9年ぶりの日本!⑧息子の柔道部体験入学 その一 | ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

ドイツ、悪妻愚母のよもやま話

主婦にして家事はおざなり、興味あることだけ、猪突猛進の悪妻愚母のドイツ生活

 今回の日本行きで、夫や娘達はそれぞれ見たいもの、買いたいもののリクエストがあったが、16歳の息子の要求はただ一つ。

 柔道の本場、日本で稽古に参加してみたい。そして出来れば柔道の聖地、東京の講道館にも行ってみたい。

 

 私も出来るだけ彼の望みを叶えてやりたかったが、2週間の滞在で、毎日何かと予定が入り、東京に行くのはとても無理。残念ながら次回へ持ち越しとなった。

 

 せめて一日入門稽古のほうは叶えてやりたい、とネットで地元の柔道クラブを探したが、小さい町のせいか2つぐらいしかヒットしない。

 しかし、そのうちの一つ、地元の高校の柔道部に電話したところ、幸運にも顧問の先生から一日参加してもいいとの許可をいただいた。

「やったー、あんた明日稽古に参加できることになったよ。本当によかったね!」

興奮して息子に告げる私。驚き喜ぶ息子。

 

 当日は息子と旦那と3人で午後4時少し前に、高校の敷地内にある武道場にお邪魔した。

 戸の前に先生が待ってくれていた。昨日お電話をもらった顧問の先生だ。まだ20代だろう。かなり若い。

 ご挨拶し、今回受け入れてくれたことのお礼を述べる。息子を紹介し、彼も緊張しながら、昨日頑張っておぼえた「ヨロシクオネガイシマス」と頭を下げる。

 旦那は少し驚いていた。

 ドイツのクラブでは、新人が来ても、あ、勝手に入ってきてねみたいな感じで、指導者自らが待っていることなどないのだそう。外国人だから気を使ってくれたというのかもあるかもしれない。

 

 私達も見学していいという事だったので、靴を脱いで上がらせてもらう。

 先生からすでに聞いていたのか、入口の所では女子部員たちが好奇心いっぱいの目でこちらを見ている。

 「こんにちは」と声をかけると「こんにちはー」と気持ちのいい返事が返ってきた。

 旦那に、ここで靴を脱いで、ここから上に上がってと説明していると、女の子達、くすくす笑い出し、

「きゃー、むっちゃぺらぺら~」

と柔道と全く預かりのない所で盛り上がっている。(笑)

「皆さん、英語は?」

と聞くと、

「あ、学校の授業では習っているんですけど、しゃべれないんですー」

 私の時代と全く同じちゅうことやな、つまりは。

 みんなかわいらしい顔立ちで、高校生らしくよく笑うが、ほぼ全員黒帯を締めている。

 

 4時になり、部員が全員が出そろった。男女合わせて13人。驚いたことにほとんどみんな黒帯保持者だ。

 ドイツでは最低でも18歳にならないと黒帯のテストに参加できないが、日本ではなんと中二でほぼ皆が黒帯を取得するのだという。

 

「息子さんは(分かるのは)ドイツ語だけですか」と先生に聞かれ、

「英語も日常会話ならできると思います」

と言うと、先生は遠くにいた坊主頭の背の高い男の子を「おーい、サイトー」と呼び、

「サイト―、お前がこの中では一番英語が出来たよな。よし、お前今日通訳係」

と勝手に任命してしまった。

 言われたサイト―くんは突然のことで戸惑い目を白黒させている。可哀そうに。来てみたら変な外人がいていきなり通訳に指名されるなんて。(笑)困った顔が何とも印象的だった。

 

 そして練習が始まった。

 通常のウォーミングアップに続き、なんと皆が目の前で逆立ちを始めた。そのままスタスタといとも簡単に手で歩いていく。さらに驚いたのは今度はそのまま後ろ向けで歩くのである。これはかなり腹筋が鍛えられるだろう。

 

 そして乱取り。3分間隔で相手を変えながらの真剣勝負が続く。

 休憩中に息を切らしている息子に「どう?」とたずねたところ、「レベルが高い」の一言。白帯の子でさえ、かなり手ごわいらしい。女の子達も、体はドイツ人より小柄だが、レベルはこっちのほうが上だという。みんな練習前のあどけない顔つきと違って真剣そのものである。

 

 それでも京都府下ではさして強豪校でもないというのだから、さすが柔道の本場、日本と言ったところか。(続く)