タイのラーマ九世(プーミポン・アドゥンヤデート国王)は2006年、在位60周年を迎えた。表敬は3度。
「とくに3回目の会見は忘れられません」(池田博正)。
1994年(平成6年)2月8日、バンコクのチトラダ宮殿。階段が一段落し、会長が過去2回の場合と同様、国王の予定を気にして辞去しようとした。すると寡黙で知られる国王が、教育論を滔々と語り始めた。
「子供は吸収するエネルギーをもっています。そのエネルギーの方向づけをしてあげるのが、親、そして教育者の責任であると思います」
王女のシリントーンが計算に興味をなくした時期があった。そこで国王は実用的な問題を出して、関心をもたせようとしたという。
「男の人がお金を借りに来た。何度も借りにきて、積み重なった。足し算していくらになるか」
「借りすぎて返せないほどの金額になり、遊びのために借金するようになった。予算をなくてはならない。どうすればよいか」
生活に即した原理、考え方を身につける契機にしてもらいたかった──そう語るラーマ九世の表情は、すっかり愛娘を思う父親のそれになっていた。
タイ国王は、国民の尊崇を一身に集める。プライベートな側面に自ら言及することは、きわめて例外に属する。池田会長と同年(国王が1927年12月、会長が1928年1月の生まれ)という親しみもあったか・・・・。
会長は応じた。
「国王は、偉大な教育者です。具体的で分かりやすい。しかも重要なポイントをついておられる。牧口初代会長、戸田第二代会長も教育者でしたが、今のお話は、恩師から学んだことに通じます」
会見は予定時間をはるかにオーバーして、1時間半に及んだ。
英国のタプロー・コートは、ラーマ九世の祖父君であるラーマ五世チュラロンコンが滞在したことがある。そうした縁から91年にはタプロー・コートでラーマ九世の写真展が開催された。
さらにはラーマ九世作曲の特別演奏会(93年、創価大学記念講堂)、国王即位50周年特別展(96年、東京富士美術館)が行われるなど、交流が結ばれてきた。
「池田会長とタイ国王の交友を通じて、両国の文化交流が重層的に結ばれ、広がってきた。これは紛れもない事実だ」(アジア外交の評論家)