「少女革命ウテナ」については、知らなければ仕方ないです。
そういのがあるんだ、と思ってくれればいいです。
ただ、年配のアニメファンのひとに「ガートルードは、実は姫宮アンシーだったんだよ」とコソッと囁けば、必ず食いついてくるはずです。絶対です。
「演劇マニア」は同時に「宝塚好き」かつ「アニメファン」である確率が極めて高いですから。喰い付いてきたら、「ガートルードは最後の王女で、恋することを禁じられた、決闘の戦利品だったんだよ」と言ってあげてください。それでおよそ諒解されて、もしかしたらものすごい感動されるはずです(どうだろう)。
劇の前半、ハムレット王子の台詞通りに表層的に見れば、ガートルードは「不倫相手と共謀して、かつて愛していたはずの夫を殺害し、あまつさえその不倫相手と堂々と再婚してしまった、厚顔無恥な毒婦」ということになります。
しかし、物語が進行するにつれ、観客は「おかしいぞ」と数々の謎、矛盾に直面し、それを合理的に解決できる筋はないかと諸事実を再構成していけば。
突然、「ガートルードはかつて引き裂かれた恋を三十年かけて取り戻し、なおかつ愛する一人息子をようやく日のあたるところに引き戻すことに成功したのだ」という、180度違う世界が目の前に現れるのです。
ところが、当の息子ハムレットがそれを全く理解せず、彼女がようやく取り戻した幸福を全力でブチ壊そうとする、これこそが本当の悲劇、なのです。
つづく。