「ビニールハウス」(韓国映画)の感想を改めて。簡単に笑えない「半地下よりも悲惨な家族」がキツいよ | えいいちのはなしANNEX

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「ビニールハウス」 の感想を、改めて。

監督さんと主演女優さんがアフタートークに登場する先行上映会で観ました。

女優さんのファンが集まっていて満杯でしたし、監督が物凄く若い女性なのも驚きました。

トークからも、すごく真面目に作っているのが分かって、映画自体にもたいへん好意的な印象を受けました。

いい映画だった、ということは大前提として。

監督が「サスペンス映画が大好き」と仰るように、これは良く出来たサスペンスに間違いないですが。

認知症の親、老々介護、下流の悲哀、といったキツめの道具立てがどうしても前面に出過ぎて、娯楽として楽しむ、というモードになかなかなれない、というキライがあった、ように思います。

主人公が、認知症の介護老女を誤って死なせてしまい、同じく認知症の母親を身代わりに連れてくる、老いた夫は失明しているからすり替えに気づかないが、失った視覚の代わりに他の感覚が研ぎ澄まされていて・・・って筋立ては、結構「笑えるドタバタ喜劇」に仕立てられそうに思うのですが。

「半地下はまだマシ」というキャッチは、監督が付けたのかどうか知りませんが、「半地下の家族」を意識しているのは確かでしょう。

あの映画が売れたのは、やはり終盤間際まで、笑える喜劇として作っていたことじゃあないか、と。

小才が効く家族が総出で、金持ち一家を騙そうとするコンゲームには、なかなか愉快なものがありました。洪水で便器が流れるなんてシーンは余りに悲惨すぎて笑えてしまう、というところもあって。小ズルイやつらには、ある程度のしっぺ返しは自業自得、という余裕があった。

「ビニールハウス」の筋立ては、主人公に「ズルくやろう」という気持ちが微塵もないぶん、悲惨が悲惨を呼ぶ展開が、笑う隙をくれない、笑ってはいられない、って感じがあって。

最初から最後まで、緊張感を強いられるところが、ちょっとキツイかも、というところがあったな、と。

勿論、そこがいい、ってものも確かですが。