『英語職人』時吉秀弥の英文法 最終回答!

『英語職人』時吉秀弥の英文法 最終回答!

本当にわかる英語とは?!英語、英文法、その他の外国語の学習、言語学などについていろいろ語ります。

私が勤める(株)スタディーハッカーがYouTubeを開始!私の出演するシリーズ第一弾です。文法の必要性を語りました。御覧ください!

https://youtu.be/-NBZi3aQydw




イギリスのコント集団、モンティパイソンのメンバーであるテリー・ジョーンズがお亡くなりになりました。

以下は、テリー・ジョーンズを偲ぶジョン・クリーズのツイートです。

今回のブログでは、出来る限り英語を通して彼のコメントを感じられるよう、解説してみます。

 

 

https://twitter.com/JohnCleese/status/1219979583719690241

 

 

 

  • (I) just heard about Terry J

「ちょうど今テリーについて聞いた。」

 

hearは耳に入ってきた音や情報に「気づく」ことを意味します。「耳にする」という日本語に近いです。listen toは他の音をシャットアウトして、ある音にのみ耳を「向ける」こと。「耳を傾ける」という日本語に近い。

 

  • It feels strange that ...

「…って変な感じがするよ。」

 

仮主語や仮目的語、時間や天気のitは基本的に「状況」を意味します。I feelとせずにIt feelsとすることで「私はこう感じる」というより「こんな感じがする状況だよね」というふうに自分の感情よりも「空気」を描写しています。

英語は軽い情報が先、重い情報は後、という語順をとるので(その方が脳は楽に情報処理ができる)、先に「奇妙な感じがする状況だよね」と、「状況」という「抽象的で軽い情報」を先に述べ、詳しい状況の内容という「重い情報」は後で述べます。

 

thatは接続詞ですが、元々「あれ、それ」という「指す」ことを意味する言葉で、ここでは「『状況it』の詳しい説明はこちらだよ」と指してくれています。

というわけでit feels strange that…で「(状況が)奇妙な感じがするなぁ(その中身は後に続くよ)」です。

 

  • a man of so many talents and such endless enthusiasm, 

「これほど多様な才能と限り無い情熱を持った男が…」

 

冠詞のaは「何もなかった脳内の舞台にランダムに一つ取り出して存在させる」ことを意味します。ここでのa manは、とある男を一人、ポンと舞台に上げて登場させてやる感じです。

 

ofは「全体から構成要素を取り出す」という意味で使われています。例えばa piece of cakeならケーキ全体から一切れ分を取り出してみせる感じです。ここでは「多様な才能と無限の情熱から男を一人取り出す」ことで「多様な才能と無限の情熱で出来た男」という意味が表されます。このofは「取り出して何かが出来上がる」という意味で、be made ofのofと同じ感覚を持ちます。

 

so many talentsの注目点は二つ。soとtalentsです。soは「とても」と訳されることが多いですが、根本的には日本語の「そ(う)」に近い意味を持つ言葉で、すでに出た情報を指して「それくらい、それほど」という意味を表します。ここでのsoは単に「とても」と捉えても良いですが、「皆さん言わなくても彼の才能の多様さはわかるよね、それくらい多様な彼の才能…」というふうに皆が前提として共有しているテリー・ジョーンズに関する知識をsoが指していると捉えることも可能です。

 

次にmany talentsですが、注意すべきはtalentは不可算名詞である、ということです。英語の「数えられる一個」の正体は「それ以上崩したらそれと呼べなくなる形、輪郭」のことです(例えば机をバラバラにしてその破片を見て机とは呼べない。我々は机という形を見てそれを机と認識している)。しかしtalent(才能)にはそれ以上崩したら「才能」と呼べなくなる形や輪郭がありません。だから不可算名詞。では、ここではなぜ可算名詞としてmany talentsとなっているかというと、「才能の『種類の数』」の話をしているからです。

このように不可算名詞が種類の話で扱われる場合、可算名詞化されることが良く起きます。例えば漠然と「食糧・食べもの」という時の不可算名詞foodと、色々な種類の食べ物という時の可算名詞foodsなどがそうです。

