一年前にJBSAのことを話してきました!③ | ブリスの自己主張(盲導犬ブリスと犬の気持ちがわからないユーザーとのユニット)

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盲導犬ブリスと犬の気持ちがわからないユーザーとの生活・・・

世界に船出した仲間

JBSAの仲間の岩本さんは、筑波大附属盲学校に教員として勤務しておりましたが、その安定した職業を捨てて渡米いたしました。

生まれたばかりの愛娘をどこで育てるかで、アメリカ人の奥さんと検討してのことでした。

カルフォルニアでは日本の鍼灸の資格は使えず、あらためて大学院に入り資格を取得。その間は奥さんが生活を支えてくれたそうです。奥さんの勧めもあり鍼灸院を開設。またサンディエゴのヨットクラブでセーリングを始めました。

生活が落ち着いたそんな頃、ヨット雑誌「KAZI」に間寛平さんがアースマラソンに使用したヨット「エオラス号(ブリスタルチャンネルカッター28フィート)で太平洋を横断したい人は編集部までメールをください」との記事に、太平洋横断が夢だった岩本さんはすぐに熱い思いを長文メールに託して応募すると、なんと彼がその夢のチャンスを手にすることになったのです。

乗船の相手には、同じ夢を雑誌に語っていたニュースキャスターの辛坊治郎さんにお願いすると、多忙にも関わらずに快諾してくれたのです。

練習を重ねた二人は、福島県小名浜港から大勢に見送られ出航しましたが、それから一週間でくじらと衝突してヨットは沈没。救命ボートの二人は自衛隊に救助されたのです。

ここでの九死に一生のエピソードのひとつを紹介します。

彼が救命ボートに乗り移るときのことです。沈みかけているヨットの後ろから足を下ろすと、つま先が救命ボートに触れたそうですが、波が荒いためにすぐに離れ、しばらくするとまた近づいて、その繰り返しが波の高低差で生じることに気がつきました。そのリズムを測りボートが近づいた時に転がり込みました。波の高低差に気が付かなかったら、慌てるだけで太平洋の荒波の中に落ちていたかもしれなかったそうです。

 救助の後、世間からのバッシングがひどくなったそうですが、岩本さん自身も世間を騒がせたことと、大勢の人を巻き込んでの夢が破れたことへの自責の念により半年間鬱状態だったそうです。その後、トライアスロンにチャレンジすることで元気を取り戻します。

誰かのために自分ができること、そんな思いから熊本地震ではマッサージのボランティア。さらに熊本豪雨でも災害ボランティアに参加しております。

2019年に、アメリカ人のクルーと共に再び太平洋横断にチャレンジした彼は成功を果たしました。

 サンディエゴから日本までの12万キロのフィニッシュでは、お母さんがもやいロープを受け取ったそうです。

現在は世界初のブラインド海洋冒険家として活躍中。

(「見えないからこそ見えた光 絶望を希望に変える生き方」岩本 光弘著 を参考にいたしました)


2018年にハワイを目指して夢の島を出航したのはバッカス艇(ジャヌー38フィート)。クルーはサイテッド3名ブラインド2名の合計5名。

 途中で仲間が発病。衛星電話を駆使して緊急でミッドウェイに寄港の許可を得ましたが、目的地まではまだ遠く、17日後に着艇。自然保護区のために本来ならば入港禁止の島でしたが特別の許可でした。病人はそこから飛行機でハワイの病院に搬送。

バッカスのみなさんはそこからセーリングで13日後に無事オワフ島に到着。8970キロの冒険でした。各々飛行機で帰国後は元気でJBSAの活動に参加しております。

ここではブラインド2名が日付変更線を超えた世界初のブラインドセーラーとしてギネス級の壮挙を果たしました。



5 これからのブラインドセーリングについて

 高齢化が進んでいるといわれるヨットの世界で、インクルーシブを掲げて勃興しているのがハンザクラスです。これはユニバーサルデザインのディンギーで、老いも若きも障害者もそうでない人もみんなで楽しめるヨットとして普及しています。

 乗り方はこれまでのヨットとは異なり、正面を向いた座席に座ります。座席はツーシート。自家用車の運転席と助手席のようなスタイルです。

セールと舵はすべて手元で操作できるようになっております。

これは肢体が不自由な方たちも乗れるようになっているからです。

 さらにこの艇でブラインドがシングルでレースができるように考えられたのがハンザクラスのブラインドレースです。

これこそどう乗るのかしらと思うでしょうね。

これはスマートホンのナビガイドのアプリを利用します。ヨットにスマートフォンを搭載させて目標のマークを音声でガイドしてもらうのです。

 さらにマークも音響がでるようになっているので、その音も聞きながら、ブラインドが1人でマークを回航します。

 ただ、公平なスタートができるか、レース中に接触した場合やナビが途中で故障した場合の救済処置など、課題は多くありますが、三重県伊勢ではこのブラインドレースを年に一度トライアルレースの大会として行っております。

 またBSAでは、「サラ」というシステムを搭載したソナークラスでのブラインド3名によるマッチレースが行われています。

ただ設備を整えるのに費用がかかるようです。

 これからはJBSAのようなブラインドとサイテッドによるインクルーシブなフリートレースから、ブラインドだけのマッチレースといったスタイルも多くなるのかもしれません。

 いずれを選ぶにしろ、安全を一番に楽しんでいければと思っております。


スピーチの後は、海洋カメラマンの添畑氏撮影による2013年ジャパンワールドのDVDから、迫力あるシーンを上映していただきました。


以上、ご清聴ありがとうございました。