NHK「新・三銃士」が終わってしまいました。もんのすごく悲しいです。が。土壇場で「ダルタニアンの出生の秘密」が飛び出したのは、さすがの私もびっくりしました(原作読んでないからな)。
そういえばディカプリオ主演の映画「仮面の男」は実は三銃士の続編だったけど、これも主人公に出生の秘密があったな。しかも今度はダルタニアンがその秘密を「しでかす側」だったっけ。実は「そういうテーマ」で繋がってたんだね、デュマの大河ロマンは。
「物語」の主人公には、出生の秘密はつきものなのです。お約束といってもいい。「源氏物語」だって「平家物語」だってそうでしょ。「ハムレット」がそうでないほうが、おかしい。
ガートルードは、ハムレット王子を産んで以来、先王とのあいだに他に一人の子供も作っていません。何故なんでしょうか? 理由はおおよそ推察されます。
クローディアスは、ガートルードと結婚して王位を手に入れる(この時点で少なくともアラフィフです)まで、結婚していなかったのでしょうか? 子供はいなかったのでしょうか?
いないんです。いればその子を跡継ぎにしようとするはずなのに、そんな素振りもないからです。クローディアスは、この歳まで独身だった。理由は言わずとも分かります。
とにかく。結果的にハムレットは、誰にとっても「かけがえのない一人息子」だということです。そして「デンマーク」という国家にとっても、です。「トゥー・ビー、オア、ナット・トゥー・ビー」、生きるべきか死ぬべきか、って、何を甘ったれたことを言ってるんですか、三十にもなって。彼はほんとうは、何が何でも生き残らなけれればいけなかった人間だったはずです。父のため、母のため、そして国のため、大勢の国民のために。
ハムレットは、父王の死によって国外追放が解かれ、新王によって王位継承者に指名されます。こんな幸福はない、と普通は思わなくちゃ嘘です。しかし、そうは思えなかったのが彼の悲劇です。「父の亡霊」の教唆もあったにしろ、根本的は彼の性格です。コーディーリアと同じ種類の潔癖症ともいうべき正義感が、自分自身とともに国を滅ぼします。
国がひとつ、滅んだんですよ。ハムレット王子の「正義」のために。
「ハムレット」は決して勧善懲悪の物語ではありません。極悪人は誰一人出てきません(敢えていえば父王の亡霊だけ)。むしろ、「ロミオとジュリエット」と同様、、ひとつ違えば全員が幸せになれたはずの世界が、誤解と無知と誤った正義感と、そして運命の悪戯で捻じ曲げられ、全員が悲劇的な最期を遂げる、という、恐ろしくも悲しい物語なのです。はい、そうなんですよ。信じようと信じまいと、それはあなた次第です、けどね。