元寇をきっかけに、鎌倉幕府は従来勢力範囲外だった西国の武士たちを組織化することに成功しました。かえって幕府の威勢は高まったんです。
幕府権力は元寇のお陰で最盛期になった、と言えます。
ところが、です。
社会には、貨幣経済が浸透します。
いまも昔も戦争ってのは巨大な景気刺激イベントであって、元寇のおかげで全国的な流通経済が盛んになってきます。
そうなると当然、物価は上がります。
領地が減ったわけでもないのに武士の生活はどんどん苦しくなります。
徳政令なんていうその場しのぎの対策しか打てない。なんだ、頼りがいのない、と信頼を次第に失っていきます。
彼らは「土地を所有している」ことを存在の根拠にはしていませんから、幕府と「御恩と奉公」の関係を結ぶ必要がない。だから幕府の支配下に入らない。
正規の武士である御家人からすれば不気味な、イレギュラーな存在であり、だから「悪党」と呼ばれました。
そんなヤツラが幕府に反乱を起こしても、最初はすぐ鎮圧できると思ったら、意外に強い。
なんでかった当然です、カネ持ってるんですから。
そういう世の中になってきてるんです。
幕府はカネもってません。カネのない御家人に戦え戦えといえるだけの払いができません。
いったん流れができれば、あとは早いでし。やがて「天皇を中心に、新しい仕組みを作ろう!」という呼びかけに、どんどん武士たちが流れていきます。
こうして幕府は滅ぶわけです。
こういう話をすると、すぐ「おまえはマル経の輩か」みたいな(古いな)、歴史を正義と悪の戦いとか、英雄の活躍とかで語りたがる人達から反発を食うんですよね。しょうがないです、みんなそういう「物語」が好きで歴史マニアになるものですから。経済が幕府を滅ぼす、みたいな話は、ウケません。ところで、室町幕府って、やたら金儲けに熱心、って印象がありますよね。そのわりに土地問題、農業政策に身が入っていない。羹に懲りて膾を吹く、っていうんでしょうかね。