今回の日本滞在では、何を買っても値段の割に品質が高く感心しっぱなしだったが、下着類もそう。
私は若い頃は今よりはちょっとこだわりもあり、ブラジャーやパジャマなどの下着類はすべて日本へ里帰りする度に調達していた。
ドイツの下着類は、体型も違うし、品質もイマイチで種類も少ないし、パジャマもかわいい柄などなかったからである。
しかし9年も帰れていない間に、さすが日本から持ってきた下着類も古くなり、近年はすべてこちらの製品で済ませていた。
日本製品の記憶が薄れてくるせいか、まあ、ドイツ産のものでも贅沢を言わなければやっていけるんだし、とすっかり田舎者になっていた。
が、今回帰国の数週間前から、ワコールのHPを眺めていると、うっとりするほどデザインも豊富で、購買欲がムクムクムク。さすが日本で、山ほど種類があり、しかも目的別に合わせていろんなタイプがある。私は中でもあるキャッチフレーズに目を奪われた。
"脇高設計でハミ肉をしっかりキャッチします"
この一文に勝手に大ウケ。
まさにこれ私のこと。なんで私に必要なものをここまでズバリ的確に表現できるのか、感心しちゃう。確かに齢と共に脇の肉が垂れ、キャッチするすべもなく流れ出しそうになっていた。が、日本の誇る下着メーカーならこれをぎゅっと持ち上げて中央に寄せるのも夢でないかもしれない。日本の技術で私のハミ肉もしっかりキャッチしてもらわなくちゃ。私は帰国を待たずして、ネットでブラジャーとショーツのセットを2つ注文した。
帰国していそいそと商品を開けてみると、さすが日本。ドイツではお目にかかれないようなかわいいデザインに心躍る。肝心のつけごこちもキャッチフレーズに恥じず、脇高設計で本当にハミ肉をしっかりキャッチして真ん中に寄せてくれる。何だか急にスタイルが良くなったみたいな錯覚。円安のせいで、これでドイツで買っていたものの約半額なのだから申し訳ない気がしてしまう。私は二度と再びドイツではブラを買わないと決意した。
そしてワコールのセールの時期と重なっていたため、帰国中にさらに2セット、ブラとショーツを追加。今回服はあまり買わなかった代わり、ブラを買いまくった。旦那に「胸は二つしかないのにそんなに買ってどうするんだ」と笑われる始末。
母は母で「どうせやったら、ハミ肉を取ってほしいわ」と言うが、それはもはや脂肪吸引の範囲。下着メーカーだって美容整形医みたいなことを期待されたら困るっつーの。
帰国1日前に、性懲りもなく、地元のスーパーのワコールのお店で最後のブラを吟味する私。
通常売り場には係りの人がいて、いろいろ相談に乗ってくれるのだが、この時はちょうどお客さんらしい人からの電話の応対中だったので、目顔で挨拶して試着室に入らせてもらった。
試着の間も、お客さんらしい人の話は長々と続き、係りの人は焦っているのが伝わってくるが、終わらない。
私は一向に気にせず、試着を終え、あまり気に入らなかったので製品は試着室に残したまま、そこを出て、隣の店でワンピースなど見ていた。
そうすると少しして、その係りの女性がわざわざ追いかけてきて、「どうもすみません。お相手が出来なくて誠に申し訳ありません」と何度も頭を下げる。
ドイツではよっぽど高級な下着のお店でもなければ何のサービスもないので、それに慣れきっていた私はかえって恐縮して「いえ、全然構いません。どうかお気になさらずに」とこっちも頭を下げたが、カルチャーショックであった。