英語のyes/noという言葉が「はい/いいえ」を意味するということは日本人なら、子供だって「知って」います。しかし、本当に両者は同じ意味なのでしょうか?次の会話文を見てください。
I know you like him. 「彼のことが好きなの、知ってるわよ。」
No, I don't. 「いいえ、そんなことないわよ。」
Yes, you do. You like him. 「いいえ、そうよ。好きよ。」
No! 「いいえ、そんなことないわよ!」
Yes! 「いいえ、そうよ!」
上記の会話文ではnoだけでなく、yesも「いいえ」という日本語になっています。このyesを「はい」と訳すと変ですよね。もうひとつこんな会話を見てみましょう。
Aren't you hungry? 「お腹へってないの?」
No, I'm not. 「はい。へってませんよ。」
Aren't you hungry? 「お腹へってないの?」
Yes, I am. 「いや、へってますよ。」
上記のnoを日本語で「いいえ」と訳すと「お腹へってないの?」「いえ、へってませんよ。」というふうに何かおかしな会話になりまし、yesの場合も「はい」と訳しては何か不自然です。これでわかるように、英語のyesを「いいえ」、noを「はい」と訳さないと意味がおかしくなるときがあります。では、yesには「はい」と「いいえ」の二つの意味があって、文法的に訳し分けないといけない時があるとでもいうのでしょうか?そんなことがあるはずはありません。それよりも英語のyes/noと日本語の「はい/いいえ」は根本的に似て異なる言葉だ、と考えた方が良さそうです。ではどのように異なるのでしょうか?
●「yes/no」と「はい/いいえ」の根っこの意味
おおざっぱな結論から言います。英語のyes/noと日本語の「はい/いいえ」は根っこのところでは全く違う意味の言葉です。
☆英語のyesは「私は肯定文の話をしているよ」ということを意味します。一方noは「私は否定文の話をしているよ」ということを意味します。
☆日本語の「はい」は「先ほどあなたが述べた情報は○(=true)だ」ということを意味します。一方「いいえ」は「先ほどあなたが述べた情報は×(=false)だ」ということを意味します。
いったいどういうことでしょうか?
まず英語の例からいいます。先ほど出て来た
I know you like him.「あなたが彼のこと好きなの、知っているのよ。」
に対してあなたが「いや、そんなことはない。私は彼のことは好きじゃない。」と言いたい時、あなたは I don't like him.と言いたいはずです。これはつまり、あなたが「否定文の情報を相手に伝えたい」と言う気持ちを持っていることになります。ですからあなたは
No ( I don't ).
と言うことになります。一方それに対して相手は「いや、あなたは彼のことを好きなはずだ。」と言いたいわけで、つまり You like him.と言いたいわけです。これはつまり相手があなたに「肯定文の情報を伝えたい」という気持ちを持っていることになります。従って相手はあなたに
Yes ( you do ).
と言うことになるのです。
ところがこれを日本語にすると事情が違ってきます。
「あなたが彼のこと好きなの、知っているのよ。」
という相手のセリフに対して、あなたは「私が彼のことを好きだ」と言ってきている相手の情報は「まちがっている(false)」ということを表明したいので、あなたは
「いや、そんなことないわ。」
と言います。そしてあなたの言った「そんなことはない=私は彼のことを好きじゃない」というセリフを聞いて、相手は「その情報は間違っている(false)」ということを表明したくなっているので
「いいえ、好きなのよ」
というふうに、やはり「いいえ」で返すことになるのです。
Aren't you hungry?という否定疑問文(あなたお腹減ってないの?)に対しても、英語なら、I'm hungry.という気持ちを表明したいなら、「肯定文の気持ちを表す」yesを使い、Yes.もしくはYes, I am.と述べます。I'm not hungry.という気持ちを表したいなら「否定文の気持ちを表す」noを使い、No.もしくはNo, I'm not.と答えるのです。yesは肯定文の気持ちを表す言葉なので、Yes, I'm not.というように否定文と一緒に使うことはあり得ません。noは否定文の気持ちを表す言葉なので、No, I am.というように肯定文と一緒に使われることはあり得ないのです。
ところが日本語なら「お腹減っていないの?」に対して、実際にあなたが「お腹が減っている」なら、「あなたの言う、『私はお腹が減っていない』という情報は間違っている(false)」という気持ちになるので「いいえ、お腹は減っています。」というふうになります。このように英語のネイティブスピーカーから見ると、否定の『いいえ』と『減っています』という肯定文が混じった、奇妙キテレツな文が日本語には存在するのです。
●テストでよく狙われる否定疑問文の返答方法
上記のAren't you hungry?のような否定疑問文にyes/noのどちらで答えるべきか、という問題は受験問題などでもよく出題されます。心得としては、
「答を『はい/いいえ』で考えず、肯定文の気持ちで答えたいのか、否定文の気持ちで答えたいのかを考えろ」
ということになりますね。肯定文の気持ちを表明したいならyesで答え、否定文の気持ちを表明したいならnoで答えろ、となります。
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