先週の読書:「十角館の殺人<新装改訂版>」「多重迷宮の殺人」 | 勝手に映画紹介!?

先週の読書:「十角館の殺人<新装改訂版>」「多重迷宮の殺人」

先週の読書:「十角館の殺人<新装改訂版>」「多重迷宮の殺人」

 

冊数はそれほど多くないけど、最近はなんとか、コンスタントに“先週の読書”の記事をアップできている…この調子で今後も頑張っていこう!えーと、先週末からHuluで綾辻行人センセイの傑作「十角館の殺人」のドラマ版が配信開始され…オイラもそれ目当てに加入してしまった(実は以前にお試し利用したことがあって、アカウントが残っていたので、正確には再加入)。もちろん既に全話鑑賞済みで感想もアップしてある…オイラも原作に忠実すぎてマジで驚いたが、ネットでも綾辻センセイの同業の作家さんやミステリーファンの間で、概ね高評価の様子だ。

 

そんなわけで、先週は2冊ほど小説を読了したが…1冊は、ドラマ版を見る前に「十角館の殺人」を<新装改訂版>で再読。91年発行の文庫版を高校生の時に読んでいるので30年以上ぶりの再読だった…衝撃的なトリックやオチはもちろん覚えていたが、細部を忘れているところもあったので、ドラマの前に読み直しておいて良かった。2冊目は長沢樹の「多重迷宮の殺人」…こちらは地下遺構で殺人事件が起きると、舞台設定などは一風変わっているのだが…それこそ「十角館の殺人」のような本格的なクローズドサークルであり、方向性は近いものがあった。

 

毎回、読んだ方からお薦め作品を1冊選んでるんだけど…ここでわざわざ「十角館の殺人」をお薦めするのもなんかアレだよね、ミステリーファンでこれ読んでない人なんてモグリだし。そんなわけで、あえて「十角館の殺人」を選ばず、今回の“推しの1冊”は長沢樹の「多重迷宮の殺人」に決定!綾辻作品のような、叙述トリック的驚きこそないけれども…クローズドサークルものとしては充分に読み応えがあり、「十角館の殺人」のようなミステリーが好きな人にもお薦めできる。そういえば本日の深夜、日テレで綾辻センセイの対談が放送されるらしい…見なきゃ。

 

 

 

2007年10月発行の綾辻行人著「十角館の殺人<新装改訂版>」…実写ドラマ版の配信開始が近づいていたので、ドラマを見る前に30年ぶりくらいの再読。最初は1991年に出た文庫版で読んだんだけれども、今回は古本で入手して、積読の中にあった<新装改訂版>で。ちなみに手元にあるのは2013年の改訂版第20刷のものだったが…それから10年経ってると、どれくらい刷を重ねてるのだろうか?新装版は改訂前と比べて100ページくらい増えてるんだけど、文字の大きさが変わっており、新装版用のあとがきや解説も追加されているせいだと思う…。

 

綾辻センセイ本人もあとがきで触れていたけど、内容自体の大幅変更は特にないようで…自分も全部を読み比べたわけじゃないけど、プロローグとエピローグ部分を比較してみた限りでは、細かい言葉のニュアンスなんかが若干変更になっている感じだった。そんなわけで久しぶりの再読…さすがに”あのオチ”は鮮明に覚えていたんだけど…“コイツが真犯人でいいんだよな?”ってちょっと不安になるくらい細部を忘れてるところも多かった。でも、途中の“思わせぶりな伏線”などを見つけて…“やっぱコイツでいいんだ”と確信しながら読み進めることができた。

 

でもあれだな…本格ミステリーにどハマリしたきっかけが本作だったので、初めて読んだ時は…被害者たちの死体描写も生々しく感じたし、「そして誰もいなくなった」スタイルで、どんどん登場人物たちが減っていくのも、スリリングで、不気味に、怖く感じたんだけど…今読み返すと“思い出補正”もけっこうあったり…そして、当時はよく解らずに読んでいた、作中キャラ同士のミステリー談義などの部分は、自分自身も色々とミステリに関する知識を身に着けたことで、逆に理解度も深まり、より面白く読めた。機会があったら他のシリーズも新装版で再読したいな。

 

 

 

2023年10月発行の長沢樹著「多重迷宮の殺人」…2014年発行の単行本「武蔵野アンダーワールド・セブン―多重迷宮―」を全面改稿して文庫化したもの。オリジナルの方は未読なので、どの程度の改稿が行われているかは未確認。舞台は1980年の日本…首都圏の地下遺構で連続刺殺事件が発生中。刑事の息子である男子大学生をはじめ、彼が世話役を頼まれている訳あり女子大生、ならびに2人の共通の友人である資産家一族の息子は地下遺構探索サークルのメンバーであり、捜査コンサルタントの資格も有していて、警察の捜査にも協力している。

 

なんで大学生が捜査に首を突っ込めるのかなど、メイン登場人物たちは、物語にも深く関わるちょっと特殊な人物設定や関係性がある。中でも女子大生が抜群の推理力を持っていて探偵ポジ、刑事の息子の方がワトソンポジ。やがて、“地下遺構の連続刺殺事件”の捜査の延長で…名門令嬢から依頼のあった“別荘の地下施設の調査”に挑むことになるサークルの3人。地下施設=秘密の出入り口を探し当てると、そこにはだだっ広い鍾乳洞が広がっていて、地下要塞、シェルターのような役割をしていたらしいんだけど、なんとそこで新たな死体が見つかる!

 

さらに、連続刺殺事件の容疑者として絞り込んでいた“複数の人物”を含む闖入者が現れ、さらにさらに一堂が会したところで地震が起きて、地下施設の入り口が埋まってしまい、中に閉じ込められてしまう!さらにさらにさらに…案の定、出口を捜しているうちに、新たな殺人事件も発生、1人また1人と犠牲者が増えていく…。いったい犯人は誰なのか?今までの連続刺殺事件と同じ犯人なのか?そして無事に地下から脱出できるのか?閉じ込められた地下施設で殺人事件が起きるという“クローズドサークル展開”は、前に読んだ夕木春央の「方舟」と似てた。

 

でも、本作のオリジナルの方が10年も前の作品なので、たぶん「方舟」が似てたんだと思う。物語の中で、“この人たちが怪しい”とある程度犯人を絞り込む情報が提示されてるんだけど…ちゃんと仕掛けがあるので、どいつが真犯人なのか、最後まで何度も揺さぶられる。それプラス、やっぱり無事に脱出できるかどうかだよね…あれ、これって探偵役も含めた全員全滅のバッドエンドもありえるんじゃないか?なんて心配になるほど、最後まで緊張感が漂っていた。単行本は既に続編が出ているようなので…そちらも全面改稿の文庫版が出たら、読んでみたい。






 

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