後に続いているendless enthusiasm (限り無い情熱)は種類の話ではないので不可算名詞のままです。

 

というわけで、so many talentsは「たくさんの才能」というよりは「多種多様な才能」と捉えるべきです。

 

さてここまで主語のa man of so many talents and such endless enthusiasm, (これほど多様な才能と無限の情熱でできた男が)という主語を扱いました。ちなみにenthusiasmのあとにあるカンマは、主語が長い時に見られる、区切りの役割です。次に動詞のshould have faded so gently awayの解説に行きましょう。

 

  • should have faded so gently away

「これほど穏やかにこの世から消えていったなんて」

 

shouldの根っこの意味は「当然だと思う」ということです。ここから「当然すべきだと思う」と、「当然そうなるはずだ」という2つの大きな意味がでてきます。しかし、should have faded so gently awayでは少し捉え方に工夫が必要です。

ここのshouldは「感情のshould」と呼ばれる用法で、「~だなんて」という驚きを表しています。「まるで当然のように、当たり前のように~ということをしてしまった。驚きだ。」という意外性を表しているのです。ここでもshouldの「当然」という感覚が生きています。

というわけで、この一文をまとめると

 

It feels strange that a man of so many talents and such endless enthusiasm, should have faded so gently away...

 

「これほど多様な才能と無限の情熱でできた男が、こんなに穏やかに消え去ってしまうなんて、奇妙な感じに思える。」

 

補足:I feelの代わりにit feelsとしているのは中英語時代まであった非人称構文の名残で、「~だと思われる」の自発の感覚が強い。感じようとして感じているのではなく、思わず、そういう感情が湧いてくる、というのが「自発」の感覚です。

 

 

次の一文

  • Of his many achievements, for me the greatest gift he gave us all was his direction of 'Life of Brian'. 

「彼の多くの偉業のうち、私にとって、彼が我々皆にくれた最高のものは、彼が監督した「ライフ・オブ・ブライアン」だ。

achieveはa(~へ)+chief(山頂)を語源とし、「頂にたどり着く=達成」という意味を持つ動詞です。achievementsは「山頂へたどり着くことの数々」ということですから、「偉業の数々」です。ofは前述の通り「取り出す」ことを意味します。

 

次の一文

  • Perfection.

「完璧そのものだ。」

 

It was perfect.としても良さそうなのに、Perfection.と名詞一語で言い切っているところにどういう意味があるのかを考えてみましょう。

 

例えば beautifulという形容詞は「美しい」という様子を表していますが、beautyという名詞は「美」という概念を表しています。「美とはどういうものだと、人間は考えているのか」という風に言い換えることができます。perfectionなら、「完璧、という概念とは何なのか」です。

 

そして、特に重要なのが、Perfection.というふうに「名詞一語文」で表現されていることです。つまり、ただの名詞ではなく、文だ、ということです。

 

例えば「水」という単語は「水とは何か」という概念でしかありません。しかし、これが文として「水!」となると、「水がある!」という意味か、もしくは「水をくれ!」という意味になります。このように、「文」はそれ自体が意味を持つユニットなのです。一語文は「存在承認(ある)」か、「希求(あってほしい)」の何方かの意味を表します。

ですから、Perfection.という「文」は、「完璧、と呼べるものが、そこに存在している。」という「存在承認」の意味で解釈すべきです。

 

ジョン・クリーズは、テリー・ジョーンズの「Life of Brian」という映画を「完璧と呼べるものがそこに存在している」と評しているわけです。

 

最後の一言

  • Two down, four to go

「ふたりやられた、残るは4人だ。」

 

 

これはモンティパイソンのギャグをもじったセリフです。downは銃撃などで人が倒された場合によく使われます。to goは直訳すれば「これから行くことに向かう」ですが、「残り時間」や「残りの数量」を表す時にもよく使います。例:We have two minutes to go.「残り2分。」つまりto goは「これから状況が未来に向かって進行していく」ことを意味しているのです。グレアム・チャップマンとテリー・ジョーンズが亡くなって、モンティパイソンの存命メンバーはあと4人となりました。