![]() 文学少女対数学少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫) [ 陸 秋槎 ] |
古本購入してあった、2020年12月発行、陸秋槎の「文学少女対数学少女」を読了…2021年末発表“2022年版このミステリーがすごい”のBEST海外編で13位にランクインしていた、中国のミステリー小説。あまり中国のミステリーって、今まで読んだ記憶はないんだけど、タイトルや表紙に惹かれるものがあったので、気になっていた作品ではある。文字通り、自分で小説を書く文系女子と数学の天才である理系女子…共に女子高生の2人が出会い奇妙な友情関係を紡ぎ出す。もう1人、2人の共通の友人である同級生がいて…その3人がメインキャラクター。基本、文系女子が執筆、考案した作中作の推理小説の謎を、理系女子が小難しい数式や公式に照らし合わせて解き明かしていったりする連作短編。場合によっては作中作を提示する人物が入れかわったりすることもあるし…その延長で、作中作だけでは終わらず実際の事件が起き、同じような方法で真実に迫っていくこともある。各短編の細かいストーリーを説明するのは面倒なので割愛するが、それぞれのテーマとなっている数式、公式、学者の名前・偉業なんてチンプンカンプン。正直なところ…理系の小難しい部分はほとんど理解できてないんだけれども、それはつまり作中の文系女子と一緒なんですよ。本人も“よくわからない”って諦めモードだし、相手の理系女子も“わかんないでしょ?”って上から目線だし…だから実は主人公と同じ気持ちで読めるってことでもあるんだ。もちろん、理系の人が読むとまた違った面白さが味わえるんだと思うけど、自分みたいに数学が苦手な(算盤やってたから単純な計算はまぁまぁ得意なんだけど…証明だなんだかんだっていうのはさっぱり)人間が読んでも…そこまで難しいミステリーではないという。数学の専門用語なんかがいっぱい出てきて、一瞬、訳がわからなくなりかけるんだけど…ひとつの短編なんかは、最終的に“作者が神様だ”という、推理小説とはなんぞや?の答えを鮮やかに導き出していて、なるほどと気持ちよく納得して読み終われた。表紙イラストを見ても一目瞭然だが、キャラ造形なんかはラノベに近く…それでいて、あとがきなどでも触れられているが、法月綸太郎や麻耶雄嵩、綾辻行人、米澤穂信といった日本のミステリー作家の影響を受けていると著者本人が公言しており、中国名の登場人物の名前を覚えづらいという以外は、日本のミステリーの雰囲気にもけっこう近い印象を受けた(訳者のセンスもよかったのかもしれないが)。
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