「みんなで戦争し続ける夢を観よう」と言ってしまった豊臣秀頼、まるで「天下びと人形」の可哀相な人生 | えいいちのはなしANNEX

えいいちのはなしANNEX

このブログの見方。写真と文章が全然関係ないページと、ものすごく関係あるページとがあります。娘の活動状況を見たいかたは写真だけ見ていただければ充分ですが、ついでに父の薀蓄ぽい文章を読んでくれれば嬉しいです。

「亡き太閤殿下の夢は、唐にも攻め入り、海の果てまでも手に入れることであった。余は、その夢を受け継ぐ!共に夢を観ようぞ!」

ああ、秀頼様、言っちゃいましたね。

つまり、自分が天下を取り戻したら、もういっぺんアジア侵略戦争をするぞ、と公約しちゃったわけです。

豊臣家の跡取りとしては、これでいい、ご立派でございます、ということになるのかも知れません。

しかし、客観的にいえば、この時点で(このドラマの)秀頼は、アウトでしょう。

私、従来より、豊臣秀吉の政策というのは、無限の領土拡大なしでば成り立たない、つまり海外侵略なしには維持できない歪んだ政権だった、と申し上げてきました。

茶々(淀殿)は相変わらず、天下は豊臣の私有財産だ、と繰り返すのみで、政権を取ったらどんな日本を作りたいかというビジョンを一言も語りません。

しかし、ついに秀頼様が、自分の言葉で宣言してしまいました、

秀吉の遺志を継いで、皆で夢を見る、つまり、もういっぺん「戦争で勝てば勝つほど出世する」というバブルな世の中を、いつまでもいつまでも継続することが「夢」だ、と。

「戦なき世」を夢見る(このドラマの)家康を、真っ向から否定したわけです。

豊臣家が天下を取り返すことは、日本のためにも、世界のためにもならない。この事実が満天下に、つまり我々視聴者の目に、晒されてしまいました。

古沢さんが「うっかり」こんな脚本を書くわけがありませんから、つまり、この豊臣家は、倫理的にも、滅びるしかない、ってことです。

しかしほんと、気の毒な若者です、(このドラマの)豊臣秀頼。生まれたときから母親にこのように教育され仕込まれていれば、どんなに資質が聡明でも、こんな発想、こんな発言しかできなくなるんです。

今年の秀頼は、最初から「うつろ」です。表情がない、まるで人形のように。
何の人形って、つまり茶々の、です。
母親の怨念の容れ物でしかない、そんなふうに育てられてしまった、どうしょうもなく「豊臣秀頼としてしか生きられない」若者、実に、気の毒です。
・・・気の毒なのは分かってるんですけど、それが「天下人になる」と言ってしまった人間である以上、その発言には責任を取ってもらわなきゃならないんです。

今年の大河ほど、「いまの現実の世界情勢」と、あからさまにリンクしているドラマはないでしょう。どの回をとっても、いま世界で現実に(しかもドラマの進行と並行して)起こっている、あの戦争、この事変との相関性を考えずに見ることはできない。

とんでもない茨の道を歩んでるなあ、古沢さんは。

大坂城に大砲を撃ちこむ、城内に「心ならずも」留まっている(捕らわれている)非戦闘員(女性たち)が傷つき、犠牲になっていく。

「やめろ、こんなのは戦(いくさ)じゃない!」という秀忠に、「これが戦だ、人間の最も愚かで醜い行為だ」と、涙を流しながら言う家康。

これはまさに、あの国のこの攻撃だ、という話に、どうしても現実の国際ニュースに例えて語りたくなりますけど。

もはやオアソビ感覚でそういう語りをすることは、どうも私、いま、できない気分です。

今年のNHK、すごいな。