安倍晴明には、あっちのほうの能力はあるのか、このドラマでは? | えいいちのはなしANNEX

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このブログの見方。写真と文章が全然関係ないページと、ものすごく関係あるページとがあります。娘の活動状況を見たいかたは写真だけ見ていただければ充分ですが、ついでに父の薀蓄ぽい文章を読んでくれれば嬉しいです。

弘徽殿の女御(井上咲楽さん)が病気で臥せったのは、噂女房たちによれば「花山天皇の寵愛が深すぎる」から、ってことで。つまり単なる過労とかではなく、妊娠した、っていうことですね。しかしこの妊娠、女御の体力的には、非常に厳しそうです。
で、このシーンのずっとあとに、安倍晴明が兼家たち公卿連合に「詰められる」シーンがあります。帝の子を呪詛することはできません、と抵抗しつつも、結局押し切られて、スゴスゴと帰った、ということになってますが。
安倍晴明は、帰って女御を流産させる呪法を行うんでしょうか?
さて、そこで疑問というか、このドラマのリアリティラインはどのあたりなんでしょう? 
晴明の呪術って、ホントに効くの?
つまり、この大河はオカルトあり、なのか? っていうことで、私の今の興味はいま、そこです。大石静さんは、どう出てくるか? です。
NHK大河は歴史に忠実なはずだからオカルトはなしに決まってる? いや、そうは言えないでしょ。「平清盛」では崇徳上皇(井浦新さん)が怨念で嵐を起こしてたし、「鎌倉殿の13人」では頼朝が後白河法皇の生霊に何度も脅されてました。
「一部、オカルトあり」の大河は、あるんですよ。
夢枕獏先生の小説「陰陽師」や、それが原作のドラマや映画では、安倍晴明(せいめい)は当然のように、スーパーな術を使います。陰陽師ってのはそういうもんだ、と我々は何となく信じています。
では、「光る君へ」に出てくる安倍晴明(はるあきら)は、どうなのか? 実際のところ、呪術を使える超能力者なのか?
兼家も、公卿たちも、当然にそう信じています。安倍晴明に命令すれば必ず帝の子を流産させられると、信じています、だって平安貴族ですから。
しかし、ユースケ・サンタマリアさんは、もとい、この晴明はどうでしょう? 案外、心の中で舌を出している可能性もあるかも知れません。いっぺん断ったのは、そのほうがもっともらしいから?
この世に魔法なんかない、ってことを、この男は承知のうえで、褒美と出世のために「演出」しているだけ、ってことは、ないだろうか?
だって、この晴明、いまんとこ、なんにもしてませんからね。能力らしきものを、ひとつも見せてない。
つまり、そういうことなんですよ。
弘徽殿の女御は、たぶん健康に子供は産めません。晴明が祈ろうと、祈るまいと。だったら「かしこまりました」って言っておけばいい。で、ことが上手く進めば、自分が祈ったからだ、と言って威張ればいいんですから。
 
第五回の冒頭で、植本純米さん演じる坊主が出てくるシーンがありました、最初に(まひろの乳母の)イトさんに「姫のお母さまですか?」と聞いて「奥様はン年前に亡くなりました」と答えた、そこから「母の生霊が取り次いでいる、お祓いしないと死ぬぞ、カーツ!」とか言って褒美をせしめる、という、笑えるシーンがありましたが。
これは「はい、このドラマはオカルトなしですよ!」っていう宣言なんですよ、たぶん。この坊主に法力なんかないのと同じように、晴明も呪術なんか持ってないんです。
という推論もアリだな、と思う一方で。いやいや、どっかでこの晴明、とんでもない能力を発動する、ってことも、あるかも知れない、という思い(願望)もあります。
視聴者が「なんだ、この晴明、結局ただのインチキ占い師か」と思わされて、油断してるスキに、どかーん、という演出があるかも知れない。
いや、陰陽師ファンとしてはやっぱ、あって欲しいな、という気もしてます。
鍵は、いつも晴明についている、あの謎めいた従者です。須麻流、という。あの役を演じているDAIKIさんという方、凄いダンサーらしい、ですよ。

付記。祈祷や調伏のシーンがあるだろうことは、当然のことと思います。その結果、誰かが病気になったり治ったりしたとして、それが祈祷や調伏のおかげだと登場人物たちが信じたり言ったりするのも、当然あるでしょう。それは、平安時代の歴史劇ですから。

私が「オカルトありか、否か?」というのは、たとえば「鬼:や「魔物」が映像として出てきて、安倍晴明が呪術をかけると「気」がビジュアルに見えて、それで魔物が退散するとか、そういう、要するに「特撮」とか「特殊効果」がこのドラマではあるかどうか、ということです。

「陰陽師」の映画化やドラマ化した作品では、必ず、そういうシーンが見せ場になってました。中谷美紀が紫式部を演じた「源氏物語 千年の謎」という映画では、東山紀之演じる道長を、政争に敗れた伊周の怨霊が襲ってきて、窪塚洋介演じる安倍晴明が呪力で撃退する、というシーンが出て来て「これアリか!」と思ったものです。

本文にも書きましたが、「そんなの大河でやるはずない」とは言い切れません、過去に例が皆無ではないからです。そして私は「あったらあったで面白い」と思っています。てゆうか、やってくんないかなと期待すらしてます。明らかに史実にありえない非科学的な描写をNHK大河がやるとは嘆かわしいとか、そういうことを言うつもりは、一切ありません。それでドラマが面白くなるなら。