フィリピンのニノイ・アキノ空港。同国外相のシアゾンが、貴賓室に駆け込んできた。授与式から二日後、池田会長一行が搭乗便を待っている。
シアゾンは駐日大使の経験があり、日本語も堪能である。
「スペイン国王の飛行機が遅れており、国王一行も貴賓室に入られます」
外相が国王を先導してきた。
「おお、あの時の!」
フアン・カルロスのほうから気づき、相好を崩した。ワイシャツ姿の、くつろいだ姿だった。
「今、こんな格好なので、すぐ背広を着てきます」
「いいえ、どうぞ、そのままで。気さくで英邁なスペイン国王のご訪問を、フィリピンの各界の人々は、本当に喜んでおられました」
国王は日本語で答えた。
「ドウモ、アリガトウ」
一同、哄笑の一幕となった。
キアンパオの姿が見えない。空港に向かう途中で交通渋滞に巻き込まれていた。
「何とかならないのか!」
ドライバーも困惑顔である。時間は刻々と過ぎていく。とうとうフライト時刻を過ぎてしまった。
「なんてことだ」。歯ぎしりをした。
皮肉にも渋滞原因は、スペイン国王警備のための、交通規制によるものだった。だが、空港で国王と会長が鉢合わせとなり、再会できたことを知る。
「そうか!それはよかった」
後悔などすっかり忘れ、会長が飛び立った空を仰いだ。