「光る君へ」は、京都弁でドラマをやってくれないかなあ、という声がありますが。 | えいいちのはなしANNEX

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このブログの見方。写真と文章が全然関係ないページと、ものすごく関係あるページとがあります。娘の活動状況を見たいかたは写真だけ見ていただければ充分ですが、ついでに父の薀蓄ぽい文章を読んでくれれば嬉しいです。

NHKに、タイムスクープハンターって番組がありました。未来人・要潤がいろんな時代で「取材」するんだけど。どの時代に行っても、現地人はみんな現代標準語で喋ってました、
彼の所属する「タイムスクープ社」は、どの時代に行っても怪しまれすに好意的に取材を受けて貰える「特殊な交渉術」とやらを駆使できる、未来の先端企業なのだから、たぶん瞬間自動翻訳機くらいは楽に装備しているのだろうな、と思って観ていたら。
奈良時代に跳んだ回で、現地人が古代語(はひふへほ、が、パピプペポになるみたいな)で喋りだして、字幕が出たんで、あれー?とびっくりしまたもんです。多分、この時代は自動翻訳機の機能の有効範囲外だったってことなんだろうな。

次の大河ドラマ「光る君へ」は京都朝廷の宮廷劇なので、もしかして京都弁で芝居をしてくれたりしないだろうか? と期待する向きもありました。
「だって他の大河ドラマでは、西郷隆盛は薩摩弁を、坂本龍馬は土佐弁を喋ってるじゃない、だったら紫式部だって、京都弁を喋るべきでしょ?」
うーん、どうでしょう。

昔の大河ドラマでは、坂本龍馬も西郷隆盛も、みんな標準語を喋っていたんですよ。…昔ってどのくらいかなあ? たぶん20~30年前くらいまでは、そうだった。「NHKの作る国民ドラマで、主役が方言喋るなんてあり得ない!」って感じでした。
幕末もので土佐弁や薩摩弁が普通に飛び交うようになったのは、わりと最近のことなんです。
しかしそれも幕末までで、戦国時代モノの大河では、たとえば織田信長が尾張弁を喋っているのは今んとこみたことがありません。


「どうする家康」では、信長も家康も標準語、ムロツヨシのクセが強い秀吉だけが「尾張弁ふう」に喋っていました。これ、よく考えたら理屈に合わないでしょ。
要するに、歴史的に正しい云々は関係ないんです。
全国の視聴者が普通にドラマ観てて楽に理解できる言葉で喋るのが大原則、その上で「風味付け」で、方言を喋ったほうが、感じが出るというキャラのみが、多分かなりデオドラントされた、薩摩弁ふう、土佐弁ふう、の人工方言を喋っている、ってだけです。

平安時代モノだと、大昔の「風と雲と虹と」(加藤剛の平将門)は、坂東武者も京都貴族も全員が現代標準語を喋っていましたが、それを誰も疑問には思っていませんでした。
松山ケンイチの「平清盛」では、瀬戸内の海賊・兎丸(加藤浩次)だけが関西弁を喋っていて、物凄い物議を醸しました。これって考証的には全然、正しくも何ともないんだけど、面白いからいいじゃん、というだけなんです。
いままで源氏物語や紫式部や、または安倍晴明、陰陽師の映画やドラマは結構な数を見ましたが。京都弁でやってるのを観たことは一度もないです。


もし「光る君へ」が主人公以下全員が京都弁を喋ったら、これは革命的な事件と言っていいでしょうが。
予告編ももう出てますけど、どうやら、それはないみたい、ですね。

ハリウッド映画では、クレオパトラもグラディアイターもジャンヌダルクもナポレオンも、みんな現代英語で喋るんだ。シェイクスピアだって、ハムレットもロミオとジュリエットも英語を喋るしね。

要は、その人物が何国人とか何時代人とかは関係ない、そのドラマを観るであろう主な観客が分かる言語で喋るのがアタリマエなんだ。アメリカ人が作る映画はみんな英語を喋る。現代日本人が作るドラマでは、現代標準語を喋るんだ。そういうもん。