君の名は。が分からなかった人向け、ネタバレ的な解説、 | えいいちのはなしANNEX

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「君の名は。」のストーリーが理解できない、という人がいました。何がどうなって、あの彼女はたすかったのか?
わからない、という人がいるのも、
もっともだと思いますよ。だってあの映画、理論が破綻してるんだもの。
よく考えれば辻褄の合わない筋を、よく考える暇を与えず胸キュン演出で押しきってしまおうという、まあ壮大な法螺ばなしです。
以下、ネタバレしないと話ができないので、この物語の「根幹のトリック」を書きます、いいですよね。
東京の瀧くんと、飛騨の三葉の意識が入れ替わった。我々は最初、単純に地理的に離れた2人が入れ替わったのだと思ったら、実はもう一捻りあって(ここが、この物語のミソ)、瀧くんが入れ替わっていたのは、三年前の三葉だった。
つまりこの話は「タイムスリップもの」の変形だったんです。
瀧くんは、三年前の三葉の意識と入れ替わることで、事実上、三年前にタイムスリップできる、岡目八目の未来人が、過去を改変する許可を、神様から貰ったわけです。
 
通常、タイムリープものという分野には「タイムパラドクス」の問題が常に付きまとっていて、これをどうクリアするか(あるいは、クリアできないか)が、焦点になります。
ほんのちょっとでも過去を変えれば未来が大きく変わってしまい、そうなると自分自身が生まれて来なかったことになる。
つまりタイムトラベルは論理的にあり得ないんです。
そこで過去のSF作家たちは、四苦八苦して屁理屈を捏ね、なんとかタイムトラベルありの世界を創造しようと頑張ってきた、わけですよ。
ところが「君の名は。」では、まるっといえば「これはSFではなくファンタジーです」ってことで観客を丸め込んでしまった。
(架空の)彗星、という遠目に見ればロマンチックな事象を、原因に設定したこと(これが東日本大震災とか津波とか原発事故とか、あるいは太平洋戦争とかの、歴史上実在の事件だったら、こんなお気楽な話はできない)。
三葉が「神社の娘」であり、どうやらこの家系の女性には「神から授かった特殊能力」があるらしい、っていう設定になってる(神様が出てきちゃったら、もう理屈はどうでもよくなる)。
「男女入れ替わり」という、ファンタジーラブコメの鉄板設定を最初に持ってくることで、はいはいまたそれね、と観客を油断させた。おかげで三年ズレの種明かしで「そうかー!」と感動して、みんなそこで思考停止してしまった(みんな屁理屈よりラブが見たいんだよ)。
ってところでしょうか。
通常であれば、たとえタイムリープが出来ても、事故で死んだあいつを(あの娘を)助けようとか(江ノ島プリズム)、本能寺から信長を助けだそうとか(本能寺ホテル)、そういうのはダメ、歴史を変えちゃいけない、という壁が立ちはだかるんですが。
「君の名は。」では、どうやらそれがアウトではないんですよ、特別に。
 
瀧くんは最初、同じときに三葉という少女が飛騨にいるのだと思っていたのに、その村は隕石落下で全滅していて、三葉も死んでいることを知ってしまった。
これは本来は変更不可能な、確定した歴史のはずだ。でも、瀧くんは「いやいやいや!」となる。神様は三葉と入れ替われるというイレギュラーな技を使って、俺に何かの使命を課している、つまり、時の神様が「歴史を変えろ」と瀧に命じているんだから、タイムパラドクスのほうは神様のほうで何とかしてくれる、ってことです。
これがSFならば反則、一発退場なんですが。神様が出てきた時点で、SFではなくファンタジーです、ルールが違うので細かい理屈は考えなくてオッケーです、ということになるんです。ふほへ6へひ666は66へへほひほひはひはふふはははひはふ