「もし(自分が)〜っていわれたら」を「自然な」英語に訳せる? | 『英語職人』時吉秀弥の英文法 最終回答!

『英語職人』時吉秀弥の英文法 最終回答!

本当にわかる英語とは?!英語、英文法、その他の外国語の学習、言語学などについていろいろ語ります。

先日アメリカ人の英語講師と2人で全編英語の動画を撮影しました。彼の名前はアダムで、5年以上一緒に仕事をして来た私の相棒です。

その内容を文字起こしして、日本語訳をつける作業をしていた時にふと気づいたこと。

 

「もし(自分が)〜って言われたら」

 

というのを英語で言う時に、私の言い方と、アダムの言い方が違ったのです。別の言い方をすれば、私の言い方は日本語脳に基づいた英語で、アダムの言い方はいかにも英語脳にもとづいたものでした。みなさんでしたら英語でどう言いますか?

 

私は

 

If I am talked to like 〜...

 

と言いました。日本語の「もし自分が〜って言われたら」の形がそのまま英語になっています。

で、アダムはというと、

 

If someone says 〜 to you...

 

と言ったのです。日本語に訳すと「もし誰かが自分に〜って言ったら」です。ちなみにここでのyouは「人一般のyou」といわれるやつで、自分だけでなく、一般論の話をしていたのでこういう言い方になりました。

この話題は動画の中で複数回出て来ましたが、その度に私もアダムも上記の言い方をおたがい繰り返しましたから、これは本当に私とアダムの思考回路の違いが現れたものだと思います。

 

ここで注目すべきは主語です。

日本人である私・時吉は主語をI、つまり「私」にしていますよね。

日本語ってゲームででてくるような1人称視点なんです。自分から見た映像を言葉にする。だから「自分がどうするか」「自分がどうされるか」という思考が強くなります。

でも英語は、これは私の著書「英文法の鬼100則」にも書いてある通り「外からもう1人の自分が自分を眺めている」言語なので、自分からは「離れた」存在であるsomebodyのような他人が主語になるんですね。

日本語脳からすると、ちょっと不安ですよね。自分に起きた話なら自分を主語にしないと不安。自分に起きた(話しかけられた)ことなのに、他人(somebody)を主語にするっていう発想は浮かびにくい。

こういった話をこれまでいろんな本に書いて来たのに、英語を話す時もまだ日本語脳に支配されている自分がどこかにあって、ときどきハッとさせられます。

 

以下忘備録。

 

日本語は自分視点でものを考える傾向が強い。それが当然だという気持ちを日本語話者は皆共有しているから主語がない時はだいたい「自分」から見た話をしていると判断する。だから基本的に「私は」という主語は省略されることが多い。

 

英語はビリヤードのように「力の発生源→力を受ける対象」という流れで話すことが多い。つまり原因を主語とする他動詞構文が多い。The typhoon delayed trains. 「台風が電車を遅らせた」という言い方なんかがそう。この延長にSomebody says 〜 to me.というような「言葉の発生源→言葉の受け手」という力の流れを表す言い方が英語としては自然になる。

 

「自分に起きたことなのに、自分ではなく、原因を主語にする」ことがあるから結果的に「自分を外から眺めている」表現が多くなる。これが英語脳。

 

これらの発想は気づかないレベルから明らかなレベルまで、いろいろな形で日本語全体、英語全体に埋め込まれている。