるけど、コロンビアのスペイン語はいいと思うわ。コロンビアのスペイン語は柔らかいのよ。スペインみたいに発音の規則も多くないし。
それにコロンビア人っていつもお礼を言うのよ。スペイン人が何でそんなことで礼を言わなきゃならないんだっていうような場面でもコロンビア人はグラシアスっていうの」
とは言え、そんなアニータも30年以上祖国を離れているので、里帰りすると異邦人のような気がすることもあるという。
二人で話したのは2,30分ぐらいだったか。
体調がよくなくて、旦那に電話して迎えに来てもらうことにしていたのに、彼が来る頃にはすっかり話が弾んで、旦那を待たせる羽目になっちゃった。
抱き合って別れを惜しみ、また出来るだけすぐ会おうと約束した。何だかスッキリした気分。
元気が出た私は、結局迎えに来てくれた旦那に無理を言って、シュロスパークで開かれていたフェスティバルにも足を伸ばす。
そうしたらアニータに加え、ダンスの先生パトリシアも来ていてみんなでうれしい再会。
このフェストはこの町に住む外国人が中心となって企画しているだけあって、中国のコーラスグループ、インドの舞踊、ブラジルのサンバなど各国の出し物が次々披露され、盛んに拍手を浴びている。
おまけに訪れる人もかなり国際色豊かで、ドイツ人に黒人、アジア人、ラテン系、インド系、ウクライナの民族衣装を着た人などありとあらゆる人種が交じり合い雑多な雰囲気。私はこういう色々混ざって雑多な雰囲気が大好きなのである。自分は外国人じゃない、ドイツ人とか日本人とか気にならなくなるこういう雰囲気に浸っているとホッとして自分が生き生きしだすのを感じる。
舞台の下には垂れ幕が貼ってあり、 Wir GEHÖREN ALLE ZU DEUTSCHLAND!(私たちはみんなドイツの一部です)と書いてある。ホント、これこそが長年私が求め続けている境地なのだ。
夜が更けてスペイン語のラテンバンドが演奏を始めるとみんな踊り出して大盛り上がり。私も疲れていたけど、マカレナなど有名な曲を一緒にちょっと踊った。
アニータもパトリシアも彼女の旦那さんもみんな手を回し、腰をくねらせさすがラテン人。ノリが違う。実に自然に楽しそうに踊っている。
いいよねー、ラテンの人って。そりゃいろんな人がいるけど、やっぱり明るくて心が温かくて気取らない人が多い気がする。
ドイツと日本の間で宙ぶらりんになってウツウツしていた心に隙間が出来て風通しが良くなってきた気がする。やっぱり今の私を救ってくれるのはラテン文化かしら。
よかった。今日来て本当によかった。やはり犬も歩けば棒に当たるじゃないが、外出することも大切。
だからと言って翌日からすべてが良くなったわけじゃないけど、でもやっぱり行ってよかった。