前回、「それってshouldの省略じゃないよ。仮定法現在だよ。」という話をしましたが、今回はその証拠についてお話をします。今回言いたいことを流れにするとこんな感じです。
(1)よくある誤解
①イギリス英語で「should+原形」。アメリカ英語では、ただの動詞の原形が見られる。
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②アメリカ英語の方がイギリス英語よりも新しいはずだから、イギリス英語(=古い)にあったshouldがアメリカ英語(=新しい)では消えてしまったのだろう。したがってshouldは省略されているのである。
上記の考え、②が間違ってます。つまりアメリカ英語はイギリス英語よりも新しい言語だ、というところが間違いです。実は、こうです。
(2)実際のところは・・・
①仮定法は現代英語ですたれつつある古い文法形式。つまり、仮定法現在を使っている場合、それは「古い英語の名残」のはず。
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②イギリス英語で「should+原形」。アメリカ英語で「仮定法現在」がよく見られる。
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③実はイギリス英語よりもアメリカ英語の方が古い文法形式をたくさん残している。
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④つまり、イギリス英語では「仮定法現在」が滅び、そのあとに「should+原形」という形が生まれた。しかし、アメリカ英語では古い形である仮定法現在がそのまま生き残り、今に至っている。
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⑤したがって「もともとはshould+原形だったものが、そのうち、shouldが省略されるようになった」という言説は誤解であり、誤りである。現実にはその逆が起きている。
読者のみなさんの中には③に対して「え?!」と思う方がいると思います。アメリカの方が新しい国だし、英語は元々イギリスのものだし、だから英語はイギリス英語の方が古いはず、という思い込みです。実はそれは間違いです。「本国よりも、移民先の国の言語の方が古い形が残る」というのが言語学の常識です。
例えば日本語で考えてみましょう。明治以降、多くの日本人がブラジルに移住しました。そうした人たちの子孫である日系3世あたりの人たちが日本に戻って来て現在たとえば群馬県の大泉町なんかに住んでいらっしゃるわけですが、この人たちの日本語を聞くと、例えば「電車」の代わりに「汽車」とか「列車」という古い日本語が出てきます。なぜなら、彼らはおじいさんやおばあさんから伝わる日本語しか知らない環境で育ったからです。このようにして、移民先の国には生きた化石のように本国の古い言葉が残るわけです。したがってイギリスよりもアメリカの方に古い英語(主に17~18世紀)がより多く残っているわけです。④に関してはすでに前回のブログで述べた通り、元々は仮定法で表していた「非現実の世界」が現代英語では主に法助動詞で表されるようになっているのが歴史の流れなわけです。
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