下北沢スズナリに、桂憲一さん大井靖彦さんが出ている芝居を観にきました。
渡辺源四郎商店presentsうさぎ庵vol.21
「雲を掴む」
エドワード8世(桂さん)、ヒトラーの幻影(大井さん)などが入り乱れる歴史劇。
植本純米さんのアフタートークつきの初日でした。
いや、とんでもなく面白いぞ。12日までやってるから、みんな観たほうがいい。
桂さんが演じるのは、「王冠を賭けた(捨てた)恋」で知られるエドワード8世、映画「英国王のスピーチ」の主人公の兄、未亡人と結婚したくて退位してしまった、あの王様です。
その「未亡人」ウォリス(シンプソン夫人)が、生涯の終わりに過去の人生のシーンを回想していく、というお話。
退位した王(通称ディビッド)は、ウォリスと結婚して「ウィンザー公爵夫妻」となるけど、実はそこからの人生が長くて。国策に反してドイツとの融和外交を勝手に推進し、アドルフ・ヒトラーとも親しく会談したりしているんですね。結果、英国は第二次大戦の惨禍に英国を巻きこまれ、二人は二重の意味で祖国の裏切者みたいになる。
大井さんの演じるアドルフは、認知症のウォリスの脳内に現れ、時空を超えた戦争論を展開する。自分の迫害し虐殺したユダヤ人たちが、いまやパレスチナ人を虐殺する「自分の後裔者」になっているというのがつくづく面白い、と笑うシーンは、圧巻。
ウォリスは1986年まで生きていたんだけど、チャールズ皇太子(いまの国王)が若い頃にカミラと一緒に遊びに来たときを回想している途中「あなた、ダイアナね?」と思わず口走ったり、時空が縦横にクロスして混乱している脚本が、名人芸と言っていい出来です。
これ、よく出来てるわ。