今野敏 任侠シネマ(中央公論新社・文庫) | 勝手に映画紹介!?eigasukiの読書忘備録用ブログ

勝手に映画紹介!?eigasukiの読書忘備録用ブログ

何年か前に強制退会トラブルの時に、予備で登録したID。本家ブログの更新を再開しています⇒http://ameblo.jp/eigasuki/ ここでは読んだ本の忘備録を書くつもりです。書籍購入はブックオフ中心なので、新作は少ないかも?

任侠シネマ (中公文庫 こ40-39) [ 今野敏 ]

任侠シネマ (中公文庫 こ40-39) [ 今野敏 ]
価格:814円(税込、送料無料) (2024/4/19時点)


古本購入してあった、2023年4月発行、今野敏センセイの「任侠シネマ」を読了…2020年5月に出ていた単行本を文庫化したもの。元は博徒系で、地域密着型(心優しい)ヤクザの親分、子分が、様々な職業に首をつっこみ、経営を立て直してきた“任侠シリーズ”の5作目…一応、シリーズは今までのものを順番に読み終わっており、ひとつ前の「任侠浴場」のみ単行本で、他はすべて文庫で読んでいる。今回はタイトルの“シネマ”で一目瞭然、映画館の立て直し…その一方で、暴力団排除条例をチラつかせ、組を潰そうと目論む、ショカツの新任係長との攻防なども描かれる。映画館の立て直しといっても、今までのように経営に深く関わる訳ではなく、今回は外側からの援護射撃が中心だった印象。いつもは、バイト感覚で組員たちが、“その職業”を体験するような場面も多くあり、本作内でも実際に個々のキャラクターが、それを期待しているようなことを言うんだけど、親分や兄貴分は“今回はそういうのはナシだ”ときっぱり断言していた。ある意味、若干マンネリとなっていたワンパターン、お約束を回避しているともとれるかなと。依頼主となる映画館経営の社長と、嬉々として映画談義に花を咲かせる組長が魅力的…あまり映画に興味がなかった人たちが、健さん(高倉健)に魅了されていく場面もクスクス笑いながら読んでしまった。いつも面倒ごとを持ち込んでくる親分の兄弟分・永神さえも、ある映画を見て感動してしまったり(本文の説明を読んでいて、オイラも直ぐに何の映画か理解したけど、正解のタイトルは巻末解説に書かれている)。かつて、著者自身のオタク知識を惜しげもなく披露して描いた「慎治」内でのアニメ・サブカル論と比べると、そこまで濃密なものではなかったものの…敏センセイの映画愛が詰まった、映画論、映画・映画館の在り方がしっかりと伝わってくる。


今野敏 任侠シネマ(中央公論新社・文庫)