まったく思いがけないことに、息子が日本へ行くことになった。
どういうことかと言うと、彼はこの7月で高校を卒業するのだが、次の進路を決めるまで1年あり、その期間を利用して日本へ行き、数か月京都の実家に滞在しながら、語学学校と柔道の修行に励むということになった。
数か月前までは日本のにの字もなかったのになぜそんなことになったかと言うと、直近の柔道の試合であっさり負けた時があり、帰り道の車でダンナが「ま、お前ももっと強くなりたいんやったら、ここで練習していてもなかなかレベルは上がらん。それやったらやっぱり日本に行って修行するのがええんとちゃうか」と提案したことに始まる。
その時は生返事していた息子だったが、高校卒業後時間が取れることになり、急に旦那の提案が現実味を帯びてきたというわけである。
そして日本と言えば私というわけで、卒業試験で忙しい彼に代わって、私が語学学校や柔道の道場を探すことになった。
しかしこれが意外と難しい。
というのは、私は当然ながら日本語学校に通ったことがないので、おすすめの日本語学校というのがトンとわからず。完全なる情報不足である。友達も日本人なのでで皆首をかしげている。
それでも多分にオタク気質のある私は京都府下にあるほぼすべての日本語学校を検索しまくった。
学校の評判、規模、学費、ドイツ人率の少ないところ、クラスの最大人数などなど。
調べているうちに懐かしい感覚が蘇って来た。
あ、私もそういえば若い頃語学留学の前こうやって調べまくっていたな。
上の条件のうち、ドイツ人の代わりに日本人率の少ないところに加えて、都市か田舎か、ホストファミリーの評判は、など、その頃はインターネットがあまり発達していなかったので、地球の歩き方から出ている「成功する留学」を買って隅から隅までチェックしまくり。頭の中で学校を絞り、この都市に行ったらこんな留学生活が待っているかな、と頭の中でいろいろ描いている過程が一番楽しかった。
私が行ったのは、アイルランド、イギリス、ドイツ、そして中国だったのだが、初めて自分の母国である日本を調べてみるのもなかなか興味深い。
学校の中にはプロモーションビデオを公開しているところもあり、色々な国の学生がなぜ日本なのか、日本の何に引かれたのかと様々に語っている。
当然若い子が多いのだが、目をキラキラさせながら、「アニメが好きで(これはかなり多かった)」とか日本文化に興味があって、など日本への思い入れ、憧れや将来の夢を語っている。私が若い頃頭に思い描いた憧れやワクワク感と全く同じである。
この学校で世界中の友達が出来た、人生で一番楽しい思い出を作ることが出来たと語る学生を見ていると、本当によかったね、と言ってあげたくなる。そしてそれが私の母国であるのがうれしい。
ドイツでも日本が好きで日本語を習う人も増えてはいるが、そうは言ってもやはり全体的には少数派なわけで、ジグソーパズルの端のピースのようなものである。
それがこのビデオに出てくる外国人たち、全員が日本が好きでお金を払ってまで日本に来て勉強しているのである。ドイツで片すみ外国人をしている身としてはなんだか胸がジーンとしてくる。
私も日本にいたらひょっとしてもっと人の役に立てるのではないか、などという思いがふと湧いてくるのはこんな時である。
そういうわけで、どう見ても息子本人より自分の方が熱が入っている語学学校探しなのであった。
ようやく語学学校を決めて申し込み書を提出し、次は息子の有効期限の切れたパスポートの新規作成。電車で往復数時間かけてひょこひょこ南の大都市ミュンヘンへ。
領事館の職員の方は大変丁寧に対応してくださり無事に申請も終わったのだが、最後に衝撃の事実が発覚。
「あの、実はですね、おそらく7月からパスポートの作成にかかる費用が半額になるんです」
私「半額ぅ?!」
厳かな領事館に響き渡るすっとんきょうな私の声。いけない、つい興奮しちゃったわ。だって今が98ユーロ(約1万8千円)だから半額は大きいぞよ。
「ええ、ただそうなると皆さん7月まで待たれるので、その分作成に時間がかかりますし、どうなさいますか」
むむむ、息子が日本へ行くのは8月の終わりでギリギリになる可能性が大。
「うう、今手続きを進めてください」涙を呑んで、半額を破棄。
本当にぐやじい~。と小さなことにプリプリしながら帰宅したのであった。
















































